見出し画像

マドリード🇪🇸無料美術館でアートの価値を考える黄昏

海外に行くと感動するのが、無料の美術館や博物館の多さとその充実っぷり。国の政策としてアートにしっかりお金がかけられている環境は、本当に羨ましい。

万人に開かれた文化施設と言えば、イギリスの大英博物館などが思い浮かぶけれど、スペインもなかなか頑張っている。
特にマドリードでは、学生さんにとっても優しい優遇措置も取られているので、若い間にぜひ一度行っておきたい。

今回は、円安に優しいマドリード3大美術館を無料時間に巡ってみたので簡単にまとめておく。
(公式ホームページより、2024年6月18日時点)


芸術はみんなのもの。みんなで楽しもう!

「村の聖母」シャガール
ティッセン=ボルミネッサ美術館
シャガールといえばちびまるこちゃん

10代で初めてヨーロッパを訪れて、驚いたことは色々あるけれど、物凄く感動したのは芸術が学生や社会にとっても優しいこと。日本では、頑張って都会まで行けば好きな展覧会くらいなら厳選すれば観られるけれど、やっぱりバレエやオペラなんてそう簡単には行かれない。

学生さんのヨーロッパ旅行には、ぜひおすすめの国際学生証。↓↓

それがヨーロッパでは、国際学生証1枚持っていれば「いつでもどこでも思い出ついたら観に行けるし、美術館だって入り放題!」と思えるくらい、小さな街に住んでも芸術と文化が溢れていた。しかも廉価、または無料で。
大人だって、無料開放日や当日チケットを選べば、たとえ生活が苦しくても“アート"と触れ合う機会は十二分にある。 

文化施設は無料であるべきか

文化施設を無料で解放することについて、ヨーロッパで念頭に置かれているのは、「社会の中の文化格差の是正」や「教育機会の均等」などなど。
経済状況に関係なく全ての人が等しく文化を享受するために「文化施設は無料であるべきだ」という考え方がある。

「破壊されるオブジェクト」マン・レイ
ソフィア王妃芸術センター
自分より大きくてびっくり。原寸大かは知らんけど。

大英博物館を始めとする巨大な博物館や美術館等が無料の国イギリスでは、「博物館無料政策」を維持するかどうかが、労働党と保守党の考え方の違いを表すひとつの目安であり、選挙の争点にもなっている。
一般教養が「リベラル・アーツ(直訳:自由・芸術、自由人として生きるための学問が本来の意味での一般教養と聞く)」の国らしい。

ただ、義務教育などとは違うため「無料化してもリピーターが増えただけ」という調査結果なども出ており、国ぐるみの無料政策は「収入で収益を上げる民間団体への圧迫だ」という批判的な意見も、中には見られる。

博物館・図書館論争

戦後、日本でも「博物館や図書館は無料にすべきか」という論争のようなものがあった。
占領軍が運営していた図書館に対しては、軍の意向が強く働き、完全無料で運営される運びとなったけれど、当時は利用者を選択的に選別(して、選ばれなかった人を排除)することに賛成する知識人は多かった。
「博物館が貧乏人や労働者の休憩所に悪用されやるやうになる。」(『博物館施設近時の傾向』1929年、棚橋源太郎・著)という、100年前は過激なというか、でもなんだか最近もどこかで聞いたことあるような話が、当時から議論されてきた。

「我が子を喰らうサトゥルヌス」ゴヤ
プラド美術館
何度観ても激しい迫力が癖になる

いや、私も昼休憩は図書館で本読んでいるしがない労働者なので、心当たりがありまくるな😂
植物園や水族館などと並んで、博物館も「儲かる箱物」として、当時意識されていたこともあるだろう。

個人的には、無料にしたら良いんじゃないかと思う。
毎日会う(多分)ホームレスさんも居るけど、彼がそのままの状態で生きていかねばならない状況があることについても大いに問題なのであって、彼がそうなったことの責任も全てが彼にある訳ではないだろうし、彼にも日々幸せを感じるチャンスがあったら良いと思う。
そういう生活と地続きの世界に、アーツもリベラル・アーツもあって欲しい。

ちなみに、ユネスコでは「博物館をあらゆる人に開放する最も有効な方法に関する勧告」が、教育機会の均等を推し進めるために、1960年12月4日に採択されており、国内でも関係団体からは「“原則"無料」が叫ばれている。

黄昏時のマドリード3大美術館巡り(無料編)

夜は飲み明かし、朝はチュロスで〆、そして寝る。暑過ぎるお昼はエアコンの効いたホテルでゴロゴロして、元気いっぱいの状態で夕方目覚めたら美術館巡りを始めよう!

ティッセン=ボルネビッサ美術館

月曜日、オープンと同時は地味に並んだ

スペインの美術館では不得意な分野を集めたという「ティッセン=ボルネビッサ美術館」。
モネやゴッホなど、メジャーな印象派の絵画が充実していて、確かに珍しい感じだった。

「無原罪の御宿り」エル・グレコ

館内はそんなに大きくないので、オープンと同時などの混み合う時間帯に入館すると、観覧中も永遠に混み合ったままの行列状態でベルトコンベアーのように絵の前を移動していくはめになる。
食事時など、人の少ない時間の入館がおすすめ。

無料時間
月曜日 終日
土曜日 21:00〜23:00
18歳以下ならいつでも無料!

臆せず並べばすぐ入れる「プラド美術館」

閉館後のプラド美術館

スペイン王室コレクションから出発した、マドリードで最も有名な「プラド美術館」。
ゴヤなどスペインの画家のコレクションだけでなく、ルネッサンス最盛期のイタリア画家ティツィアーノや、ブリューゲルなどのフランドル絵画まで幅広く、そして手厚く鑑賞可能!

「女官たち」ベラスケス

無料時間めがけて「入れないのでは?」と思うほどめちゃくちゃ大量に人が列を為すけれど、無料なのでチケットの確認等なくみんなスイスイ入って行くため、拍子抜けするほどすぐに入れる。

ただ、2時間で観られるような量では全くないので、チケットを購入して朝から晩まで入り浸る方が確実に楽しめると思う。
無料時間
月〜土曜日 17:00〜19:00
18歳以下無料、25歳以下の学生はいつでも無料

裏口から入るべし「ソフィア王妃芸術センター」

透明のエレベーターから

ピカソの「ゲルニカ」が有名な「ソフィア王妃芸術センター」。20世紀の近代美術が中心に展示されている。

「パイプをくわえた男」ミロ

ダリやミロなど、日本でも有名な画家の作品が盛りだくさん!現代美術なので、かなり見やすい。

ソフィア王妃芸術センターは入り口が複数あり、正面じゃない方の入り口を使うと、無料時間でも行列を避けて入ることができる。
平日19時過ぎに裏口から入るとほとんど行列が無かったけれど、さすがに正面は普通に並んでいた。
無料時間
月、水〜土曜日 19:00〜21:00
日曜日 12:30〜14:30
18歳以下無料、25歳以下の学生はいつでも無料

濃厚な色合いのスペイン美術を満喫

「ギターを持った農民」ミロ

夕暮れ以降も盛り上がるスペインで夜の美術館巡りも一興。
無料ということもありどこも並ぶけれど、無料開始時間ぐらいに行けばどこともゆるっと入れるので、「ちょっと寄っとこう」くらいの軽い気持ちで美術を始めてみたら、想像以上に楽しめるかも!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?