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夜を泳ぐ人へ

夏の終わりの風が吹いて、オレンジ色の甘い香りを嗅ぎました。
皆さんの街にも秋は訪れていますか。

今日は夜の話を。
昔から夜がすごく好きでした。
音の種類が極端に少なくなり、大切な事やそうでない事も、多くの人が秘密の話をするように声にする時間。
大好きな人たちとお酒を飲んで、現実や未来についていつもの30%くらいの力で話す。
お酒や眠気の力を借りて、愛を伝えるにも持ってこいの時間です。


子どもの頃の夜の記憶。
夕ご飯を食べ終わり、7時や8時くらいからリビングのソファで眠ってしまい3.4時間後に起きた時。そのまま目をつぶって、両親の話し声を聞いているのが好きでした。

思い返すと、なんて事はない日常の報告だったと思います。
それなのに、私を起こさぬよう小さな声で話すふたりの声はどこか特別な気がして、まだ眠っているふりをするのでした。

夢と幸せな夜を行ったり来たりしながらしばらくすると、不意にふわっと体が浮き上がります。
父にお姫様抱っこをされそのまま寝室へ。
その瞬間もまたたまらなく幸せで、夜の魔法を感じました。


生き物の多くが眠り、長く続く戦いも休憩に入るこの時間。
記憶や不安に襲われどうにもならない日もあるけれど、私はやっぱり夜のことがすごく好きです。

大人になって、ソファで眠る私を抱きかかえてくれる人とも一緒に住んではいないけれど、眠れない夜、隣で深い深い寝息をたてるパートナーを見て、あの時感じた幸せを思い出すのです。

安心。あまりに単純でチープな響き。
それでも私にとって何より大事な安心は、大好きな者と暗闇に隠れる事を言うのだと思います。

深夜にTwitterを眺めていると、スイスイと夜を泳ぐ人々にたくさん出逢います。
楽しそうで、どこか軽やかで、そして安心する。
よかった、ここにも居た。
私もしばし一緒に泳いでこの暗闇に隠れていよう。
もしよければ、あなたも一緒に。
困ったならとりあえず、手をつなぎ隠れていましょ。


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