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白井屋ホテルに行ってきました

 明治の時代には絹産業によって盛えた群馬県前橋市ですが、時代を経るにしたがい、中心市街の衰退が進みました。
 そのような前橋市に江戸時代に創業し、旅館からホテルへ転換したあとも地域に根差し、惜しまれつつも2008年に創業300年の歴史を閉じたホテル白井屋。
 廃業後、一時取り壊しの危機があったそうですが、前橋市の再生プロジェクトの一環として改修等が進められ、2020年に白井屋ホテルとして蘇ります。
 この度、白井屋ホテルに宿泊する機会を得たので、その思い出をnoteに記したいと思います。 


建築とアートの競演

-建築について

 ホテルの再生を手がけたのは、大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーの藤本壮介さんです。
 私が藤本さんを知ったきっかけは、フランス・モンペリエにある「L'Arbre Blanc(「白い木」という意味)」という集合住宅ですが、一度は実際に藤本建築を見てみたいという希望が今回の宿泊で叶いました。

吹き抜け、むき出しの梁と空間を縫うように巡らされた階段

 廃業時の白井屋ホテルは一般的なホテル同様の造りだったそうですが、改修の際に大胆に客室を廃したことにより、現在の縦にも横にも広がりを感じられる空間を確保したそうです。

ホテル上階からの眺め

 客室数を減らし、確保した空間に螺旋階段や通路を設け、回遊性を高めたことにより、ホテルの上から下までどこに行って、どこに目をやっても楽しいと感じられると思います。
 ホテル内では、むき出しの梁や壁にホテル業へ転換した当時の墨出しの跡や配管の跡、そのほか下にも記載しますが、いろいろなアーティストの作品を見ることができます。

-アートについて

 ホテル内はロビーから客室内まで多くのアートが展示されていますが、今回は記事のボリュームの都合上、ほんのごく一部のみ紹介させていただきます。

〈レアンドロ・エルリッヒ〉 

 白井屋ホテルで一番目を引くアートといえば、レアンドロ・エルリッヒの「Lighting Pipes」だと思います。
 レアンドロ・エルリッヒと言えば、金沢21世紀美術館の「スイミングプール」が有名ですが、レアンドロ・エルリッヒの作品とは、金沢21世紀美術館で「スイミングプール」を体験した以来の再会となります。

上下左右・縦横無尽に駆け巡るパイプ

 かつて存在した客室の遺構のような、自らの意思を持って空間を駆け巡っているような作品でした。
 日中の時間帯においては、空間に馴染んでいて、一見控えめな作品ですが、日が傾き始めると徐々に存在感を増し始め、夜9時になると暖色の灯りから幻想的な色合いに切り替えられます。

移ろう色合いによりホテル内の雰囲気が一変

〈杉本博司〉
 ホテルレセプションの高い位置に展示された杉本博司さんの「海景」。
 「海景」とは湯布院のCOMICO ART MUSEUM以来の再会でした。水平線と空の境界が煙って曖昧な「海景」も引きずり込まれそうな感覚で魅力的でしたが、こちらも鋭い感じがすてきでした。
 白井屋ホテルでは宿泊者限定で参加できるホテルツアーがあり、1日2回(10時、17時)実施されるのですが、このツアーに参加した際、ガイドをしてくださった従業員さんから、こちらの「海景」がイスラエルのガラリヤ湖で撮影されたもので、ガラリヤ湖はイエス・キリストが湖上を歩いたと言われる奇跡が語り続けられる地で、白井屋ホテルひいては前橋市が一歩ずつ再生していく状況と奇跡がかけられているなど興味深い解説を伺うことができました。

海景、会計....

ジャスパー・モリソンが手がける世界でひとつの客室

 白井屋ホテルの客室数は全25室で、すべて異なるデザインとなっているそうです。
 今回はその中でもジャスパー・モリソンが手がけた特別な客室に宿泊することができました。宿泊予約をする際、ホームページで一番心を揺れ動かされたのがジャスパー・モリソンの客室でした。

-息を呑むとはこのこと

シンプルの極地
非日常

 客室のドアを開け、まず目に入るのは客室内の板目を伝わる光の神々しさでした。こちらの客室の第一印象は、息を呑むとはこういうことなんだというものでした。 

-Lighing Pipesを独り占め

 木製の折り戸を閉じたままの状態も神々しいのですが、いったん折り戸を開けるとレアンドロ・エルリッヒの「Lighting Pipes」が目に飛び込んできます。
 客室内から眺める「Lighting Pipes」はまるで作品を独り占めしているかのようで、いつまで見てても見飽きることはありませんでした。

「Lighting Pipes」を独り占め
赤く色を変えた「Lighting Pipes」
青く色を変えた「Lighting Pipes」
客室内からの眺め

この記事を見て興味を持たれた方へ

 滞在中、片時もカメラを離さず、何度も何度もいろんな角度で、いろんな場所からホテル内を撮りまくってしまいました。
 建築好き、アート好き、写真に興味がある方、そのほかにもサウナ施設も充実しているそうなので、サウナ好きの方にも白井屋ホテルの滞在を楽しんでもらえるのではないかと思います。
 非日常を感じつつ、それぞれの「好き」を満たすことができる素晴らしい体験をぜひとも共有したいと思い、記事を作成しました。

 何らかのご参考になりますように。

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