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なぜ、きれいな結晶が必要なのか

きれいな結晶というとどんなものを想像するでしょうか
キラキラと輝く宝石のようなものでしょうか、

実は宝石になるような結晶の多くは単結晶と呼ばれるきれいな結晶の1つにはなるのですが、専門的にはまだまだきれいとは言えません。※

今回はどうして、きれいな結晶が必要とされるのかについて簡単に紹介したいと思います。


きれいな結晶とは

そもそもきれいな結晶とは何でしょうか?

ここでは原子の並びが”特に”整った結晶のこと”きれい”と表しています。※

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理想的な食塩(NaCl)の結晶↑


結晶は原子が規則正しく並んだ物質のことですが、その中には原子の位置がずれているものや、原子の集団がほんの少し傾いたものなどがあります。

なんで、そんなことが起こるのかといわれると少し難しいんですが、ちょっとずれていた方が結晶としては安定なんです。

そのため、ずれが全くない結晶を作るのは非常に難しく、大学や企業の研究者は日夜きれいな結晶を作るために汗水たらして研究しているわけです。


なぜ、きれいな結晶が必要か

ようやく本題に入ってきましたね。
宝石だって十分きれいじゃないか!これ以上きれいな結晶を作って何になるんだ?と思われる方は多いでしょう。


半導体の歩留まり

半導体結晶には欠陥と呼ばれる原子が抜け落ちたり、余分に入っている領域が存在します。

半導体チップの中にこの”欠陥”が含まれていると電気が漏れ出たり、性能が変わってしまうなどの問題が起きます。そのため、半導体チップを作るときはこの欠陥を含まないようにカットし、きれいな部分だけ使います。

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それなら、”欠陥”を避ければいいんでしょ、って思われるでしょう。しかし、よほどきれいな結晶でない限り山のように欠陥が入っており、ちょっと避ける程度では済まされません。

すると、せっかく作ったのに使えない領域が増えてしまい。一枚の板(ウエハー)から少しのチップしか切り出せません。

そのため、半導体結晶を作るときは、欠陥の少ないきれいな結晶を作ることが求められます。

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(電子基板に乗っている素子はきれいな結晶)


X線で構造を見る

X線で原子の位置を見るときは、きれいな結晶が必要です。X線で原子を見るといっても、顕微鏡のように直接見ることはできません。

理系の人なら聞いたことはあると思いますが、回折と呼ばれる現象を用いて結晶の情報を取得します。この方法は顕微鏡にように見ることはできないのですが、あれこれ計算することで、原子の位置を特定できます。

もし、きれいな結晶を作ることができず、ちょっと乱れた結晶を使ってしまうと、この回折スポットがぼやけてしまいます。このぼやけた回折スポットを用いると原子の位置もぼやけてしまいます。

回折とか細かい計算とかわからないよって方は、きたない結晶をX線をつかって原子を観察したらぼやけて見えにくいとイメージしてもらえれば良いと思います。逆に、きれいな結晶を使うとはっきりくっきり見えるので、原子の位置がわかるということです。

特にきれいな結晶が必要になるのはタンパク質の結晶です。タンパク質は非常に複雑な分子構造を持っており、製薬やバイオの領域でとても重要視されています。ウイルスの薬づくりなどにも使われますね。

ただし、タンパク質できれいな結晶を作ることが難しいことが知られており、そのためにいかにきれいな結晶を作るかということにフォーカスして研究している人たちも大勢います。



最後に

今回はきれいな結晶について紹介してみました。

大学で”きれいな”結晶作ってます!っていうと大人の遊びかのようにとらえられてしまう場合もあるかもしれませんが、実際には私たちの生活の根底を支える非常に重要な研究なんです。

結晶というのはとても身近でありながらとっても奥深いんですね。

※科学的には、きれいな結晶=結晶性が高い・完全性が高い結晶の意味で使っています。



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