ボードゲーム語(と言う名の自己満足)

はじめに

これは、「ゆる言語学ラジオ非公式 Advent Calendar 2022」の15日目の記事である。
ここまで素晴らしい記事の連続で、自分の稚拙な文章を並べるのは非常に恥ずかしい。が、名乗り出た手前やれるだけのことはやろうと思う。
(別の場所で使おうとしてボツにしたネタの使いまわしであることは秘密)

ボードゲームはいいぞおじさん

1か月ほど前の11月末にゆるボードゲームオフ会があり、かなり盛況だった(と個人的に思っている)。

今後も不定期で開催するらしいので(噂によると2023年1月中)、ボードゲームに関する用語、特にボードゲーム会で使えなさそうな物を中心に色々と上げていこうと思う。

ただ並べるだけではありふれたモノになってしまうので、語源やいつから使われているか、個人の感想など(可能な限り)も一緒に併記する。

*語学的な知識は皆無だし、ボードゲーム歴も10年くらいなので誤り等がございましたらすぐに訂正いたします


その前に、ボードゲームとは?

「そもそもボードゲームって何なの?」ここの定義が曖昧なままでは、以後の話で齟齬が生じてしまう。

ボードゲームと聞いたときにイメージするものは人によって違う。月並みな表現をするなら十人十色である。
あらぬ誤解を生むと面倒なので、本記事では「ボードゲーム」を以下のように定義する。

  1. 電源を用いない (デジタルゲームとの区別)

  2. 固有のコンポーネント(ボードやコマ、カード等)が存在する (トランプ等との区別)

  3. 1つの製品があれば、複数の人間が遊べる (TCGとの区別)

  4. プレイヤーにキャラクターが割り当てられることがない (TRPGやマーダーミステリーとの区別)

  5. 製作者が判明している (古来からのゲームとの区別)

数字は小さいほど重要視される。もちろん、この条件が全てではない。CDから流れる音声に従って遊ぶゲームや、参加者が各々持ち寄ることで真価を発揮するゲームもある。マーダーミステリーがボードゲームじゃないのかと言われたら、微妙なラインだ。

が、何事にも多少の例外は付き物である。あまり細かく分析しているとそれだけで1記事終わってしまう。ここは一旦この程度で許していただきたい。


用語解説

ここから本題。いくつかのジャンルに分けて解説する。
(MECEじゃないのは分かってます!許してください!)

  • ボードゲーム語

    • ボードゲーム関係でしか使わなそうな用語や、一般的な意味とは違う意味で使われている用語。最も役に立たない。

  • デザイン・テーマに関する用語

    • ギミックやコンポーネント、ジャンルに関する用語。やはりあまり役に立たない。

  • ルール・プレイに関する用語

    • 開始前の準備や、実際にプレイする際に使用される用語。唯一役に立つ可能性がある。

ボードゲーム語

重い (おも・い) 軽い (かる・い)

ゲームをプレイする大変さを評価する際に使用する。重量級ゲーム、軽量級ゲームと呼ばれることもあり、「重ゲー」と略した場合の読み方は「おもげー」派と「じゅうげー」派に分かれる。

往々にしてプレイ時間が長いゲームは、重いゲームとされる。しかし、盤面の多様性やルールの複雑性等を総合的に加味して付けられるなので、必ずしもプレイ時間=重さとはならない。
一つの目安として挙げるならば、プレイ時間~45mまでが軽量級、45m~90mまでが中量級、90m~からは重量級になることが多い。
*個人の感想です

ボードゲームに脳が侵食されると、重ゲーと重ゲーの間に、休憩と称して軽ゲーをやりだす。はたから見ていると恐怖しか感じないかもしれないが、当人たちは当たり前すぎて何も思わない。ふと顔を上げると、朝日とご対面までがセットだ。

「重ゲーばかりやっているから、間に軽いヤツ挟もう」
「3人プレイでおススメの軽量級ある?」

蹴る (け・る)

もちろん足で投げる訳ではない。大手クラウドファンディングサイト、Kickstarterでボードゲームに出資することを指す。同義語は、キックする。

由来はそのままサイト名からである。たまに他のクラファンサイトで出資する際にも使っているケースを見かけるが、いわゆる「Yahooでググる」になるので厳密には正しくない。

クラウドファンディング、つまり投資なので確実に手に入るわけではない。納期が守られないことが多々ある(自分も現在2年ほど待っているゲームがある)。それどころか、届かない事すらある(実際に1回あり、海外のメーカーなので問い合わせが面倒で諦めた)。まだ経験したことはないが、途中で頓挫することもありうる。
全ては自己責任。ご利用は計画的に。

「今月ちょっと蹴りすぎて請求がヤバい」
「蹴ったは良いが、和訳どうするんだ?」

しゃがむ (しゃが・む)

トップや権利をあえて取らないことや、あえて不利になる行動を取ること。理由は様々であり、トップになると狙われやすいので避ける、もう少しお金をためてより良いものを買った方がリターンが見込める、ミスをした時の言い訳など。

【一旦しゃがむことで、より大きなジャンプができる】=【少し待つことで、大きなリターンを得られる】から来ているらしい。僕の友人でニートのH氏も、きっとしゃがんでいるだけなのだろう。

完全に余談だが、ここ最近のゲームは「トップを集中的に狙う」行為がやりにくくなっている。いわゆる直接攻撃的なシステムがなく、プレイヤー間での交渉の余地が少ない(=負けているプレイヤーが結託しにくい)ゲームがマジョリティとなっているからだ。
理由は簡単、ウケが悪いらしい。個人的に少し物足りなさを感じている。

「ここは軽くしゃがむが吉と見た」
「いや、いまのはしゃがんだのよ。ミスとかじゃなく。」

ギーク (Geek)

BoardGameGeekの通称で、BGGとも呼ばれる。世界中のボードゲーマーから情報をかき集めて作ったデータベースサイトで、2000年1月から運営されている。各ゲームに対して、ユーザが10点満点の評価、プレイするのにベストな人数、プレイ時間の目安、5点満点の重さを投票することができる。ちなみに、この記事のボードゲームへのリンクは全てBGGになっているし、画像もBGGから拝借している。

その名の通り、ギーク=オタクたちが集まっている。そのため、コミュニケーションや大喜利メインのゲームや、軽量級ゲームは評価があまり高くない。逆にコンポーネントにこだわっているゲームや、重量級ゲームは評価が高くなりやすい。世のギークどもは、複雑ならば複雑なほど良いと思っているのだ。

現在のランキング1位はGloomhaven(グルームヘイブン) (Isaac Childres, 2017)。2017年に発売されたゲームで、その年の末から5年ほど首位の座を守り続けている。ちなみに、歴代で1位になったことがあるゲームは7種類しかないらしい。(先代の首位は、Pandemic Legacy: Season 1)

プレイ中のGloomhaven 気合の入ったコンポーネントだ

「このゲームベスト何人?ギークで調べといて」
「黒ブラス、BGGランク2位まで上がってきてるよ」

ミープル (Meeple)

ボードゲームによく入っている人型のコマで、両腕を左右に突っ張り、足は肩幅より少し広めに開いている。多くは木製であり、親指の爪サイズ。おそらく、大半のボードゲーマーは親の顔より見ている。【My】と【People】を合わせて【Meeple】。

世界で初めてミープルを使用したゲームはCarcassonne(カルカソンヌ) (Klaus Jürgen Wrede, 2000)。下の画像の赤・青・黄色のコマがミープルである。しかし、ゲーム内にミープルという名前は出てこない。あくまで木製の小さな人型コマが入っていただけである。


タイルに配置されたミープルたち

世界で初めてミープルと言う単語を使用したのは、アメリカ人女性のAlison Hansel氏。ちなみに、この方はボードゲーム関係者ではなく小学校の先生。ボードゲーム仲間とやりとりしていたメーリングリスト内で書いたのが、全ての始まりというのが定説となっている。

一人のボードゲーマーが発した何気ない造語が、世界中で使われている。何とも夢があっていい話だ。

「ミープルが足りん、困ったなぁ……」
「この一回り大きいミープルは親方コマです」

デザイン・テーマに関する用語

デザイナー (Designer)

ボードゲームの作者のこと。普段ボードゲームを買わない人にはなじみが薄いかもしれないが、全てのボードゲームには作者がいる。イメージ的には本の著者のような感じだ。

昨今のボードゲームには、必ずと言っていいほどパッケージのどこかにデザイナー名が書いてある。この文化は1970年代、他社のゲームと差別化するために始まったもので、「ゲームデザイナー」という言葉は SPI 社(当時の大手ボードゲームメーカー、現在は倒産している)のRedmond Simonsenによって作られたものらしい。

著名なデザイナーとしては、Alex Randolph, Friedemann Friese, Klaus Teuber,  Martin Wallace, Reiner Knizia, Sid Sacksonなど。日本人では、カナイセイジ氏(ラブレター)や林尚志氏(横濱紳商伝)が世界的な評価を得ている。

ボードゲーマーに「好きなデザイナーって誰?」と聞けば、高確率で誰かしらの名前が返ってくる(もしくはメタモンが爆発する)。より高度な『ギーク』には、「好きなメーカーってどこ?」と聞いても返してくれるはず(もしくはメタモンが大爆発する)。

競り (せり)

ボードゲームあるあるその1 「ボードゲーマー、オークションしがち」
いわゆるオークションである。単体でゲームになっている物や、大きなゲームの中に競りのギミックが含められている物もある。先述のReiner Knizia氏は競りゲー制作の名手と言われている。

かつては山のように出ていた競りゲーだが、昨今は姿を見ることは減ってきた。初回のプレイでは相場観が分からず、値付けに失敗して大損することが多い。山のようにゲームが出る現代では、1度目のプレイがいまいちだったら次のゲームに移ってしまいがちだ。

しかし、「ボードゲームの本質は競りである」と主張している人もおり、あらゆるゲームに何らかの形で組み込まれている。直接オークションでなくとも、ワーカーの配置や手番順の決定に、競り要素は含まれているのだ。

鉄道 (てつどう)

ボードゲームあるあるその2 「ボードゲーマー、鉄道経営しがち」
その名の通り、鉄道である。ボードゲームで鉄道と言えば、蒸気機関車が主となる。小さな紙の板の前に座りながら、大きくたなびく黒煙を置き去りに走り去る鉄の塊に心を躍らせている。それがボードゲーマーなのだ。
(あまり詳しくないので適当なことを言うと鉄オタに怒られそうだ)

全体的に重量級ゲームが多い。1プレイ3hは珍しくなく、6h越えのゲームもある。とはいえ、全てが重ゲーと言う訳ではなく、初心者向けの軽めのゲームもある。鉄道は人類のロマンなので、機会があればプレイして欲しい。

世の中には、鉄道ゲームに人生を捧げている人もいる。そんな人のためのイベント「Age of Steam Con(蒸気コン)」が、アメリカ・カンザスシティで開催されている。2泊3日コテージにこもり、Age of Steam(蒸気の時代) (Martin Wallace, 2002)をひたすらやり続ける。飽きないの?と思うかもしれないが、このゲームは追加マップが100種類以上出ている。マップごとにルールも違う。参加者曰く、これでも足りないらしい。恐ろしいイベントである。

古代エジプト (こだいエジプト)

ボードゲームあるあるその3 「ボードゲーマー、古代エジプト人になりがち」
何故かは分からないが、古代エジプトをテーマとしたゲームは多い。少なくとも1960年代ごろから出始めて、未だに続いている。きっと皆クレオパトラが大好きなのだろう。

明確な理由は分からないが、おそらくゲームが作りやすいからだと思う。ファラオの命令であれば、従わざるを得ない。ピラミッドを作るならば、資材と労働者の確保が必須だ。エジプト神話の神々なら、恩恵も懲罰も思いのままである。古代文明の発展は、いかにもゲームに向いている。あくまで想像だが。

2005年にBGGにてとあるユーザが、リストを公開した。その名も、「うんざりする諸々」。そこにリストされた物は色々あったが、特に話題になったのがエジプトを題材にしたゲーム、競りゲーム、そして鉄道ゲームだった。
このネタで大いに盛り上がったギークたちは、1つのゲームを完成させる。そう、「古代エジプトで列車のオークションをするゲーム」Cleopatra's Cabooseだ。残念ながら日本語版はないうえにおそらく絶版なのだが、死ぬまでにプレイしたいと思っているゲームのうちの1つだ。

ルール・プレイに関する用語

スタートプレイヤー (Start player)

ボードゲームあるあるその4「スタートプレイヤー、謎の条件で指定されがち」
ゲームを始める際に一番最初にプレイする人のこと。スタPとも。必ずしも初手番が有利とは限らないが、おおむね先にプレイする方が良い。また、手番の有利不利を埋めるように、初期条件に差があるゲームも見受けられる。

ルールブックを読むと、「一番おくびょうなプレイヤー」や、「最も最近銀行に行った人」、「水辺に棲んでいる人」などと、作者のユーモアにあふれた決定方法が記載されていることがある。この現象は、特に海外のゲームに多い。そして大体の場合、無視される。

ボードゲームのコンポーネントを見ていると、やたら目立つ謎のオブジェクトが1つだけ入っていることがある。その場合、十中八九スタートプレイヤーマーカーだ(そうでない場合は、ターンプレイヤーマーカー)。全てのプレイヤーの手番が等しくなるようにプレイするゲームが多いので、目印を用意しておく必要があるのだ。

ゲーマーじゃんけん (Gamer's RPS)

先ほども述べたが、スタートプレイヤーの決め方はなんでもいい。じゃんけんが鉄板なのだが、大人数だと時間がかかってしまう。とにかくゲームを早く始めたいがために考案された、新しい形のじゃんけん。それがゲーマーじゃんけんだ。この名称は、少なくとも2008年頃から使われており、発祥は秋葉原水曜日の会らしい。

ルールは簡単で、以下の3つ。詳細は、参考文献を見て欲しい。

  1. 一番少ない手を出した人が勝ち

  2. 一番少ない手が複数の場合、普通のじゃんけんと同じ判定を行う

  3. 残り1人になるまで繰り返す

10人程度ならば、体感で3回以内には決まる(と思う)。ということで、検証してみよう。10人でゲーマーじゃんけんをして、1人になるまで繰り返す。これを1000回行い、結果を並べてみる。簡単なプログラムなら書ける(それしか書けないとも言う)ので、やってみた。

下の表が計測結果である。平均値2.145回、最頻値2回、中央値も2回と体感よりも若干早かった。普通のじゃんけんを10人でやると、決着がつくのに平均で24回らしい。あくまで決着がつく回数なので、1人を決めようとすると恐ろしく長い。人類はみなゲーマーじゃんけんを覚えるべきだ。

計測結果 92.7%の確率で3回以内にスタPが確定する

バリアントルール (Variant rule)

「このゲーム全体的な出来は良いんだけど、ここがちょっとなぁ…」皆さんこんな経験はないだろうか?きっとあるに違いない。そんな時は、バリアントルール、つまり選択ルールの出番だ。ルールの一部を改変したり、追加したり、場合によっては削除することもある。

イメージがわかない人は、大富豪や麻雀を思い浮かべて欲しい。この2つはバリアントルールの塊みたいなところがある。現在日本にある主要プロ麻雀団体は、全て異なるルールを採用しているし、初対面の人間で大富豪をやったら絶対に最初にルールの確認をするはずだ。

公式で作られたバリアントもあれば、ユーザ同士で定番となったバリアントもある。先述のBGGでは、より良いルールを求めて日夜話し合いが行われているとかいないとか。デジタルゲームであれば修正パッチを待つしかないが、アナログゲームであればその場で自由に改変が可能だ。これもボードゲームの大きな魅力の一つである。

あとがきのような何か

……これゆる言語学ラジオに関係あるのか?(あるわけがない。使いまわしのネタなんだから)
書き終わってからそんなことを思った。まあいいや書いちゃったし。
ちょっとした宣伝を書いて、誤魔化しておこう。

この記事を読んでいる人の大半は、すでにサポーターだと思うがそうではない人に向けて。

サポーターコミュニティでは色々なイベントがオフライン・オンライン問わず開催されている。イベントがない日でも、中身のない雑談や、語源の話、量子論の話、今日も推しのVが可愛い話など、あちこちで色々な内容が語られている。(こだけの話、ちょっとHな話もしてるという噂)

凄い人しかサポーターになれないと思われがちかもしれないが、結構普通の人も多い(僕自身凡人も良いところである)。思い切って飛び込んでみたら居心地の良い場所かもしれないし、そうでもないかもしれない。
1000円/月の価値があるかと言われると、分からない。が、間違いなく新しい発見はあるだろう。ゆサDはいいぞ。

参考文献

ユーロゲーム ― 現代欧州ボードゲームのデザイン・文化・プレイ
ボードゲームの歴史だけでなく、ボードゲームをプレイする人に関しても詳しく書かれている。かなりおススメの本なので、普段ボードゲームをやらない人にもぜひ買って欲しい。

ルールデザインノート
ボードゲームデザイナーであり、『CivilizationIV』の実況でもおなじみのスパ帝氏が、ボードゲームを作る際に心がけていることをまとめたもの。600円とは思えない内容の濃さ(何故か自分の環境では表示がバグって6円になっている)。ボードゲームを作ろうと考えている人は必読。

蒸気の時代 ファンブック
蒸気の時代のマップレビューを100個まとめた同人誌。著者はHiro氏。プレイするだけではなく、自分でマップまで作ってしまった猛者である。前述の蒸気コンへの参加経験があり、参加レポを読んでいるだけでも面白い。

参考サイト

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