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第3話プロローグPart2

「なっ、お前、何を言ってるんだ!あの子達の無事を、お前が一番に望んでやらなくてどうする!?」

 ユサユサと肩を揺さぶられ、ノルベールはハッと我に返る。口元を抑え自嘲気味に笑うと、彼は困ったようにヴィナグラードを見た。

「ヴィナグラード……。そうだな。すまなかった」
「ああ。きっと大丈夫だよ」

 根拠の無いその言葉は、何の力にもなりはしない事を、ヴィナグラードはよく分かっていた。けれども、彼にはそう言って友の手を取る事しか叶わない。国王だと言うのにこんなにも無力な自分を、ヴィナグラードはひっそりと呪った。
 その時だった。

「あー! お二人とも、ここにいらっしゃったのですか!」

 扉の向こうから、重苦しい空気を一掃するような可愛らしい女性の声が聞こえてきた。ヴィナグラードとノルベールは、呆気にとられたように、聖堂に入ってきた女性を見る。

「早く会議室に来てくださいませ! もう各領の領主様も揃いましたよ」

 女性──女王ミルティーユに仕えているリリーは、二人の重役の姿を見るやいなや、胸の前で手を合わせ、にっこりと笑って言った。

「……ついでに、貴殿方の遅れを知ったミルティーユ様が、怒りで爆発寸前です」

 こう言えば充分過ぎるほどの効果を発するということを、リリーは弁えていた。案の定、二人の男の顔からサッと血の気が引いていく。

「なぬっ!? リリー、それはついでに言うことでは無いぞ! まずい、ミルティーユが本気で怒ると世界が滅ぶ!」
「そんなわけは無い、と言いたいが、こればかりは真実だからな。そろそろ向かうとしようか」

 まるで子どものように、バタバタと忙しなく走り去る二人。その様子を後ろから見送りながら、リリーは寂しそうにため息をついた。

「ポム達は、上手くやっているのかしら……?」