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パリ1日1話〜4 バスの話〜

 公共交通機関では、よくバスを使います。地下鉄の駅はたいがい暗くて汚くてしめっぽいけど、バスはわりにきれいだし窓から外を眺めるのは楽しい。でも、バスの問題はけっこう悩ましいのです。

 まず、時刻表はなく「10分に1便」とか「15分に1便」とかそういうゆるいルールにそってやってくるので、時間が読めない。公共交通の会社(RATP)のスマホアプリやバス停の電光掲示板に「あと何分で来ます」と表示されるけど、さっきはあと1分だったはずなのに、次に見上げると急にあと15分に水増しされていたりする。困った。

 なんの予告もなく乗っているバスの経路が変わったりするとお手上げです。通るはずの道を、おそらく渋滞などを避けるため、急に迂回したりするので、乗ってるひとたちも「え!わたしの降りるバス停通らないの?」と運転手に詰め寄ることになります。終点の手前までしか行ってくれないことも、なぜだかたまにあります。これも渋滞具合によるらしい。困る。仕方なしに降りて、地下鉄の駅か別のバスを探すことになります。

夜遅めにバスに乗ると、たまに暴走バスに出合うこともあります。家のそばのバス停からルーブル界隈まではだいたい30〜40分でいくのですが、その暴走バスに乗ると15分で着いてしまう。運転手のお兄ちゃんは『ワイルド・スピード』ばりの鋭い目つきでノリノリで運転していて、車に弱いわたしはカーブで酔ってしまいそう。いいんですか、こんなひとに公共交通の運転手させて。なんという自由。

先日、いつも使っているバス停が工事で迂回になっていていることを忘れていて、うっかり到着してから気づいたのですが、なぜか迂回経路にそのバスがいる。うわ、これはラッキー!と思い、バスの入り口のドアを叩いて開けてもらって乗れたのですが、少し進んだところで「経路を間違えたので、全員降りて。ちゃんと乗れるバス停はあっちにあるから歩いていって、5分くらいだから」と。自分の間違いなのに、乗客を降りて歩かせる。この身勝手さ。脚の悪そうなおばあちゃんたちはかなり怒ってました。

でも、たまにはいいこともある。先日のサッカーワールドカップ期間中、フランス戦のときはバスの運転手もフランス代表のユニフォームを着て、ひとによってはフェイスペインティングあり。バス同士やフランス代表のフラッグを掲げる乗用車に出合うと、クラクションを鳴らしあって盛り上がる。乗客にとってはちょっと迷惑だし、どう考えても安全上良くないけど、このゆるい自由な感じは、良くも悪くもフランスっぽいなあ、と思うのです。

写真はうちの近所で撮ったバス。31番はパリ東駅と凱旋門を結ぶバスですが、凱旋門近くの高級住宅街からバルベス、北駅、東駅といった移民が多い場所までずっと乗っていると、この街にはほんとにいろんな人種が、そして金持ちから貧民までがいるんだなとわかります。ここだけの話、無賃乗車率もだいぶ高いです。

では、パリ1日1話。きょうは、ここまで。







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