自社サービスがいい、SIerはダメだ、という議論は終わりにしよう
結論を言えば、そんなことを考えるのはムダです。
どんな業態の企業でも素晴らしい企業もあれば、逆に素晴らしいと言われている業界でもブラック企業は存在します。それこそ案件ガチャならぬ転職ガチャという言葉が流行るんじゃないかくらいに。
Youtuberのセイト先生の動画でも同じことが流れていました。これを踏まえ、(おそらく)セイト先生が苦手なSIerの多重請負構造を含めて話をできれば、と考えています。
詳細は上記の動画をご覧ください。この記事では、ひとまとめにされたSIerとSESの違い、同じSIerでも2次請け・3次請けの違い、そして自社サービスと言いながらSESも展開している企業、それぞれの特徴と違いを説明します。
改めて、SIerとSESの違い
動画でもSIerとSESの違いを説明していました。改めて違いを説明すると、SIerとは「受託(あるいは請負)という、納品物をベースにした契約をしている開発会社」であり、SESは「準委任契約という、労働力を時間単位で切り売りしている開発会社」のことです。
SIer=企業に代わってシステムを開発する(ことが請負契約)
SES=開発している企業に対して、労働力を提供する(ことが準委任契約)
上記と言い換えてもいいかもしれません。
動画では、どちらもサービスを開発している企業がクライアントである、と説明していました。しかし、少しだけ違います。企業で使われる基幹・業務システム開発の場合もあり(というか、これまでのSIerの主戦場)、ITとは無縁のクライアントも少なくありません。
そのため、「案件ガチャ」という言葉が流行り、Webサービス企業の新規開発なのか、金融系システムの運用案件なのかによって、得られるスキル・経験が異なります。
いろんな案件に携われることをメリットに挙げていましたが、ビジネスモデルでいえば、SESがより案件を変えられるメリットを享受しやすいと言えます。原則、SIer(受託案件)はプロジェクトの途中でメンバーを入れ替えないからです。
2次請け・3次請けとは
従業員を解雇しづらい日本では、労働力の弾力化として契約社員と下請けを使ってきました。有り体に言えば、2次請け・3次請けとは下請けです。
NTTデータや富士通、日立、NEC、アクセンチュア、NRIといったプライムSIer(=元請け/直請け)から仕事をもらっている開発会社(2次請け)です。さらに、2次請けから仕事をもらっているのが3次請けです。
なかには、「うちはプライムSIerから直接、仕事をもらっている1次請けだから」という開発会社もいますが、言葉遊びに過ぎません。
下請けなので、プライムSIer(元請け)と比べて給与が低くなるのは当然です。N次請けの数字が大きくなればなるほど、給与も環境も劣悪になっていきます。
ただ注意が必要です。単純に大手企業だから給与がよい、中小企業だから給与が悪い、というわけではありません。一つには中小であっても直請け案件が多い会社や、独自技術で他社の参入を許さない会社があるからです。自社サービス/SIerと同じように、中小企業だからダメだ、というわけではありません。
自社サービスを展開している企業=100%自社サービスではない
勘違いしている方も少なくないのですが、企業はたった一つのビジネスを展開している企業だけではありません。自社サービスを展開しつつ、SESも展開している企業も存在します。
理由は簡単です。自社サービスでお金を稼げないからです。見た目は自社サービス企業でも、よくよく見ると募集部署はSESだった…なんてことはザラにあります。
その意味で、セイト先生が結論づけている「部署による」は間違いではありません。
そのような企業は自社サービスでマネタイズできていないので、SES部署で入社しても自社サービスへ移動することは、ほぼできません。
正しい情報を得て、自分の目で確かめる
Webエンジニアだからいいわけではない、という記事でも書きましたが、その企業や採用部署の実情がどうなのかを知ることが大切です。イメージだけで決断したら、痛い目に遭います。
「○○だからOK」「▲▲だからNG」というだけでは、転職は判断できません。あなたの一生に関わることだからこそ、あなたの目と耳と頭で考えなければならないのです。
最後に。とはいえ、判断軸は必要です。ここでは給与に関する判断軸を2つほど紹介します。
一つはクライアントの企業名。ここに自社サービス企業(ユーザー企業)が多いか少ないか、元請けではなくNTTデータ○○、NEC〇〇、日立〇〇といったプライムSIerの子会社・孫会社が多いか少ないかで、判断できます。
元請けであればあるほど、給与は高い傾向にあります。わかりやすい例を上げれば、お客様から10億円で元請けが受注し、5億円で2次請けに再依頼をし、1億円で3次請けに再依頼をするので、下請けであればあるほど給与は安くなります。
本題ではありませんが、COCOAの問題は下請け構造です。安い=技術力の低い開発会社に投げるから、問題があるアプリが生まれるのです。
もう一つは売上/エンジニア数=1,000万円を超えているか。売上から給与が出ているので、給与より売上が低い、給与と売上が同じ、ということはありません。
大規模な会社だとミドル・バックスタッフが存在するので計算できませんが、100名以下の企業は社員の9割以上がエンジニアなので、一人あたりの売上が1,000万円を下回る企業は給与も安いといえます。
とはいえ、ベンチャー企業(スタートアップ)は赤字からスタートするので、この例に当てはまりませんが。
給与を気にされる方は、判断軸にしてはいかがでしょうか。
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