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液体なのに規則的な不思議な物質


概要

今回紹介するのは、流動性のある液体なのに分子が規則的に並んでいる結晶のような液滴が発見されたという論文です。

基本的に結晶というのは原子や分子が規則的に並んだ固体であり流動性はありません。そもそも分子の位置関係を変えずに流れるということ自体が考えにくいと思います。

しかし、そんな常識を覆す物質が発見されました。

何がわかったのか?

X線回折により、分子は液滴であってもヘリンボーン構造に並んでいることが明らかになりました。
ヘリンボーンとはレンガなどの積み方で見られる構造のようです。

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結晶構造なので、分子が規則的に並んでいるというところまでは納得できます。

しかしこの物質は液滴になり、垂直に立てた板の表面についた液滴は重力によって垂れ下がっていきます。

このゆっくりと流れる液滴をX線を用いて調べると、なんと流れているにも関わらず分子が規則的に並んでいることが明らかになりました。普通、分子が規則的に並んでいると氷のように硬くて流れたりはできません。

この規則性と流動性を両方持つという不思議な現象は、かなりミクロなスケールで、層状になった分子の2次元シートがずれ落ちて移動しているようです。つまり規則正しく並んでいる部分はそのままにシートがずれることで流動性を生んでいるということになるようですね。

また、ミリメートルスケールの液体内に分子を規則的に並べるということ自体が容易なことではないので、この物質はその点でも新しいということになります。

感想

正直、初めて見たときは理解できないというか信じられない気持ちでしたが、世の中にはこんな物質もあるんだという驚きに変わりました。
これを結晶と呼ぶのかはわかりませんが、原子や分子が規則的に並んでいれば固体という固定概念が消えてなくなった感じがしますね。


参考文献

Chiral crystal-like droplets displaying unidirectional rotational sliding
Takashi Kajitani, Kyuri Motokawa, Atsuko Kosaka, Yoshiaki Shoji, Rie Haruki, Daisuke Hashizume, Takaaki Hikima, Masaki Takata, Koji Yazawa, Ken Morishima, Mitsuhiro Shibayama and Takanori Fukushima, Nature Materials 18 (2019) 266–272.

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