好きにならずにいられてよかった

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銀歯を落としたシンデレラ―好きにならずにいられてよかった〈12〉

もしも銀歯を落としてしまって、どこからともなく神様が現れ、 「あなたが落としたのは銀歯ですか? 金歯ですか? それとも……」 などと尋ねてきたら、どう答えるべきだろう。 私ならばこう答える。 「セラミックの歯です! 私が落としたのは」 * 正月、豆餅をたくさん食べすぎて銀歯が取れた。 銀歯というか、詰めモノというか。 「取れちゃったかぁ……」と思いつつ、「取りあえず詰めとける?」と元の位置に押し込んでみると、うまくガチッとはまるのだった。さすが“詰めモノ”。 それ以

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コロッケ一個で堕ちる−好きにならずにいられてよかった〈11〉

恋に落ちるのには、たった一個のコロッケがあればじゅうぶんだった。 「コロッケ、よかったら」 そうAさんに差し出されたコロッケに、瞳孔が思わずぐんと開いた。めっちゃおいしそう。夕方に差し掛かり小腹が空いてきていた食欲の瞳孔もぐぐんと開いた。揚げたてだったし、昔ながらの名店のだった。 続いて「誕生日プレゼント?」と少しいたずらっぽく笑うAさん。こころの瞳孔までもがぐっぐーん! 先日、40歳の誕生日に誰にも祝われなかった。そのうえ、トホホなもらい事故が重なり、泣きっ面に蜂だっ

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優しみあまる必レス男子−好きにならずにいられてよかった〈10〉

好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。 好きになってもらえるはずがないから、傷つく前に早々退散。 ホントはどーでもいい理由にかこつけて。 好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間―。 気になる男の子にはいつも質問攻めにしがちだ。 好きな食べものは? 兄妹はいる? ヒマな時間は何をして過ごしてるの? そんなことを訊いては、ほほーんと査定しているのだった。 といっても、それは「私を好きになってくれる可能性が少しでもあるのかどうか?」という一点

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枝豆女子vsブロッコリー男子 - 好きにならずにいられてよかった〈9〉

枝豆をひたすら切り落とすバイトをしていた。 初夏の2ヶ月ほど、農村地帯のデッカい倉庫で、ひたすら毎日。数十人のパートのおばさま方に混ざって、朝から夕まで、チョキチョキンと。 座り仕事とはいえ、スピードとコツを求められる結構ハードな仕事だった。もたもたしようものなら、女将さんに急かされ、叱られ、下手すると「あれ? あの人いないね」……クビである。 それでも、デスクワークと自己実現とのはざまで悩み疲れていた当時の私には、ちょっとしたリハビリと社会復帰への足がかりとして、ちょう

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ヘリウム男子には要注意 -好きにならずにいられてよかった〈8〉

好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。好きになられるはずがないから、傷つく前に早々に退散。ホントはどーでもいい理由にかこつけて。 好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間—。 なんだかいつも、ふわふわした気持ちにさせてくれる男子がいる。 風船を膨らますみたいに、嬉しい言葉をフーフーと吹き込んで、けらけら笑って。要注意なのである。 「何スかおーしまさん、今の顔!だははッ」 人の顔を見て大ウケしている。何って。ただ、考え事してただけなん

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第三の“やぶさかではない”男子 -好きにならずにいられてよかった〈7〉

好きにならずにいられる理由を探してホッとする。 好きになってもらえるはずがないから、傷つく前に早々退散。 ホントはどーでもいい理由にかこつけて。   好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間—。 幼い頃に観たアニメ「魔法の天使 クリィミーマミ」の主題歌をいまだに思い出しては、あの甘い歌声とともにその歌詞の意味を反芻する。 ♪ 男の子とちがう女の子って  好きと嫌いだけで 普通がないの   (『デリケートに好きして』詞:古田喜昭) 「好き」と「嫌い」だけ

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それは言ってほしかった - 好きにならずにいられてよかった〈6〉

誰かを好きだという気持ちに気づいたら、相手に想いを伝えるべきだ。 しかしもっと早くに、気づいたらすぐに言うべきことがあると思う。 ある日の午後イチのファミレスで。 映画監督と脚本家の男性二人とひとしきりおでこを突き合わせながらシナリオ会議をした後、一旦トイレに立った私は自分の顔を鏡で見て、ひぃっ!となった。 全開のおでこの左右それぞれに、1センチ角ほどの白い紙くずがへばりついていたのだった。ひぃっ! それはさっき、お昼にひとりで熊本桂花ラーメンをおいしく平らげた時に、吹

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チョコひと粒の恋 - 好きにならずにいられてよかった〈5〉

とある男性にインタビュー取材をしたときのこと。 話を聞いていくうちに、私はどんどんとその彼の魅力にノックアウトされまくり、いつしか心の顔面が、試合後ボッコボコのボクサーのようになってしまった。 大丈夫、私? って心配するくらいの。 その日は夕飯なんて食べずにチョコ菓子のBAKE(ベイク)一つで済んでしまったくらいの。 で、帰り際に彼が寄ってきてくれてギュッと握手され、 「今日はお会いできて良かったです!!」 と言ってくれた言葉をその後、反芻しまくっていたのだった。

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湯上がり銭湯男子 – 好きにならずにいられてよかった〈4〉

原付バイクを走らせ家まで帰る夜道、信号待ちをしていると、前方から見覚えのある男子が自転車に乗って近づいてきた。 暗くてよく見えないけど、やっぱり。バイト先で一緒の王子系男子だった。 思わずすれ違いざまにヘルメットをパカっと開け叫んだ。 「○○君! おーしまです! ■■のバイトの!」 がっつりフルフェイスのヘルメットを被っていたから、目しか見えてないんじゃ私が誰か分からないかもしれない。大きな声ではっきりと、夜の路上で、自分の名前・勤務先・雇用形態を叫んだ。 すると男子はブ

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発泡し続けろソーダ水 – 好きにならずにいられてよかった〈3〉

好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。 好きになってもらえるはずがないからと、傷つく前に早々に退散。 ホントはどーでもいい理由にかこつけて。 好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間―。 手渡されたソーダ水の口をひねって、勢いよく噴き出してきた炭酸水はもう、恋のはじまりの盛大なファンファーレでしかなかった──。 仲間うちでの持ち寄りパーティで、お酒を割る炭酸水が切れて買い出しに行ってくれた彼は、そういえば思ったよりもずいぶん早くに戻って来た

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