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廃墟から出られなくなってしまった鳥を助けるお話

こんにちは、えぬびーです。

廃墟の中では生き物と出会うことが稀にあります。大抵の生き物たちは迷い込んだ廃墟内から自力で外に脱出することができますが、鳥はよほど開放的な廃墟でない限り外に出られないケースが多いです。屋内でバタバタ飛び回っては何度も何度も壁に激突し、外に出ようともがいているのです。
そのような鳥を見つけたときは毎回彼らの救助活動を行っております。今回はそのお話をいたします。

救助①

場所:廃校の教室(岡山県) 2017年10月
鳥の性格:極めてクレバー
救助難易度★☆☆☆☆

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僕にとって初の鳥救助です。救助駆け出しの僕にピッタリ、初心者向けの簡単な現場だったことを記憶しております。
鳥はずっと窓付近におり、僕が近づいても逃げようとする気配はありません。また、すでに窓の一部が割れていたため、鳥キャッチからトリリース(鳥を外に解き放つ行為、鳥リリースの略)への流れもスムーズに行える場所でした。

加えて鳥の性格が穏やかで利口だった点も、この現場がかなりイージー救助となった大きな要因です。僕の助けたい気持ちを鳥は察知し信用に足る生物だと判断したのか、差し出した僕の手に自らの意思でのってきたのです。
助かりたい鳥と助けたい僕。互いの利が一致した瞬間でした。かくして、鳥を手のひらにのせた僕は即座に割れた窓から手を出し、トリリースを成功させたのでした。

結果的には簡単な救助ではありましたが、僕という捕食者側の存在に身を委ねる決断は鳥にとってそう易々とできる事ではないはずです。よって、ここは鳥のそのクレバーな判断と、それを実行に移す豪胆さを評価したいところです。

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救助②

現場:廃プールレジャー施設(青森県) 2018年8月
鳥の性格:ビビり
救助難易度:★★★☆☆

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第二回の現場はプールレジャー施設です。結論から申し上げますと、ここでは救助に失敗しております。すべては僕の油断が招いたことです。たった1度の救助成功体験に酔いしれ、慢心していたのかもしれません。救助は出来ていないのですが、自戒の意を込め、詳細をここに記したいと思います。

まずは、ここの建物構造を下記に示します。

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この現場の難しさとして、キャッチ後のトリリースポイントまでかなりの距離を歩かなければならないという点が挙げられます。マップの赤点が鳥発見ポイントです。すぐ上の方には外へ通ずる道があるのですが、板が張られ完全に封鎖されているためそちらへ行くことはできません。そのため階段を下り、巨大室内プールエリアを抜けなければトリリース可能な屋外まで辿り着くことができません。

また、鳥はとても臆病で警戒心が強い性格をしていました。僕が近づくとバタバタ飛び回るのをやめ、通路の隅っこの手が届きづらい狭い場所に隠れるスタイルをとってきました。

さて、実際の救助時状況に移ります。
マップ赤点の鳥発見ポイントは狭い通路の行き止まり付近であり、鳥も無茶苦茶に飛び回ったりしないので追い込み自体はスムーズに行えました。ですが、ほんの僅か手のひら一つ分届かない狭い場所にひっそり隠れてしまったため、なかなか鳥キャッチまでは至りません。ここは待ちです。手のひらを広げ、鳥があと一歩こちら側にやってくるのをひたすらに待ちます。

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そして鳥が少し近づいてきたタイミングを逃さず、なんとかキャッチに成功しました。5秒くらいバタバタしましたが、その後大人しくなったので僕はホッとし、早急に階段を降り始めます。
しかし、事件はここで起きました。鳥が、セカンド・バタバタを実行してきたのです。一度大人しくなることで抵抗の意思を早々になくしたと見せかけ、その後こちらの弛緩をついて2度目のバタバタを仕掛けてきたのです。突如出現したその決死のバタバタエネルギーを制御しきれなかった僕の右手は鳥を放してしまいます。

手のひらよりこぼれ落ちた鳥は、階段の端の隙間からさらに下へとスルリと抜け落ち、人間では決して手の届かない闇へと消えていってしまいました。

こうして、僕の二度目の救助は失敗に終わりました。一度は掴んだ命を離してしまったのは、鳥救助に対しての認識の甘さが招いたことです。もっとしっかりと手のひらで包んで持っていれば、もっとしっかりと指先までの全神経に集中していれば、もっとしっかりと鳥の性格を考慮しセカンド・バタバタを起こりうる一つの事象として予測できていれば、こんなことにはなりませんでした。どれだけ悔やもうとも、あの鳥の命は戻ってこないのです。

このようなつまらないミスはもう今後二度としないと、強く固く僕は自身の心に誓いました。

長くなったので次回に続きます。救助③で終わりです。





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