見出し画像

キャリアと生成AI:葛藤と可能性の間で


キャリアの中での葛藤と生成AIとの可能性をどう捉えるか? これは、私がこの1年半、生成AIの開発や活用に携わる中で常に向き合ってきたテーマです。

業務の中では、新人研修や教育プログラムの運営といった多岐にわたるタスクが中心で、生成AIに集中する時間が限られています。しかし、一方で自由にいろいろな挑戦ができる環境があり、それが私の視野を広げ、多くの経験を与えてくれました。たとえば、部内外の勉強会の開催や学会での論文発表などを通じて、技術的なスキルだけでなく、人と繋がる力やチームを動かす力を磨くことができました。

この記事では、キャリアにおける葛藤を乗り越えながら、生成AIの可能性をどう実現していくのか、その軸となる考え方を共有したいと思います。


売上至上主義と社会貢献の狭間で

私が所属する組織では、売上が最も重要な指標とされています。それ自体はビジネスを運営する上で当然のことですが、一方で私自身の目指すビジョンは、生成AIを活用して社会課題を解決することです。

このジレンマは、しばしば自分自身を問い直すきっかけになります。売上に直結しない取り組みであっても、他部署や社会との接点を増やし、新しい価値を生み出すことが、最終的には組織全体の成長や持続可能性につながるのではないかと考えています。

たとえば、新人研修の場で取り組んできた「チームで成果を上げる文化の醸成」は、その好例です。新人たちの中にはスキルや経験に大きな差があることが一般的です。しかし、できる人ができない人をサポートする仕組みを研修プログラムに組み込むことで、全体としての成長が促され、結果的に組織の力が底上げされるのです。

ある新人研修の場面では、プログラミングに熟練した新人が、初心者の同僚に教える姿が見られました。そのとき、初心者のメンバーが「こんな質問をして迷惑じゃないかな」と不安そうにしていたのを見たスキルの高い新人が、「全然大丈夫。教えると自分の理解も深まるから」と声をかけていました。このような文化が醸成されると、個々の成長だけでなく、全体としての強いチームが形成されていくのです。こうした経験は、生成AIがもたらす「個人ではなく、チームや社会全体を活かす力」というビジョンと深く結びついています。


新人研修から学んだキャリアの本質

新人研修での取り組みは、私自身のキャリアの軸を形成する重要な学びを与えてくれました。特に印象的だったのは、スキルや経験の異なる新人たちをどう一つのチームとして機能させるかという点です。

一般的に、スキルの高い新人は早い段階で多くの仕事を任されますが、それが逆に「自分でやった方が早い」といった考え方を助長し、他者に仕事を渡せないという問題を生むことがあります。これを防ぐため、研修の中で「できる新人が他のメンバーをサポートする」という文化を取り入れました。この取り組みは、新人たちにチームで成果を上げる価値観を早期に学ばせるだけでなく、スキルの高いメンバーにも他者と協働する力を育む機会を提供します。

ある研修の最後に、スキルの高い新人が「今まで、こんなに他の人と一緒にやる楽しさを感じたことはありません」と話してくれたことがありました。そのとき、チーム全体で喜びを共有しながら結果を出せたという体験が、彼らの価値観に大きな影響を与えたことを実感しました。

この経験を通じて、生成AIが目指すべき方向性についても新たな視点を得ました。それは、「生成AIは個人の能力を補完するだけでなく、チームや社会全体の力を底上げするツールであるべきだ」という考え方です。


学会発表から得た未来のインサイト

学会での発表は、私にとって大きな刺激と新たな視点を与えてくれる場でした。有名な教授との出会いや、参加者との意見交換を通じて、自分が開発している生成AIチューターに関する貴重なフィードバックを得ることができました。

ある夜の懇親会では、同席していた教授が「生成AIが社会で役立つためには、単なる便利なツールである以上の存在にならないといけない」と語っていました。その言葉に触発され、自分が目指す生成AIチューターの未来像を再確認しました。

特に印象に残っているのは、「生成AIの普及が進む中で、いかに独自性を持たせるか」という議論です。技術が進歩するにつれ、AIの基本性能には大きな差がなくなりつつあります。そのため、今後は生成AIにどのような価値観やナラティブを持たせるかが重要になってくるでしょう。

学会で得たインサイトを元に、生成AIチューターには単なる教育ツール以上の価値を持たせたいと考えています。それは、ユーザーの価値観に寄り添い、効果的なコミュニケーションをサポートするAIです。たとえば、異なる文化や背景を持つ人々の間で、互いの価値観を翻訳し、理解を深める役割を果たすといった未来像を描いています。


未来への展望:持ち味を活かすキャリアの設計

これらの経験を通じて感じるのは、自分の持ち味を活かしながら社会に価値を提供するキャリアの重要性です。私の持ち味は次のような点にあると考えています。

  1. 大きな視点で物事を捉える力:個別の課題を超えて、チームや社会全体での最適化を目指す視野。

  2. チームをファシリテートする力:多様な人々を巻き込み、協働して成果を上げるスキル。

  3. 心理学や教育のスキル:研修や教育プログラムを通じて、人の成長を支援する力。

生成AIは、現在普及フェーズにあります。その中で、ただ性能を追求するだけでなく、「人や組織にどのように価値を届けるか」という視点がますます重要になるでしょう。私はこの視点を大切にし、生成AIを通じて社会に貢献するキャリアを築いていきたいと考えています。


問いかけ:あなたのキャリアの持ち味とは?

最後に、読者の皆さんにも問いかけたいと思います。

「あなたの持ち味を活かしつつ、社会にインパクトを与えるために、どのような時間の使い方ができるでしょうか?」

キャリアの道のりには葛藤がつきものですが、自分の価値観や持ち味を大切にしながら前進することで、きっと新たな可能性が見えてくるはずです。

いいなと思ったら応援しよう!