まともな日本再生会議(中野剛志、柴山桂太、施光恒著、アスペクト)

改革は、してはいけない。 

などと言われると、
「良いんじゃないの?」、
「聖域なき構造改革…。ピンとこない。必要だよね。良い方向の改革なら、ありなんじゃないの?」と私も思ってしまうかも知れない。
「改革をすれば岩盤規制みたいなものも緩和されてメリットがあるんじゃない?」

と思いそうなところがこの改革という言葉の怖さでもある。

少し古い本になる(2013年初版)の本書、コンセプトとしては筋が良いと思う。

対談なので、話題が多岐にわたるが、私としては総論賛成、各論には少し粗があるかなという感じ。
あと「政治思想」みたいな世界になると、論を補完するデータが少し薄くなるのだろうか。

ただ新書の中ではかなりレベルが高い。

例えば柴山さんの、発言の中にある以下の言葉。
「改革に先行した国が火だるまになっている現状を考えれば、日本の場合は改革が遅れてよかったと考えるべきではないか。安倍政権は、「岩盤規制」の改革を急ぐと言っていますが、雇用であれ医療であひり、制度を大きく変えなかったことがむしろプラスに働いたと評価すべきなんです。」

これは、正鵠を付いているし、興味深い着眼点だ。
「改革が遅れたのがプラスに働いた」というなんとも皮肉な現状をスパッと言い当てている。同時に制度改革を「行わないメリット」にも言及している点は、慧眼である。

論理学的にも面白い命題だ。
「日本では、改革が進んでいないのが、プラスに働いている。」と。

本来のロジックなら、
「改革を行う事でプラスの効果を享受できる。」
はずなのに、逆という。

この命題。

余談だが、改革の実施で、皆がハッピーになるというのはリベラル的である。
日本のリベラルが、劣化に劣化を繰り返し、縮小し、弱体化している事のは何故か、項を改めて、改めて批判しておきたい。

この「改革はしてはいけない」論を立証する
のに「実際に改革が失敗したデータ」があれば、ウルトラCだろう。

本書は対談という性格上、フランクに話しているので、本質的な幹の議論と枝葉の議論がやや混在しているのだが、制度改革沼、成長戦略沼で苦しんでいる人にとっては、考えるヒントにはなろう。

経済や政治思想に関しては、趣味の一環として読めば良い。

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