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第4の固体が発見される

概要

今回紹介するのは、結晶・アモルファス・準結晶に次ぐ第4の固体として注目されている一次元規則結晶についての論文です。

この一次元規則結晶はは2次元的にはランダムに原子が並んでいるのに、残る1次元方向には原子が規則的に並んでいる構造であり、結晶粒界でその存在が明らかになりました。さらに、この構造は偶然できたわけではなく安定な構造であり、なおかつ物理的な特性も異なるという不思議の寄せ集めみたいな規則構造です。


Ceramic phases with one-dimensional long-range order
Deqiang Yin, Chunlin Chen, Mitsuhiro Saito, Kazutoshi Inoue and Yuichi Ikuhara, Nature Materials, 18 (2019) 19–23.


一次元規則結晶の図

一次元規則結晶

右側のランダムっぽく見える構造が何層にも積み重なっているようです。


CSLとは

異なる向きを向いた2つの結晶同士がぶつかったとき(重なった時)に特定の原子の位置できれいに一致する場合があります。
これを対応格子(Coincidence-Site Lattic, CSL)と呼びます。
異なる方位を向いた結晶がくっついてできている多結晶では、このようなCSLが観察されるようです。下の図では、CSLの一例を表しており、本来原子は四角形の格子上に並んでいるのも関わらず、2つの結晶がぶつかる粒界では少しいびつな六角形構造が形成しています。

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何がわかったのか?

酸化マグネシウム(MgO)セラミックス中の粒界で2次元的にはランダムな不規則な原子の配置をしているのに、その不規則な配置が1方向にのみ積層されている不思議な構造が初めて観察されました。しかし、詳細な調査により、不規則な2次元構造の中に六角形の(原子6個でできた)エリアがあることに気づきました。

この六角形構造がCSL構造の1つとして知られていました。このCSLと通常の四角形の格子が組み合わさったような構造が不規則に並び、それが一方向のみに規則的に並んでいるのです。

さらに計算により、この構造の安定性を調べると、複雑で不規則な構造は意外にも安定して存在できるということもわかりました。つまり偶然できた構造というよりは、MgOの2つの結晶の間(粒界)ではなるべくしてなったような感じがしますね。

また固体の性質として重要なバンドギャップもこの一次元規則結晶内では異なることもわかりました。確かに対称性が変わればありそうな話ですが、詳細まできちんと調べているあたりがまたすごいですね。


感想

かなり不思議な構造が安定に存在していること自体が驚きですね。
しかし、粒界という局所的な領域に現れるということは、多結晶中に埋もれた構造になるのでどのように取り出して利用するのでしょうか?むしろこの構造を取り出さずに使う方法があるのかもしれませんね。

また粒界のCSL構造は条件によって様々あるので、今回報告された構造以外にもいろんな構造が今後見つかるかもしれませんね

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