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母の日に起きたことと起きなかったこととアウトドアスパイスほりにしの布教メッセージ

今年も母の日が終わりました。インスタグラムやFacebookを見ていると、母への感謝、夫や子供からもらったプレゼントの投稿が並びます。うんうん。感謝を送る日っていいじゃないですか。

我が家の母の日は、小学生の子供達はバスケの試合がそれぞれ都内の別の場所であるということで出かけて行った。小さい娘には夫が付き添っていて、息子は友達と一緒に電車で。私は家で掃除に精をだす。

夫・娘チームは、帰りが遅くなるからご飯は食べてくるというので私は息子と二人で家で食べることになっていた。

18時頃、大分からふるさと納税で届いた美味しい牛肉と、玉ねぎとにんじんを小さく刻んでフライパンで炒め始める。肉の焦げるいい匂いがキッチンに立ち込め、否応なく幸福感が湧いてくる。雨のなか帰宅した息子はリビングでYouTubeを見ているのを横目で見ながら、牛肉に並行して私は息子の好きなワカメと小松菜のお味噌汁をカツオと昆布の出汁から作る。二人で仲良くつついて食べようと思った、母の日のディナー。(卒業式の呼びかけ風に)

そこへ思いがけず早く夫・娘チームが帰宅する。ダダダダ、とリビングにかけてきた娘は開口一番「バーガーキングに行ってきたよ!美味しかった!」と満面の笑みで朗らかにいう。我が家では日頃外食はほとんどしないし、ファーストフードも滅多に食べないのでバーガーキングなんて3-4年に一回の大行事なのだ。ちなみにマクドナルドも、彼らはお友達の家でしか食べたことがない。私は別にアンチマック党でもなんでもないのだけど、習慣的にほとんど毎日家で食べるからマクドナルドに行く理由がなくてなんとなくそうなっている。

娘の報告を聞いた息子が、「えええ!ずるい!!」となって形相が変わるのに2秒もかからず、僕もバーガーキングが良かった、もう家のご飯なんて食べたくない、今からバーガーキングに行く、もう嫌だ僕だけ酷い、妹ちゃんだけなんてパパとママはどうかしてるおかしい、、と泣き崩れて収拾がつかなくなってしまった。

もういいや、こうなったら例外対応をしようと思って普段は食事中に出すことはないポテトチップスを開封、お皿にザザザと盛る。「ポテトチップスもあるからバーガーキング同じようなもんだよー」と声をかけても寝室で嗚咽していて出てこない息子。同じではないらしい。閉じられた扉の向こうから、しゃっくりまで聞こえてくる始末。

結局、肉炒めとポテトチップスを食卓でひとりでつつき、半分ほど消費した頃にやっと、泣き腫らした顔で寝室から出てきた。ぶつぶつ文句を言いながら肉を少しだけ摘み、息子はそのまま拗ねてまた泣きながら寝てしまった。

以上が我が家で母の日に起きたこと。

まぁ、がっかりする気持ちはわかるわな、と買い置きのセゾンビールを冷蔵庫から出してきて私はプシュッと開ける。残った牛肉はもう息子が食べないとわかったので、アウトドアスパイスほりにしの辛口をパラパラと振りかける。ついでにポテトチップスにもかける。パラパラパラ。塩分過多だなんて気にしない。パラパラパラ。子供はふて寝していても、私が食べる肉がうまければいいのだ、こんな夜は。母の日だもの。パラパラパラ。

ところで母の日とは全然関係ないけどこのアウトドアスパイスほりにし、何にかけてもポテチのような味になる魔法の辛じょっぱい粉だ。お皿に残ると指につけて舐めてしまう。キャベツにつけて目をつむればポテチの代替食にもなるから一人で大量消費している。


ダイニングテーブルで一人、残ったお肉を箸でつつきつつ、スマホでママ友やシェリル・サンドバーグの美しい母の日おめでとう投稿を読む。母は頼もしいスーパーヒーローだった、云々。いよいよスマホ画面の向こうとこちら側の温度差がすごい。我が家では起きなかった母の日の出来事が並ぶ。

「旦那さんからもらった、カーネーションの、花束」・・・・「子供たちが作った、ちょっと不細工な、ケーキ」・・・「美味しかった、私の誕生年の、ワイン」・・・などなど。(やはり呼びかけ風に)

いいなあそれ・・・と流石にしょっぱすぎるポテチをビールで流し込みつつ、胸の奥が一瞬キュンとしたことはここでだけ打ち明けておく。

でも多分、バーガーキング父子による夕食テロ事件みたいな方が、日本全国では多数派の、投稿されないリアルな母の日だと思う。インターネット上で見えてないだけで。

SNSはよそ行きの世界だから、他人と比べて一瞬気持ち悪くなってしまった私みたいなお母さんがどこかにいたら、泣かずにほりにしでも買った方がいいとお伝えしたいし、何なら一本買ってあげたい。あなたも私も、もう十分素敵だから、大丈夫。(多分)


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