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とまどいと偏見2021

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2021年に劇場(または配信)で観た新作映画の感想です。
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【映画感想】ドント・ルック・アップ

【映画感想】ドント・ルック・アップ

観たいな観たいなと思いつつ、例年の師走よりも仕事が忙しくなってしまった緊急事態宣言明け。ふとネトフリを見たら「あれ、もう配信に来てんじゃん。」(劇場公開した映画がすぐに配信に来るのはどうかなと思いつつ、こう忙しいとあやかってしまいますね。しかし、この映画の壮大なバカバカしさは大画面で観たかったとも思います。)ということで、『マネー・ショート』や『バイス』のアダム・マッケイ監督の地球滅亡コメディ『ド

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【映画感想】パーフェクト・ケア

【映画感想】パーフェクト・ケア

『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクが極悪後見人となって老人たちから財産を一切合切だまし取る映画『パーフェクト・ケア』の感想です。

えー、ロザムンド・パイク、既に『ゴーン・ガール』の時から常識人の顔して冷酷な悪人だということは分かってましたが(僕がロザムンド・パイクを最初に認識したのはエドガー・ライト監督、サイモン・ペック脚本主演の『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』だったので『ゴー

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【映画感想】『ザ・ビートルズ:Get Back』

【映画感想】『ザ・ビートルズ:Get Back』

はい、今回はイレギュラーですが、劇場で観た映画ではなくディズニープラスで配信されているビートルズのドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』で感想を書いてみようと思います。年末になってちょっと忙しくなってきてなかなか劇場に行くことが出来なくなったのと、この作品が映画としてそうとう面白かったというのが理由です。

まず最初に、’70年に公開された『Let It Be』というビートルズの最後

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【映画感想】『マリグナント 凶暴な悪夢』

【映画感想】『マリグナント 凶暴な悪夢』

何回か前にPODCASTの『映画雑談』の方で取り上げた『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』、ずっと本シリーズの本編を監督していたジェームズ・ワンが監督しなかったことにちょっと残念だなという思いでいたのですが、なるほど、これを撮ってたからなのかと納得しました。『マリグナント 凶暴な悪夢』の感想です。

というわけで『ソウ』シリーズ、『死霊館』シリーズと今や名ホラー監督の一人となったジェームズ・ワンです

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【映画感想】最後の決闘裁判

【映画感想】最後の決闘裁判

えー、リドリー・スコット監督ですね。『ブレード・ランナー』があって、『エイリアン』があって、『ブラック・レイン』、『悪の法則』があって、更に『オデッセイ』まであるのに、今まであんまりこの人凄いなと思ってなかったのですが、「今時時代劇か、あんまり観る気しないな。」と思いながら観たこの作品で(いや、当然ですが)この人凄いなと思いました。リドリー・スコット監督最新作『最後の決闘裁判』の感想です。

まず

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【映画感想】ディナー・イン・アメリカ

【映画感想】ディナー・イン・アメリカ

これ、予告編が良かったんですよね。いかにもさえない感じのメガネの女の子と、モヒカンでパンク(というかハードコア)な風貌の男、普通は出会わないであろうふたりがひょんなことから出会いお互いの孤独を埋め合いながら暴走する青春映画。それをパンクという思想でコーティングしてる…と、いう。まぁ、その通りの映画ではあったんですが…というわけで『ディナー・イン・アメリカ』の感想です。

なので、言ってしまえば現代

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【映画感想】空白

【映画感想】空白

『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督の最新作『空白』を観て来ました。そうとう躊躇してたんですよ。観るの。僕も3歳の娘の父親なので、事故で娘を亡くした父親がモンスター化していくなんて救いの無さそうな話観れないなと思っていたんです(そこまでのことが起こったら、その時どうするかなんてことの準備にもならないですし、嫌な思いまでして観ることないなと思っていたんです。)。ただ、魔が差したと言いますか。事故にあう少女

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【映画感想】アナザーラウンド

【映画感想】アナザーラウンド

アカデミー国際長編映画賞を受賞したデンマーク映画。アルコールの血中濃度を0.05%に保つのが人間にとって最高の状態だという哲学者の言葉を実証する為に中年の教師4人が常にほろ酔い状態で生活するという話。アルコールの力を借りて人生をハッピーにする映画かと思ってたら、全てのシーンが切なくて、その切なさに対峙するお話でした。もしかしたらキャラクターへの共感度は今年ナンバー1だったかもしれません。中年オヤジ

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【映画感想】子供はわかってあげない

【映画感想】子供はわかってあげない

『横道世之介』の沖田修一監督が上白石姉妹の妹さんの方、上白石萌歌さんを主演にして作った(ここのところ観てたものに比べると)まっとうな青春映画。漫画原作でタイトルからも『大人は判ってくれない』のアンサーみたいなことなんだと思うけど、どちらも観てないので映画を観た感覚だけで語ります。

ここのところ、というか、去年から質の高い青春映画が多くて、今年観た中でも、前回、『映画雑談 その32(PODCAST

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【映画感想】少年の君

【映画感想】少年の君

えー、中国と香港の合作とのことで、香港映画は80年代に沢山(ジャッキー・チェンやMr.Booなど)観ましたが、中国映画はあまり観てないと思うんですよね(好きだった『薄氷の殺人』は中国映画でしたね。あと『鵞鳥湖の夜』もそうですね。)。やはり、韓国映画とも台湾映画とも違いますが、これはまたあまり観たことないタイプの映画でした。イジメや受験、貧困など社会的なことをテーマにしながらめちゃくちゃロマンチック

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【映画感想】ライトハウス

【映画感想】ライトハウス

はい、えー、A24らしい不穏感に、更に、視覚、聴覚、触覚などのあらゆる表現で不快感を示してくる不快感映画の最新版『ライトハウス』の感想です。

まず、映画始まってすぐ気づくのはその閉塞感で。画面のアスペクト比がほぼ正方形なので左右に全く逃げ場がない上に、モノクロでベタっと張り付いたような絵は奥行きも感じられない(要するにこれは物語の舞台になる灯台の中にいる閉塞感だと思うんですけど、この閉塞感が灯台

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【映画感想】RUN / ラン

【映画感想】RUN / ラン

はい、いくつか前に感想書いた『クローブヒッチ・キラー』は16歳の男の子が父親の性癖を疑うことで始まるスリラーだったんですが、今回の『RUN / ラン』は、車イスで生活する少女(クロエ)が、母親の愛情を疑うことで始まるスリラーでした。で、どちらも結構なサイコ事案だったんですけど、『クローブヒッチ・キラー』に比べてこちらの方がよりジャンル映画的で、型にハマった分かりやすさとそこからハミ出した部分の斬新

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【映画感想】Mr.ノーバディ

【映画感想】Mr.ノーバディ

『ジョン・ウィック』の制作チームによる"なめてた相手が…"系映画最新版ですが、今回の主人公は4人家族のお父さん。守るのは家族で、命のやり取りの世界に戻ってしまう理由は社会的ストレスを抑えられなくなったから。ここのところにとても共感しました。2016年公開のPOV映画『ハードコア』のイリヤ・ナイシュラー監督で、ボブ・オデンカーク主演『Mr.ノーバディ』の感想です。

今、現実の世界で様々なことを抑制

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【映画感想】クローブヒッチ・キラー

【映画感想】クローブヒッチ・キラー

「もしも、自分の父親が世間を騒がすシリアル・キラーだったら」という恐怖を思春期の少年の妄想として、果たして、それが真実なのかというサスペンスとして描いた『クローブヒッチ・キラー』の感想です。

『コップ・カー』や『スパイダーマン ホームカミング』などジョン・ワッツ監督の作品に関わってきたクリストファー・フォードさんの脚本ということで、そう言われると、あ、なるほどと思いますね。『コップ・カー』も『ホ

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