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あなたや私がそう思えるその日まで

「大丈夫!」
私は、私たちは、何度そう口にしてきただろう。
そのうちの一体どれくらいが、本当に大丈夫だったろう。

ある時は、私はその言葉をおまじないのように唱えていました。
誰かにそう伝え、前を向き歩き出し、何度も何度も口の中にその言葉を含み、言い聞かせて進む。
「大丈夫、大丈夫」。

その言葉に背中を押されるようでいて、私が言葉を無理やり引き連れているようにも見える。滑稽で、だけどそうとしか生きられない。
憐れに見えぬようにするには、大丈夫を現実にしてしまえばいい。
そんな風にプレッシャーをかけて、手のひらにぎゅっと爪を立てた日が多くありました。


ある時は、誰かが大切な決断の前の日に私の手を握り言いました。
「何も心配いらないよ。あなたなら、きっと大丈夫」。
私はその言葉を聞いて、
「なんて力強いんだろう。私なら、きっと万事大丈夫だ」と思えたものです。
誰かが私を信じ伝えてくれるその言葉には、私もそう信じたいと思わせる力がありました。

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「私はいま、大丈夫なのだろうか」。
魔法の言葉だと思っていたそれの姿が、ぼんやりとしている日もあります。
目をこすり、耳を澄ませ、すっかり見失ってしまわぬようにじっと考える。
私たちの「大丈夫」は、まだ近くにいる?


姿の見えぬ時、あなたがその姿を忘れてしまった時、今度は私があなたの手を取り唱えよう。
「きっと、大丈夫。愛がまだここにある」

あなたがあの日の私のように、ちっとも大丈夫じゃないと泣きじゃくるなら、私はあなたを強く抱きしめよう。
あなたが信じたくなるその瞬間まで、ずっとそばにいます。

それで、明日が少しだけ「大丈夫」に近づくように、あなたに歌を、言葉を贈ります。
私たちはこの場所を、そのために作ったのだろうと思います。

もうすぐクリスマス。
いつもより夜が少しだけ明るくなり、鼻歌の少し増える季節。
どんな場所で、どんな心で眠る人にも、ここに訪れてくれたあなたに等しく愛が届くように。
呪文のように唱えずとも、日常に「大丈夫」が自然と味方するように。

そんなことを願いながら、クリスマスの訪れを心待ちにしています。


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