労働衛生コンサルタント筆記試験体験記①
さて、前回労働衛生コンサルタントとはなんぞやという解説をおこないました。ここからは、実際どうやって労働衛生コンサルタントになったのかについてお話したいと思います。
労働衛生コンサルタントの試験は2回に分かれており、一次試験は筆記試験、二次試験は口述試験となっています。筆記試験は3科目あり、労働衛生一般、衛生関係法令、専門科目です。専門科目は記述式の問題で、健康管理か労働衛生工学の2つがあり、自身の専門性に併せて選択します。医師は健康管理の専門になるので、私の受験科目は健康管理となっています。
医師はもともと労働衛生一般、保健衛生を免除できる上に、日本医師会が行う産業医学講習、産業医科大学の行う産業医学基本講座を受講すると、筆記試験を全部免除できるという、激甘チートモードが存在しており、これを利用して受験する医師のコラムなどはよく見かけます。
私もそのルートで受験しようと考えていたのですが、2020年度はコロナのために講習会が中止となり、筆記試験免除を受ける資格を得ることができませんでした。
2020年度の受験は絶望的でしたが、カンファレンスをぼーっと聞いているとき、
「別に、筆記試験から倒してしまっても構わんのだろう?」
という死亡フラグにも似た天啓が。すぐさま願書を取り寄せ出願と相成りました。
その時点ですでに8月の初旬。筆記試験が10月の中頃ですので、実質の勉強時間は2ヶ月しかありません。出身が産業医科大学ではなく、産業医も片手間程度しかやっていなかったため、ほとんど知識ゼロ、経験ゼロからのスタートでした。
口述試験対策は巷のコラムで体験談や合格体験記が書かれているため、傾向と対策が把握できるのですが、筆記試験から受けている医師は殆どおらず、五里霧中、暗中模索とはまさにこのこと。
そこで、まずはバイブルと崇め奉られている、「労働衛生のしおり」を通読することに。
労働衛生のしおり、とは中央労働災害防止協会(通称:中災防)が作成しているもので、650円+税と安価ながら、労働衛生のエッセンスや最新の情報・法令をこれでもかと詰め込んだ、ナウでヤングな最高にイケてる書籍です。
労働衛生のしおりを7回通読すれば合格も夢ではないというネットの記事を真に受け、たったB6サイズの文庫本、こんなもんすぐ読めるばい、と軽い気持ちで読み始めました。
最初は順調でした。最初は。
働き方改革関連法案や産業医の権限強化、3管理の説明、各種健康診断など、総論であっさりした内容が続き、スラスラと読み進めていけた。
中間部、各論に差し掛かり、当然のように飛び出してくる専門用語。しかもその用語が似てること似てること。
特化物!特定粉じん!特別有機溶剤!特別管理物質!……etcetc
心の砕け散る音が聞こえました。
どうして労働衛生の人たちって“特”という字をあんなにも使いたがるんですかね。特別と特定の違いってなんなんですかねほんと。
そんな専門用語に辟易しつつ、なんとか労働衛生のしおりを読破。
これで過去問が解けるじゃろ、と安全衛生技術試験協会にある公表試験問題に手を出してみたところ、
労働衛生一般はなんとなく労働衛生のしおりで得た知識と医学知識や一般常識を組み合わせて解ける(気がする)が、労働衛生関係法令は全く歯が立たない。
というか問うている知識が細かすぎて絶望。
一例を上げると
事業者は、粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断を行ったときは、じん肺の所見があると診断された労働者について、じん肺健康診断結果証明書及び間接撮影による胸部全域のエックス線写真を都道府県労働局長に提出しなければならない※第47回 労働衛生コンサルタント試験 労働衛生関連法令 問3より抜粋
という文章があります。
これは間違いの選択肢となるのですが、その理由が、二行目の
関接撮影→✗ 直接撮影である。
サイゼリヤの間違え探しかよ!
といいたくなるような重箱の隅のつつきっぷり。
もう一例上げると
事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が臥床することのできるAを、男性用と女性用に区別して設けなければならない※第48回 労働衛生コンサルタント試験 労働衛生関連法令 問7より抜粋
Aに入る文言を選ぶ問題で、以下の2択です
休憩の設備 or 休養室又は休養所
そんなんどっちでもええやんけ!休憩の設備も休養室もおんなじやろがい!
作成者、出てこいや!な問題。
ちなみにこれは休養室又は休養所が正解です。条文にそう書いてあります。条文に書いてあることは絶対です。
ここまで読んでくださった聡明な皆様、もうお気づきですね。
そう、労働衛生コンサルタントの労働衛生関係法令は
クソ問だらけ
なんです。(もちろんいい意味で、ですよ、いい意味で)
このあたりで、もはや9割方諦めモードです。
今年は適当に流しで受けて、来年の産業医学講習を受講して筆記免除にしてもらおうと100回くらい考えました。
ただ、来年コロナで開催されるかわからない、開催されても人数制限があって受講できるかわからない。そう考えると、チャンスはものにしなければならぬ。
「もはや、自分の頭で考えて解けるものではない。過去問を繰り返して、問題を覚えてしまえばいいのだ。」
ここで繰り出されたのが、伝家の宝刀「過去問ローラー作戦」です。
過去問をゴリゴリ解く→知らなかった知識、間違えた知識を問題番号を添えてひたすら教科書に書き込む→過去問をゴリゴリ解く→教科書に書き込む、というクラシックな勉強法です。
きっと、大学生時代の鬼畜進級試験を乗り越えてきた皆様には、この作戦が懐かしいと感じるのではないでしょうか。
戦いは数だよ兄貴!
ということで過去問を6年分入荷し、無心で労働衛生のしおりに書き込む事となりました。
※過去問は日本労働安全衛生コンサルタント会から出されているものを6年分購入しました。高いよ!
6年分を一度解き終わった頃には、労働衛生のしおりがボロボロの状態に。段々と愛着が湧いてきました。
ボロボロになった労働衛生のしおりをもう一度読んでみると、
読める、読めるぞ!
飛行石を手に入れた某大佐の気持ち、今ではよくわかります。
労働衛生関係法令は相変わらずクソ問(いい意味です)には変わりないものの、明らかに間違いの選択肢がわかるように。
9割方諦めモードの気持ちが7割方諦めモードくらいになりました。
とはいえ、もう9月に差し掛かる頃。
あと一ヶ月で果たして間に合うのか!
それよりも専門医のレポートを書かなくていいのか!
と、いうわけで長くなってきたため、今日はここまで。ではでは。
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