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チョイカファイの展示をASAKUSAでみる。「超自然的ダンス求道者」という肩書きにはかなり迫力があった。

「個展『悲しき霊魂を求めて』はブリヤートのシャーマンコミュニティに着想を得たマルチメディアインスタレーションによって構成されます。来場者は「ブルースカイアカデミー」という架空のシャーマン学院で学ぶカファイに招き入れられつつ学院の関係者やブリヤートのシャーマンへのインタビューからシベリアのシャーマニズムを習得していき、VR作品「Constellation of the Flesh」においてシベリアのシャーマンによるトランスダンスとサイバー空間が相乗する超自然的世界をヘッドセットを通して体験することになります。」

ギャラリーは民家をそのまま使っている。靴を揃えてあがるときに冷蔵庫の匂いが移った麦茶の幻臭を玄関の式台を通して体験した。展示は1階と2階に別れている。

2階
・ブリヤートに制作の為のリサーチに行く記録映像。
1階
・「ブルースカイアカデミー」で講師をつとめているという女性のインタビュー
・ブリヤートのシャーマンへのインタビュー
・「ブルースカイアカデミー」で行われているヨガの映像
・リサーチを元に儀式空間を再現したと思われるVR

という構成。

印象に残ったのは2階のリサーチ映像の中でイルクーツクから<シャーマン学院>のある場所へとバイカル湖に沿ってサスペンションの効かない改造貨物車で移動する内に取材旅行で最初のトランスを体験するシーンだった。「永遠に続くモーションブラー、草や木の緑のグラーデションが動物に変化する。バスのエンジンは催眠的なドラムの反復に変わり…」地平線まで遮るものがなくどれだけ走っても変わらない不思議な景色に以前、ICCの真っ暗な無響室を利用したインスタレーションで体験したサイケデリックな感覚を想起した。

座標を失う感覚は変性意識の入口になる。シベリアの広大で果てしなく続く平原に同じような感覚を覚えた。同時にその感覚は記録映像の前半で紹介されていたブリヤートの歴史的経緯、シャーマニズムを含む伝統文化をソビエト時代には禁止されていたことやそもそも国家を持たないディアスポラであることと重なる気がしたのだった。


ブリヤートでグーグルは役に立たない。かわりにヤンデックスというロシアの検索エンジンが使われていてそこには代替医療やスピリチュアリティに関するオンラインコミュニティが広がっているらしい。ブリヤートのシャーマニズムは伝統に根差しつつも現代の技術を取り込んで拡大している。

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VR作品ではトゥバの伝統的な音楽をサンプリングしたテクノに合わせてアバターが踊っていた。アニメーションはスピリチュアルなダンスを探求している女性アーティストをモーションキャプチャしてつけているようだ。「超自然的」な感覚は点群とパーティクルで表現される。VRの内容とエフェクトはシンプルだったが今回は少し前のオキュラスクエストの解像度含めコンセプトに沿ったものだと感じられ気にならなかった。

「永遠の青空には始まりも終わりもない。四肢の支えなしに動き、下界に平和、福祉、そして幸福をもたらす。それは大地と水の主であり、存在するもの全てを増殖させる。」テングリー澄み切った永遠なる青空の精霊信仰

ちなみに「ブルースカイアカデミー」が架空のものだというのは自明だが、リサーチの記録映像の中で複数のコミュニティが協調しあい儀礼の標準化と継承の為に設立したと紹介されている<シャーマン学院>もたぶんない。記録映像の冒頭で寺院と博物館のガイドつきで200~300ユーロで購入できるパッケージツアーに含まれると説明される為、信じそうになる。記録映像自体がおそらくは実際にブリヤートで撮ったと思われる本物の素材をフェイクドキュメンタリーの形式で編集し直したフィクションになっている。展示会場を出てから気がついた。

『悲しき霊魂を求めて』
2024.6.28-7.15
ASAKUSA

チョイカファイは2017年には恐山で滞在制作をし、土方巽の霊を呼び出したりしているらしい(超常現象的出演) 基本的にはモーキャプとCGの人っぽい。以下リンク

https://www.enpaku-jdta.jp/detail/11703-03-2019-02


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