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「感情(エモーション)」とはなにか - エモーショナルデザインを考える

私たち人間には感情があって、それなくしては人間としては何か足りないものとなってしまう。「感情(emotion)」という単語からは、なんとなく極端な激情とか、嘆きとか、人間関係から生まれる愛憎だとかを想像しがちだけれど、それだけではない。日常的に触れるあらゆるモノやサービスを利用する経験の中でも「感情」が重要な位置を占めている。つまり、モノやサービスのデザインでその感情に訴えかけることが可能なのだ。

デザイナーとして、Emotional designについて、少し学んでみたいと思う。

日本語にすると「感情」となってしまうが、英語では「Emotion」と「Feeling」がある。ここでのキーワードは「Emotion」であって「Feeling」ではない。Feelingはそこに確実に存在するけれど、エモーションはフィーリングを感じて、それを元になんらかのプロセスの上に発生する上位のもの、という印象があるのではないかと思う。それについても掘り下げてみたいと思うが、また後日。

参考:
What's the Difference Between a Feeling and an Emotion? (Psychology Today)
https://www.psychologytoday.com/us/blog/hide-and-seek/201412/whats-the-difference-between-feeling-and-emotion

Emotion (wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Emotion

感情 (wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/感情

感情(Emotion)とはなんであろうか

「感情」を定義するのは難しい。それは確実にそこにある、というのは誰でもおそらく理解ができると思うけれど、では一体「感情」の定義とは何か、というとよくわからない。

世の中には感情とは何かを研究してくれている方々がたくさんいるので、引用させてもらう。David Watson と Lee Anna Clark(1994, the University of Iowa)によると、感情には以下の3つの特徴があるという。

1. 外的刺激または内的思考に対する心理的・肉体的反応
2. 自律神経系に起こる変化のパターン
3. 明らかに個人的な感情(feeling)・気持ち

では一つ一つ見てみよう。

外的刺激または内的思考に対する心理的・生理的反応

たとえば、誰か言われた一言で悲しくなったり嬉しくなったりすることがあるだろう。これはまさに、外的刺激に対して心理的に反応しているという状態だ。または、過去のことを思い出して自分の中でぐるぐると考えを巡らし、悲しくなって涙が出ることもあるだろう。それはもまた、心理的・生理的反応だ。

自律神経系に起こる変化のパターン

大切なインタビューを前にした求職者、絶対にミスしてはいけないゴールを前にしたサッカー選手。心拍数があがり、冷や汗をかき、膝が震えるかもしれない。それは感情によって自律神経系に変化が起きているということだ。

明らかに個人的なフィーリング・気持ち

感情とはとても個人的なものだ。もちろん、悲しんでいる人に寄り添って同情したり、みんなで一緒になって楽しんだり、気持ちを共有するということはできるように思う。実際私たちは「こころをあわせて」いると感じることがある。しかし、それでも、感情とはやはりとても個人的なものだ。私の感じている感情をそのまま誰か他の人が感じることはできない。

なぜ感情があるのか、感情は役に立つのか?

ポジティブな感情がプラスに働く、というのはなんとなくわかりやすいのではないだろうか。ネガティブな感情、まともに呼吸もできないほど緊張したり、自殺してしまうほど落ち込んだり、そんなネガティブな感情は必要なのだろうか?

ネガティブな感情、例えば恐怖、不安といった要素は、長期的にはトラウマや病気となってしまうが、短期的には生き延びるために必要なものとも言える。危険を察知し、回避するという行動を取れるのは、恐怖や不安を感じるからだ。

あるいは、何かに失敗して自分に対して怒りを感じた時、それをバネに別の解決策を模索したり、努力したりしてより良い結果をだそうとすることもある。元々はネガティブな感情がきっかけで、ポジティブな結果につながる例だ。

感情(Emotion)の分類

これまで私はざっくりと「ポジティブ」「ネガティブ」という分類をしてきたけれど、私たちが生きていく上で感じる感情というのはそんなに単純な白黒はっきりしたものではない。分類するにも文化や言語によってそれらは異なるだろうし、言うなれば人によっても異なるだろう(感情とは超個人的なものなのだし)。しかし、分類しようとする努力は絶えず行われているわけで、それらの努力の恩恵にあずかろうと思う。

有名なのは、アメリカの心理学者Robert Plutchik(1927-2006)によるPlutchik Wheelというものだ。

Wikimediaより引用。

Plutchik曰く、人間には8つのプリミティブな感情があるという。8つの、というのは上のチャートの内側から二つ目のものだ。英語版で申し訳ないが、そもそもこの人は英語話者なので、感情の定義も英語であり、そのまま日本語に置き換えられない部分もあろうと思う。

とにかく、Plutchik曰く「Joy(喜び)」「Trust(信頼)」「Fear(恐怖)」「Surprise(驚き)」「Sadness(悲しみ)」「Disgust(嫌悪感)」「anger(怒り)」「anticipation(期待)」の8つが私たちのプリミティブな感情だという。私たちの感情は、これら8つの感情の組み合わせによって様々に展開されるという。Inside out(日本語版タイトルは『インサイドヘッド』)ではTrustとSurpriseとAnticipationはいなかった。

この定義に対する批判は過去も現在もあり、これが完全なる感情の分類かというと決してそうではないであろう。ただ、このチャートは現在も広く使われており、感情を理解する上での基礎としては役立ちそうだ。

デザインにおけるネガティブ感情の危険性

ソフトウェアやなんらかのプロダクトをデザインするときに、ユーザーにネガティブな感情を抱かせてしまうと、そのユーザはその感情をきっかけに「別のもっといいもの」を探しに行くであろう。逆にポジティブな感情を抱かせるようなデザインの製品をユーザーは使い続けるだろうし、人にすすめたりもする。

機能的に、同じゴールにたどり着くことのできる製品が、今の時代は山ほどあるのだ。ユーザーがあえて自分のデザインした製品を使ってくれるためには、ポジティブな感情を動かすデザインをするように心がけるべし。

参考:
Clark, L.E. and Watson, D. (1994). Distinguishing functional from dysfunctional affective responses. In Ekman, P. E. & Davidson, R. J. (eds.). The nature of emotion: Fundamental questions. Oxford University Press.


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UI/UX系の仕事をしています。ずーっと昔はエディトリアルデザイナーでした。情報を制約のある中で効果的にわかりやすく伝える、という点で、エディトリアルデザイン->UI->UXと流れてきました。現在は、ものすごく複雑なシステムのUI/UXを担当していて、日々チャレンジです。
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