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海外事例から学ぶ SaaS企業の基本的なPL構造

今回は、SaaS企業のPL構造についてご説明します。

PL構造といっても、売上高は、ストック型の売上高(Subscription)とそれ以外の単発の売上高の2つで、特に追加で説明不要かと思うので、コストをメインで説明します。

SaaS企業のコスト(営業費用)は4つに区分されます。

一つは売上原価です。これはサービス提供に直接関連する費用で、一般的な売上原価とそこまで変わりません。SaaS企業の特徴としては、販管費が「R&D」「S&M」「G&A」の3つに分けられます。

海外のSaaS企業は、どの会社も販管費を「R&D」「S&M」「G&A」の3つに分けて開示しています。日本でも言葉としては非常に一般的なので、今回はその解説と実際の開示例も踏まえてご紹介します。

■SaaS企業の販管費は以下の3つに区分
・S&M(Sales & Marketing)
:営業部やマーケティング部門の人件費やマーケティング費用等が該当します。将来の売上高を増やすための費用です。
・R&D(Research & Development):プロダクト開発等に伴う人件費等が該当します。
・G&A(General & Administrative):管理部門の人件費やその他一般管理費が該当します。

なぜこの3つに分ければいいのかなど、もっと詳細を勉強したい方は、以下をご参照ください。

海外の巨大SaaS企業は売上高に対する各コストの比率がほぼ一定

SaaS企業の4つの営業費用ですが、対売上高比率(売上高で割り返した比率)を見ると、面白いことに海外のSaaS企業では各コストの対売上高比率がほぼ一定に推移しています。

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(参考:「Salesforce FY2020 Annual Report」より抜粋)

Salesforceでいうと、売上高に対して、Cost of revenuesという売上原価は約25%、R&Dは約15%、S&Mは約45%、G&Aは約10%とほぼ一定です。

言い換えると、常に売上高に対して5%くらいの営業利益率が出る(たいして利益出すつもりない)ことになります。

営業マンの人件費のうちコミッション(成果報酬)の割合が高い海外では、S&Mが売上高とある程度相関することはまだしも、R&D、G&Aも一定というのは興味深いです。もはや売上高に連動するのが変動費とかいう概念を超えています

Salesforceほどの企業になると、期初にほぼほぼその年の売上の予測がわかるとのことなので、恐らく、毎年の予算作成時に各費用毎に予算が割り振られ、その通りに投資を行い、予算にピタッと着地するのだと思います。

他の著名なSaaS企業を期間比較するとやはり気持ち悪いくらい一定なのですが、会社によって内訳は結構異なります。ここに会社のお金の使い方の”色”がでていて興味深いです。

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Salesforceやservicenowは売上高に対して40%以上を将来の売上獲得のためのS&M費用に充てています。Salesforceは年間のストック売上高が1.7兆円を超える規模にもかかわらず、年間の成長率は30%近くあり、まだまだマーケットシェアを全力で取りに行っています。

一方で、workdayやATLASSIANはプロダクト開発の比重が高く、R&D費用の比率が40%を超えています。

freeeの赤字は”意志のある赤字”

ちなみに、日本にも数多くのSaaS企業が上場していますが、このフォーマットの情報を出しているのは恐らくfreeeだけです(全部は見ていないので他にもあったらごめんなさい)。

freeeは日本では有数のSaaS企業ですが、まだまだ成長段階ということで、各コストの比率は安定しておらず、S&Mの比率が非常に高いです。2019年6月期は28億円という多額の営業赤字がでていますが、”将来の売上拡大のための投資”であるS&Mに35億円かけた結果の赤字であり、成長のために積極的に投資した結果である点で、ある意味”意志のある赤字”と言えそうです。

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(「freee株式会社 2020年6月期第3四半期 決算説明資料」2020年5月15日 より抜粋)

freeeは上場時から海外IRを非常に積極的に行っている結果なのか、海外の機関投資家比率が非常に高いですが、freeeのみこの形式を開示しているところをみると、海外投資家とのコミュニケーションを意識している結果がここにもあらわれているのかなと思います。

■参考記事

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今回の記事は以上です。
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