宝石はなぜきれいな色なのか
宝石や鉱物といった結晶はとてもきれいな色をしており、多くの人々をひきつけます。
今回はそんな宝石(結晶)と色の関係について紹介したいと思います。
ルビーとサファイア
誕生石・宝石として有名なルビーとサファイアですが、この2つは基本的には同じコランダムと呼ばれる鉱物です。
コランダムとは酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶で、色の違いは、結晶中に含まれる不純物の違いによるものです。
赤色のルビーは一部のアルミニウム(Al)がクロム(Cr)に置き換わったもので、青色のサファイアはクロムではなく若干の鉄(Fe)とチタン(Ti)が含まれていることが知られています。
結晶中に不純物があることで、吸収する光の波長(色)が変わり、私たちの目にも違った色に見えるわけです。
左から普通のコランダム、ルビー、サファイア
また、赤色以外のコランダムをサファイアと呼ぶ習慣があり、グリーンサファイアやイエローサファイアといった名称もあります。
このような不純物による色の違いというのは多くの鉱物で知られており、ダイヤモンドでも同様です。
カラーダイヤモンド
ダイヤモンドというとキラキラしたイメージを持つ人が多いと思いますが、このキラキラはカットによる効果が大きいです。
このダイヤモンドは基本的に炭素(C)のみで構成されており、無色透明の鉱物です。
しかし、窒素(N)を不純物として含むと、黄色みがかった色になります。薄黄色のものは産出量は多いようで価値が若干落ちるようです。しっかり黄色が出たものは高価なイエローダイヤモンドとして知られています。
また窒素が入った際に近傍の炭素が抜けるとピンク色になるそうです。これは窒素が持っていた余分な電子が炭素が抜け落ちた場所(欠陥)に補足されるためにおこるそうです。
このような電子を補足する欠陥をカラーセンター(色中心)といいます。
カラーセンターとは
これは結晶の欠陥に電子や正孔が補足されることで起こります。
簡単に言うと原子が規則的に並んでいるはずの結晶の内部で、原子が抜け落ちていたり正しい位置になかったりすることで、電子の状態が変わり色が変化する現象です。カラーセンターはこの時の欠陥のことを指しているようですね
エネルギーの高いX線や紫外線を当てることで、このカラーセンターを作ることができます。
有名な例では、食塩・岩塩(塩化ナトリウム)のX線を当てることで様々な色を呈することに成功しています。
http://www.process.mtl.kyoto-u.ac.jp/pdf/shinnpo45_p233_p240_tuji.pdf
カラフルな食塩が載っているので、是非引用元を見てみてください。
またカラーセンターはいろいろな種類があるようです。
このように後処理により色が変わる鉱物は自然界にも存在します。
代表的なものがアメジストとシトリンです。
アメジストとシトリン
アメジストを聞いたことがある人が多いのではないでしょうか
日本語で紫水晶といわれる通り、アメジストは水晶(酸化ケイ素)の中に鉄が不純物として含まれており紫色に見えているのです。
このアメジストに熱を加えることで鉄の価数(電子の状態)が変化し、紫から黄色へ色が変わります。
あまり有名ではないですが、黄色い水晶をシトリンと呼びます。
シトリンは天然にはそれほど多く存在しないため貴重で、一般的なシトリンの多くはアメジストを人工的に加熱したものだそうです。
(天然と人工は識別できるのだろうか??)
とはいえ、天然のシトリンも成長過程において、放射線の影響を受けたり、マグマなどにより加熱された結果生まれるので、物としては同じです。
ちなみに1つの結晶で半分アメジスト、半分シトリンのものをアメトリンと呼んだりします。
役に立つのだろうか?
今回の内容は主に宝石・鉱物のお話で、いってみれば趣味のようなものです。
これらはどうやって世の中の役に立つのでしょうか?
実際、不純物やカラーセンターは結晶における電子状態と密接に関係しているので、新しい電子デバイスなどの応用に使われています。
またカラーセンターの原理を使って無色透明のガラスに色を付ける研究もされています。
これはリサイクルが難しい着色ガラスの問題を解決するようです。
最後に
宝石とか鉱物を見ているとオカルトなパワーストーンの説明がされていることがありますが、物理の観点で見ると宝石に不思議な力はないですね。
そこにあるのは結晶の欠陥と不純物です。
それにしても、いつの時代も人々を虜にしてきた宝石・鉱物の美しさはとても物理的なんですね。
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