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Gくんへ

大島智衣

『Gくんへ』

今までおつかれさまでした!

Gくんとは部署が違ったのであまり話す機会はなかったけれど、私は勝手にGくんとは仲良くなれそうな気がして親近感を持っていました。

Gくんというアルバイトの男の子が別の部署にいるとは聞いていたけれど、ついに対面して「よろしくお願いします」とお互いに挨拶をした日、午後になって私は地下のメールボックスから届いた郵便物を取り出してオフィスへ戻るまでのあいだに、取り出したときにはあったはずのハガキが一通ないことに気がつきました。

地下へとまた引き返し、道々ハガキが落ちていないかキョロキョロしながら歩いていたら、喫煙ルームのGくんと窓越しに目が合ったんだ。

それで、Gくんに、落ちているハガキを見なかったか尋ねようと一歩踏み出した瞬間に、Gくんは「あっ」という顔をして喫煙ルームから出てきてハガキを私に手渡してくれたんだよ。

「ありがとうございます! 落としちゃったと思って探してて。どこに落ちてましたか?」と焦って早口で訊いたら、「ドア開けてすぐのところ」って教えてくれて、そのドアがどこのドアだかわからなかったけど(笑)、とにかくありがたくって、ペコペコお礼を言って私はオフィスへ戻りました。

あのとき、あのGくんの「あっ」の瞬間、さっき初めて会ったときに、服とかかばんに滲んでしまったボールペンの滲みみたいな、胸のあたりにぽつんと着いたなにかが、もう一滴色濃く滲んだような、そんな感じがしたんだよ。

何言ってんだよ。ぼけっとしてハガキ落としてんなよ。って感じだよね。あれからすごく気をつけてるよ。

それからね(まだある笑)、ものすごく「はーあ」って気持ちになった日にね、

引きずらない引きずらない
気持ちを切り替えよう

って思うけど、うまくできなくて、オフィスを出て一階のエレベーターホールで多分トイレから戻ってきたGくんと鉢合わせして、いつもは自分から話しかけたりはしないけど、なんか話しかけたんだよね私。

「最近は週何回入ってるの?」って訊いたらGくんが「週一回」って答えて、週一回かい!って思って笑っちゃった。

それから、「さっきエレベーターで地下に降りてドアが開いたらNさんがメッチャ目の前にいて死ぬほどびっくりしちゃったんだ」って訊かれてもいない報告を思い出し笑いがとまらないって感じになりながらしちゃったら、「Nさんいつもメッチャ目の前にいますよね」ってGくんも笑ってくれて、そういうところもホント助かった。

「はーあ」のループの世界から、全然「はーあ」なんてない世界に、Gくんは連れてってくれる人でした──。

だからGくんには本当に感謝しています。
本当に本当にどうもありがとう。
またどこかで会いましょう。
応援しています。
3月末日

──というのを、年度末にはお互い契約満了でさよならする予定のGくんに手紙を書いて送るつもりで下書きを書いておく。渡せるかはわからないけれど。



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