見出し画像

スペース・ニンジャズ・フロム・ヘル

この前の金曜日、いつものように仕事の合間にぼけっとTwitterを見ていたらとんでもない画像が飛び込んできた。

スペース・ニンジャズ・フロム・ヘル! 燃えさかる太陽とドラゴンをバックに、全身をサイボーグ化したニンジャ軍団が飛び出してくるジャケ。しかもよく見たらいくつかは目からレーザーを出すサメにまたがっているし、ロゴのフォントも露骨にエイティーズオタクコンテンツっぽい例のあれで、即座に「あっこれはまたヤバいやつだ!」と思った。

気になって調べてみると、まさにこの日1月17日に発売された新譜で、ドイツのメタルバンド「Victorius(ヴィクトリアス)」のフルアルバム、"Space Ninjas From Hell"であるらしいことが分かった。

スーパー・ソニック・サムライ

スーパー・ソニック・サムライ! サイボーグ・アイを光らせ、ジェットパックで空を飛び、レーザーカタナを振るうのがスーパーソニックサムライだ。それ以外のメッセージとかはない。とにかく曲がかっこいい。世界観と表現したいことが一発で伝わるめちゃくちゃ強いMVで、もはやスーパーソニックサムライって何だとか異論を挟む余地がない。だってドイツ人がこんなに高らかにレーザーカタナって歌い上げることある?

わたしはすっかりヴィクトリアスのこの歌と映像に魅了されてしまって、他にも収録曲のMVがないのか探してみた。

シュリケン・ショーダウン

シュリケン・ショーダウンは、(なぜか)チャイナタウンで開催される無慈悲な戦士たちによる死の手裏剣トーナメントだ。ヴィクトリー・イズ・コーリング・フォー・ザ・トゥルー・ニンジャ・ソウルズだよ! コズミック・ファイヤー・ブリング・ザ・ウェポン・オブ・ザ・ニンジャ・キングだよ。あまりの情報量に打ちのめされるしかない。イントロのシンセもいいし、これは特定の層を撃ち抜きに来てるなと思った。

Spotifyでも全曲配信している

そしたらSpotifyでもアルバムの発売当日から全曲配信していることを知って、さっそく通して聴いてみた。いい。もうなんか、タイトルがすごいんですよ。ニンジャズ・ユナイト、ワサビ・ウォーマシン、アストラル・アサシン・シャーク・アタック

普段メタルまったく聴かないわたしが聴いても良くて、単純に曲がかっこよくて、演奏が巧いし、歌詞がもう内容への共感とかじゃない。小学5年生の心で歌い上げているのだ。もし世界観がよくわからなくても、ラストの12曲目で、ストーリーをちゃんと語りで聴かせてくれる。

メタルというのが、いわゆるこういう、なんだかよく分からない熱いオタク魂と親和性が高いというのは薄々把握していたけれど、自分がわりと『ニンジャスレイヤー』(と数々のサイバーパンクSF作品)を通して入れ込んでいる「海外からみた勘違い日本・ニンジャ文化」と重ね合わせると、こうも腑に落ちるのかと思った。

でもう、すごいお気に入りになってしまって、これは普通に物理CDも欲しいと思って。別にSpotifyでも全曲聴けるからいいんだけど、国内盤のみのボーナストラックもあるらしいし、ブックレットの歌詞やアートワークも気になるし、居ても立っても居られなくなっちゃって。

物理CDを買いに行く

画像1

2日後の日曜日に、ディスクユニオン新宿ヘヴィメタル館へ行ってみた。初めて入ったよ、ヘヴィメタル館。ドア開けるなりイビル・ウィザード・ウーシュー・マスターが爆音で流れてて笑っちゃった。

画像2

ディスクユニオンで買うと、特典としてCDのラベルと同じデザインの缶バッジがついてくる。

画像3

画像4

画像5

いやこれ最高だよ。メンバー5人がスーパーソニックサムライのMVのときのままのキメキメのサイバーニンジャに扮していて、テキストで網羅された歌詞からも世界観がビシバシ伝わってくる。

基本的にどの歌でも、悪役サイドのニンジャ軍団……かつて撃退されたものの、太陽の裏側で長年復讐の機会をうかがっていた邪悪なニンジャクラン「サンブレイダーズ」の側に肩入れしている。スーパーソニックサムライがヒーローなのかと思ったら、そうでもないんですよね。この、暗い妄想に浸って退屈な日常に復讐したいっていうメンタリティって、メタル特有のものなのかなんなのか。

2019年に来日していたそうで、ニッポン・ナイツのMVはそのときのライブ映像やメンバーのオフショットを交えた楽しげな作品になっている。実質的なクールジャパンでは? バンドの公式サイトを見る限り今のところ予定はないようだけど、ヴィクトリアスがアルバムツアーで再来日するなら絶対行ってみたいよ。

アルバムもう何周もしていて、なかでもキャッチーなのはやっぱりスーパーソニックサムライなんだけど、どの曲も甲乙つけがたい。1曲目のテイル・オブ・ザ・サンブレイダーズは最初から全力疾走のツーバスドコドコいってる高揚感に満ちたトラックだし、ワサビ・ウォーマシンのイントロのアニメめいた小芝居からのホラー展開は落差がクセになるし、意外にも明るい曲調のアストラル・アサシン・シャーク・アタックはロボティック・ハイパースピード・サイバー・キネティック・シャークだし、アクション映画のエンドタイトルみたいなコズミック・スペース・コマンドー・ベースはまさにエンディングに相応しい壮大さだし。

というかもう、スペースニンジャとか宇宙殺人サメとかのトンチキ要素を抜きにしてもかっこいいバンドなのではと思って、このアルバムの前はどんなだったのかと調べてみたら、サードアルバムまでは普通にかっこいいメタルなんですね。前作の"Dinosaur Warfare - Legend Of The Power Saurus"から急にハンドルを切ってくる。レーザー・トゥース・タイガーじゃないんだよ。

かっこいいものを作り続けるだけではなくて、こういう何かしらのフックがあるほうが、今回の自分のように全然違うクラスタに刺さる機会が増えるのかなとも思った。2019のサイボーグメカニンジャ、2020のスーパーソニックサムライ…どこで何にハマるか分かりませんね。

今日も月曜朝イチで聴いてたけどめちゃめちゃ元気出るよ。スペース・ニンジャズ・フロム・ヘル! おすすめです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?