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廃墟から出られなくなってしまった鳥を助けるお話 その二

こんにちは、えぬびーです。

廃墟で鳥を助ける話のつづきです。
前回の記事(救助①、救助②)はこちらより↓

救助③

場所:廃校体育館(北海道) 2019年11月
鳥の性格:なげやり、無気力
救助難易度★★★★☆

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今回の舞台は廃校の体育館です。勘の鋭い皆様方ならばおわかりでしょう、この現場の救助難度が。想像してみてください、体育館の中を飛び回る一羽の小さな鳥をキャッチしようと走り回る己の姿を。ぞっとしますね。
この現場で大切だったこと、それは「根気」です。救助を諦めないその気持ち、行動が思いもよらないチャンスを引き寄せました。それでは実際の救助時状況へ移りましょう。


廃校校舎の撮影をあらかた終え、体育館に足を運んだ僕の目にまず飛び込んできたものは、館内を縦横無尽に飛び回る一羽の鳥の姿でした。
「これはかなり難しい現場になりそうだ…」そう僕は確信します。

まず、今回の救助ポイント「キャッチ」「トリリース」を確認します。
このような巨大空間での救助で最も難しい点は鳥キャッチにつなげるアプローチの取り方です。みなさまご存じの通り、体育館という場所は縦横高さとあらゆる空間が広すぎるため、隅のほうへジワリと追い込むようなやり方はできません。どうしよう。
トリリース(キャッチした鳥を外に解き放つ行為、鳥リリースの略)に関しては、体育館から出てすぐの廊下に開閉可能な窓がありましたので、鳥キャッチ後はそこでのリリースを狙っていくことにします。

上記の通り、前回の救助②での「キャッチは容易、トリリースが困難」という状況とは真逆で、とにもかくにも鳥キャッチ難度があまりにも高すぎるという一言に尽きる現場でした。

いくら考えてもあまり策を講じられるような状況でないことは明白でしたので、キャッチの望みは薄いですが、とりあえずは愚直に正面から抑えに行くスタイルで動き、向こうの出方をうかがうことにしました。

鳥に向かって近づいてゆくと、鳥は僕がいる向きとは逆方向に逃げてゆきます。当然僕と鳥との距離は一向に縮まらず、キャッチまで到達できるビジョンはまるで見えません。

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上記の動きを何セットか繰り返した時です。鳥が逆サイドの壁へとスーッと大きく移動し、そのまま大きな音を立て壁に突っ込んでいきました。

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壁に衝突したのち、一切の物音が止みました。さっきまでずっとバタバタ飛びながら壁に小刻みにアタックし続けていたのに、です。
衝突現場に向かった僕は、鉄骨の上に乗ってじっと動かない鳥を発見しました。

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先ほどまでとはどうも様子が違います。僕がかなり接近したにもかかわらず鳥には動く気配が見えません。壁にぶつかって痛かったのかな。動かないのはこちらにも好都合ではありますが、鳥がいるのは僕の手が届かない高い鉄骨の上なのでどうしようもありません。
とりあえず今いる位置から動いてもらわなければ打つ手立てがないので、まず僕はすぐそばに落ちていたトレーを鳥の乗る鉄骨付近に向かって投げつけます。(鳥には当てないよう細心の注意を払っています)

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さすがにこれでどこかへ飛んで逃げ回るかと思いきや、鳥は微動だにしません。何度投げつけても、一切こちらを見ず、はるか遠くの虚をみつめております。スンッとしてます。
あれほど逃げ回っていた鳥が、どうしたことでしょう・・・?

そこで僕は気づきました。この鳥、さんざん頑張って飛び回っても外に出れず、加えて壁に勢いよくドンと突っ込んで痛い思いをしたからか、拗ねているのです。いじけているのです。

鳥から感じられるのは、「もーどーでもいいっすわ。どーせ自分、ここから出れんので。(ヘラヘラと笑いながら)」と言わんばかりの態度です。人生を投げています。やる気を失ったのです。怠惰です。投げやりです。メンヘラです。

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こうして、だんだんと鳥の性格が見えてきました。クソイジケヤローです。ですが、まるで逃げる気がないのならばこちらとしては都合がよく、キャッチのチャンスも出てきます。とはいえ、まずは手の届かない鉄骨から落とさねば話は進みません。物理的に鳥に接触してみようと思います。すぐそばに丁度よい長さのモップが落ちていましたので、それを手に持ち鳥をつんつんしてみました。

が、ダメです・・・!ダメダメダメッ・・・!
鳥ッ・・・圧倒的不動ッ・・・!

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この鳥、こちらの予想を遥かに越えていじけております。つんつんしても不動とは。
ちょっと壁に当たったからといって完全に人生を投げだしています。社会を舐めております。この世にはうまくいかないことはたくさんあるんだ。それでも前を向いて生きていくんだよ、それが人なんだ。

ツンツンなんかでは生ぬるい、もうこれはモップで鳥をドゥンと押し込んで鉄骨から無理やり引きずり落とすしかないと判断しました。


喝ッ!!!!!!

体育館中に響き渡る僕の声と同時に、モップによってズズズと押し込まれ足場を失った鳥は、パタパタとやる気なく飛びながら下降してゆきます。(喝と言ったのは嘘です大声も出していません。)

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その後、人生を投げたイジケ鳥を捕まえるのはとても簡単でした。フツーに近寄ってフツーに手を伸ばし、キャッチ。それだけです。まるで抵抗はありませんでした。

彼の眼からは生気が失われ、もう煮るも焼くも好きにしてくれといった感じでした。肉体は生きているが精神は死んでいるパターンのやつです。

しかしまだ油断はできません。僕には前回の失敗があります。キャッチ後の弛緩、慢心は命とりであることを身をもって学んでいます。(詳しくは前回の記事「救助②」をご覧ください。)
バタバタの可能性も考慮し、鳥のボディ全体を手で包み込みます。何があろうとこの命は廃墟の外へトリリースするまでは離しません。

とはいえ今回はキャッチ後かなり余裕があったのも事実なので、鳥の写真を撮っています。ご覧ください。

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伝わりますでしょうか。ほんと命あきらめてます、こいつ。

その後は窓から無事トリリース。さっきまでのクソイジケが嘘のよう、元気に飛び回り森の中へと消えてゆきました。

まとめ

さんざん罵倒しましたが、今回の救助はこの鳥のイジケの性格にかなり助けられました。ずっと元気にバタバタと逃げ回られていたら、体育館という暴力的なまでに広大なフィールドで鳥をキャッチすることはまず不可能だったでしょう。

ハード面(体育館というフィールド)でかなり無茶だと思われる現場でも、ソフト面(鳥のネガティブな性格)に助けられ救助成功するケースがあるというひとつのサンプルが取れたと思います。

不可能と思われる現場でもまずはトライが大事です。地道なアプローチの末に、こういった救助チャンスの糸口を見つけ出すことができる場合もあるのです。まるで人生の教訓だ。

以上が、僕の遭遇した鳥たちとの記録のすべてです。
今後、また鳥救助をおこなった際は成功失敗にかかわらず記事を更新してゆきます。僕の蓄積するサンプルデータが、いつか誰かの鳥救助に役立つと信じて。

皆様も廃墟内で外に出たがっている鳥を見つけた際、もし可能であれば救助にトライしてみてください。

きっと、鳥たちに喜ばれます。

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