ペロブスカイト太陽電池の原理
以前、書いたペロブスカイト太陽電池の記事が思いのほか反響があったんですが、個人的にはもう少し科学的な話もしたいよな~という思いもありました。
ということで、今回はペロブスカイト太陽の原理についてもう少し詳しく紹介していきたいと思います。
なんとなく雰囲気が知りたいという方は、以前の記事をご覧ください。
逆に、どこにでも書いてあるようなありきたりな内容は嫌だけど、難しい話も嫌いだよ、という方は、是非ここから先読んでいただけると嬉しいです。
ペロブスカイト太陽の素材
ペロブスカイトというのは結晶構造の名前のことだという話は前回しましたが、具体的にどんな素材でできているのかは、紹介しませんでしたね。
ペロブスカイト構造というのは大きく分けて3つの場所に原子または分子が入ることで出来上がっています。つまり異なる3つのイオン(粒)が必要なんです。
そこで最も有名なペロブスカイト太陽電池の素材を紹介しましょう。
それが、NH3CH3PbI3です。
なに?暗号?ってなる方もいるかと思います。理系の人なら、なんか見たことあるよって思うかもしれませんね。
簡単に分割するとNH3CH3、Pb、I3の3つに分かれます。つまり、3つのイオンというのは有機物イオン(NH3CH3+)と鉛イオン(Pb2+)、ヨウ素イオン (I-)となるんです。
重要なペロブスカイト構造が分かったところで、次はその作り方を見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池の作り方
ペロブスカイト太陽電池は既存のシリコン太陽電池に比べて省エネルギーで作れます。その具体的な方法はスピンコートと呼ばれる手法です。
その名の通りペロブスカイトを製膜したい基盤を高速で回転(スピン)させて、その上に液体の原料をたらします。すると回転による遠心力で原料が基板上を広がっていき、薄く均一に塗ることができるんです。
私はこんな大きな装置は見たことありませんでしたが、イメージとしてはこんな感じです。回転させて伸ばす、ただそれだけです。
きれいに濡れ広がった液体を乾燥させると、基板上でペロブスカイト結晶が成長し、固体のペロブスカイト層が完成します。これは、塩水が乾くと固体の塩が析出するのとよく似ていますね。
一般的には聞きなれない用語だと思いますが、スピンコートは薄膜系の材料を作るうえではかなり重宝されている技術の1つです。
ペロブスカイト太陽電池の原理
ペロブスカイト太陽電池は基本的には普通のシリコン太陽電池と同様の原理で発電します。
太陽電池の原理やn型/p型半導体についてはこちらから
一般的なシリコン太陽電池と大きく異なる点としては、電気を生み出す大事なpn接合の間にペロブスカイト層が挟まっていることです。
一番簡単な太陽電池の仕組みでは、このpn接合のエリアで生まれた電子が流れ出すことで電流(電気)を発生させます。
一方ペロブスカイト太陽電池では、光が当たることでこの間に挟まっているペロブスカイト層で電子と正孔が生み出されます。これを光励起と呼びます。
ちなみに正孔というのは電子が座ることのできる席のようなものです。つまり、きちんと着席していた電子が、光が当たることにより立ち上がって動き出すといったイメージです。
光励起によって生まれた電子と正孔はそれぞれn型半導体とp型半導体を通って電子の流れとなります。つまり、この一連の流れによって発電されるわけですね。
ペロブスカイト太陽電池の課題
ペロブスカイト太陽電池にはいくつか課題が残ります。その中でも原材料の問題はわかりやすい課題の1つです。
上述したように、最初に構想されたペロブスカイト太陽電池にはPb(鉛)が使われています。みなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、鉛は人体にとって有害な元素として知られています。
野外での利用がメインである太陽に鉛が入っているとなると、鉛の漏出や太陽電池の廃棄などに十分な注意を払わなければなりません。
そのため、現在は鉛を使用しない鉛フリーペロブスカイト太陽電池なども開発されています。
鉛の代わりにはSn(スズ)という金属が有力なようですが、鉛ほどきれいな結晶を作ることができないようで、結晶作製技術もまた重要な課題になりそうです。
人類を救う素晴らしい技術とはいえ、新しい技術を新たな産業にするのは一筋縄ではいかないということですね。都合よく、太陽光発電の課題を解決するなんてことはそんなに簡単なことではないわけです。
最後に
今回は、ペロブスカイト太陽電池について少しだけ踏み込んでみました。ここから先は、少々学術的な内容になってくるかと思います。
ペロブスカイト太陽電池では日本初の技術でもあるので、日本語の科学記事はあふれるようにあります。興味があったら是非調べてみてください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?