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男子発言ノート

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【連載エッセイ】どうせ“私じゃない誰かを好きな”男子たちの言動について。
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記事一覧

「ウエスト、ゴムの服ばっか」-男子発言ノート55

週末の夜、それは開かれる。──お菓子パーティーだ。 一週間、心を無にして働いたじぶんへのご褒美に開催する、じぶんでじぶんを労うパーティー。それがお菓子パーティー。 誰にも邪魔されずに、ただただ、お菓子を袋いっぱいに買い込んで、ただただ、テレビなど観ながらそれを頬張るだけの、ごきげんなパーティーだ。 ポテトチップスや、せんべい、チョコレート……幸せいっぱいの袋をだいじに横に置きながら、私はその夜もわくわくともぐもぐしていた。 そんな夜に……ピンポーン。 え、誰!? 至

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「みかん貰いに来ました」−男子発言ノート54

そのひと言で、もうじゅうぶんだった。 とある公演にスタッフとして参加したときのこと。 外部からお呼ばれしたスタッフは基本孤独だ。 そのうえ、本番での失敗は許されまい、と日々張り詰めた気持ちがつづく。 そんななか、気を使って声を掛けてくれたり、優しく接してくれるスタッフさんや役者さんには、“初めて見たものを親鳥だと思うひよこ”のようにどうしてもなついてしまいがちになる。 細やかな仕事ぶりでリスペクトしていたとある演出助手さんも、そのおひとりだった。 →建て込まれた客席

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「ちょっと遅くなりましたけど」男子発言ノート53

今年のホワイトデーにはお返しをもらえなかった。 去年も、もらえなかった。 バレンタインの季節だからそう思ったのか、『ビスチョコ畑』が店頭にならぶこの時期だからそう思ったのか──どちらが先だったか、今年のバレンタインにはバイト先の郡司くんにビスチョコ畑をあげたいと思った。去年は別のバイト先の男の子にあげた。 けれど、今年のホワイトデーにも去年のホワイトデーにも、ビスチョコ畑のお返しはもらえなかった。当日に会えもしなかった。お相手二人とも非番だった。 ビスチョコ畑というのは

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「気づいちゃった」 -男子発言ノート52

手作りスコーンがおいしいカフェで、遅めのランチ休憩を取っていたときのこと。 店内にはテーブル席が3つ。 スパイスカレーのランチを、壁に面したテーブル席で私はひとり食べていた。 左隣のテーブル席では男女ふたりがランチを取っており、その会話がどうしても聞こえてくる。 どうやらふたりは、かつて仕事を一緒にした、若い男子とお姉さん的存在の年上女性で、ひさしぶりに再会したようだった。 お姉さんは、かいがいしく男子の近況を聞いてあげ、同調したり、適度にアドバイスを送ったり励ましたり

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「開催しましょう!」 -男子発言ノート51

ヒドいんだよ。職場の女の子に誘われて行った合コン的な男女3:3の集いで、食べっぷりが良く嗜好が合うな~って思った人に次の日ほんの~りご飯のお誘いメッセージを送ったら、「じゃ、今度おーしまさんオススメのお店で開催しましょう!」って返信が来た。 開……催? 「開催って、、何をですか?」って思わず送った。一応ね、念の為。 だって私の早合点だといけないから。いつも深読みしすぎてミスリードしがちだから。 そしたら数時間後に「飲み会です!」って元気よく返事が来た。 だね、飲み会だ

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「立派な主夫になりたいなって」 -男子発言ノート50

仕事を終えてエントランスへ下りると黒い人影が見えた。 Gくんだ。エントランスに置かれているパンフレット類をしげしげと覗き込んでいるGくんの姿だった。 私は咄嗟に、ひっつめておだんごにしていた髪のゴムに手を伸ばした。はやく、はやくほどかないとGくんにこのひっつめ頭を見られる! 色気も何もない! そう焦り、ここ一番の速さで手荒くゴムを外して、髪をバラし整えた。ふぅ。ぎりぎりで己の歩調に間に合った。 「おつかれさま」 声を掛けると彼が振り向いた。 「あ、おつかれさまです」

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「全然見えてなかった」 -男子発言ノート49

いつもと同じ朝だった。 いつも通りに出勤して、職場のエントランスを整頓していると、自動扉が開く音がして誰かが入ってきた。 この時間にここを通るのは、顔なじみのスタッフか、利用者か、そうでなければ迷子の人だ。ふいにそちらを見る。 すると、見たことのない青年だった。しゅっとした感じの、知らない青年。けれど彼は、ずんずんと私の方へ向かってくるのだった。 ……誰? 彼と私はほんの刹那見つめ合った。 そして、お互いが2メートル先くらいに近づいてようやく「……? ……?? なんだ

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「恋に臆病になってるね」 -男子発言ノート48

「赤玉出るかも」 と、己の生殖機能の残りの在庫をひどく案じていた赤玉男子*に久々に会ったので、どうなの最近? 赤玉のことまだ気にしてる? と尋ねたら、 「いや、もうなんか俺……恋に臆病になってるね」 は? 「相手との関係の、この先のこととかを考えると……自分のやりたいこととか、一人の時間とか、その先の結婚とか……」 何じゃそれ? “臆病になる”っていうのは、過去に恋愛で傷ついたりして「もう同じ思いをしたくない」って〈弱気〉になることだよ? 赤玉氏の場合は、〈気

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「いや、しょっぺーから」 -男子発言ノート47

ラーメンを食べ終わる頃合いになると、今でもあの日の言葉を思い出す。 * もうずいぶんと前のことだけれど、学生時代の友人の結婚パーティーがあった帰りに、同窓生4〜5人でラーメン屋に立ち寄った。 余興目白押しのイベント乗り重視のパーティーで、お腹がまったく満たされることなく会場を後にした私たちは、名前を聞いたことがある有名なラーメン屋を見つけ、わいわいと入店した。 ひさしぶりに再会した懐かしい面々がずらりとカウンターに腰掛ける。私の隣にはスーツ姿のTが座った。 濃厚鶏だ

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「○玉出るかも」 -男子発言ノート46

「彼女欲しいよー。結婚したいよー。 誰か紹介してよ、おーしまさーん」 うるさいなあ。 事あるごとにそう訴えてくるアラフォー男子が、そう言いながらもある報告をしてきた。 「最近、俺モテてるかも」 やっぱうるさい。 なになに、よかったじゃないですか〜! と表面上称えると、「でもなんか、ちょっと違うんだよね……」とスマホの画面に目線を落としながらうなだれている。 見せてくださいよ〜と彼のスマホを覗き込むと、画面越しにも伝わるノリノリのテンションで、「○○さん! 私、今、メ

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「こころもカッサカサです」 -男子発言ノート45

「乾燥してますね〜」という話になる。 冬のこの季節、居合わせるひとと掛け合う言葉は「寒いですね」「乾燥してますね」などなど冬冬している。 いつもは快活な男子がつぶやいた。 「こころもカッサカサですよ、この日々にっ」 どうしたのだよ男子。 そのこころに、私がこっくりとしたテクスチャの何らかを塗り込み浸透させ、潤してあげられたらいいのだけれど。 「馬油」ならぬ「おーしまー油」的な何かを。 * どうしたらきみの日々はカッサカサじゃなくなるのか。 私が隣で、きみにとっ

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「うわの空です」 -男子発言ノート44

一日の終わりに、駅に向かって皆おなじ方向へと帰りゆく雑踏のなかで、前をゆく若い男女の会話が聞こえてきた。 やさしげな男子は聞き役に徹していて、隣の女子は嬉しそうになにかをずっと喋っている。彼女がきっとじぶんの好きなことについて、その魅力を彼に語っているみたいだった。 すると、感心しながら終始にこやかに相槌を打ちつつも、その話題についていけてはいないらしい彼は恐縮した様子でこう答えた。 「いいですねぇ。なんか僕、詳しくなくて……や、なんか僕、すみません……うわの空です」

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「眠そうですね(笑)」 -男子発言ノート43

晩めしに出されたイカそうめんが食べ残ると、母は翌朝それを醤油で煮たりした。大根のつまも一緒くたに。大葉ももちろん一緒くた。 そのときの、「こんなにも?」というほどに縮んでキュッとなったイカの感じと似ていると思う。泣いた翌日の、腫れたまぶたの二重の部分って。 もしくはソ・ジソブに似る。目周りの雰囲気がソ・ジソブ的になって、アンニュイな韓国人俳優の気分を味わえる。 ある晩、とある事情でひとしきり泣いたのだけれど。翌朝、鏡に映ったのはハッとするほどのソ・ジソブだった。まぶたにイ

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「ナカガワケン」-男子発言ノート42

ある日オフィスで経理担当の男性が尋ねてきた。 「ねぇ。ナカガワさんって知ってる? ナカガワケンさんって人から振り込みがあったんだけど、誰だろう? 心当たりある?」 知らない名前ではあったけれど、「どんな漢字ですか?」と一応訊くと、 「分かんない。カタカナだから」 そう言って通帳を見せてくれた。 そうか。通帳ってカタカナで記帳される。 うーん、分かんないなぁ……ナカガワケンさん……中川……賢……? そう考えていたら、 「あっ、ごめんカナガワケンだった!」 神奈川県

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