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プロとは「塩梅」である byキンコン西野

このnoteは2020年9月29日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:土地家屋調査士いけだなおゆき さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「プロとは「塩梅」である」
というテーマでお話しします。

毎日、いろんな方とお仕事をさせていただくのですが、「この人、プロだなぁ」と思う瞬間がいくつかありまして…そのうちの一つに「自分の能力と役割を見極めている」があります。


チームプレーになった場合!プロは出るべきポイントで出て、控えるべきポイントで控える。

とりわけ、「今回は、取り扱う素材に対して、自分の能力をどこまで出せばいいか?」という答えを探るのが本当に上手で……たとえばダウンタウンの浜田さんなんて、ご自身でガーッと前に出ていかれる時もあれば、場合によっては手を叩いて笑っているだけの時もある。


後者の場合は、だいたいゲストがゾーンに入った瞬間で、こうなると、番組全体の面白さを見たときに、脂が乗っているゲストにシュートを打たせた方がよくて、手を叩いて笑っているだけの方が絶対に良い。

「仕事をする」とは、そういうことだと思います。

決して「いついかなる時も自我を出す」ということではない。
出る時は出て、引くときは引く。
この「塩梅」ですね。

そして、「引く」ということは、このターンではシュートは打てないわけですから、「今回はどうぞ」と譲れるだけの余裕を持っておかなくちゃいけない。

つまり、他で圧倒的な結果を出しておかなくちゃいけない。
他で結果を出せるから、引くべきポイントで引ける。


これ、普段から結果を出していない人だと、「ここで爪痕を残さねば!」というモードに入っちゃって、せっかくゴール前の良い場所に仲間がポジションを取れているのに、パスを出さずに、一人でボールを持ち込んでしまうので、アマチュアは、ここが厄介です。

今朝、映画『えんとつ町のプペル』の主題歌のダンスバージョンのMVがYouTubeで公開されました。

制作に至るまでの経緯を簡単にお話ししますと……映画というのは、いろんな会社がお金を出し合って作っていて、その中には「宣伝費」というものが確保されているんですね。

ただ、その「宣伝費」だって、皆から集めた限られたお金なわけで、もちろん乱暴な使い方はできない。

なので「あれに使おう」「これに使おう」と皆と話し合って、宣伝費の使い道を探っていくのですが、一方で、結果がどっちに転ぼうが、つまり宣伝効果がゼロであろうが、どうしてもやりたい表現が僕にはあります。

それって、自分のお金で勝手にやる分にはどこからも誰からも文句が出ないじゃないですか?


というわけで、オンラインサロンの売り上げをブチ込んで、映画『えんとつ町のプペル』のエンディング主題歌のダンスバージョンのレコーディングをして、そのミュージックビデオを超個人的に作ってみました。

「個人的に」といっても、たとえば今回は「ロザリーナ」というアーティストに歌ってもらっているので、キチンと事務所さんとの契約もして、大人の手続きは済ませています。「ただ、制作費は全額ボクが出します」と(笑)
 
そうすれば、どこにもお伺いを立てることなく、フルスイングできるので。


で、今回のダンスの振り付けをお願いしたのは「バブリーダンス」でお馴染みの登美丘高校のakaneさんです。

かなり早い段階でakaneさんにお伝えしたのは、テレビの歌番組に見られるカメラワークに対する違和感についてです。

ダンスって、基本は正面(客席)から見られることを想定して作られてるじゃないですか?

なので、やっぱり個人的には正面から見たいんですね。


ところが歌番組だと、「今、正面から見たいのに!」という時でも、クレーンカメラとか使って、ナナメ上から撮ったりするじゃないですか?

勿論、それが効果的な時もあります。
ただ、その一方で演出のエゴでしかない場合も確実にある。
僕は、その仕事を「プロ」とは呼びません。

本音を言うと、三浦大知さんのダンスとか、なんなら、正面の固定カメラで見たいです(笑)


振付師の方は、「このシーンのダンスは、この角度から見たら一番綺麗」という答えをお持ちだと思って、akaneさんと呑みに行った時に、「ぶっちゃけ、どうなんですか?」と聴いたら、「正直、『ああ、そこから撮っちゃうか〜(涙)』という時があります」とおっしゃっていたので、「それならば、今回はakaneさんが映像監督をしてください」とお願いしました。

んでもって、ダンスというのは「正面から見られること」を想定されて作られているので、撮影する場所も、「正面から見られることを想定して作られた空間にした方がいいだろう」という判断で、劇場の、さらにはステージ上で撮影することになりました。


そのあたりからかな。

今回のダンスMVのテーマが「お遊戯会」になってですね、そのテーマに合わせて、一線でバッチバチにやっているクリエイター達が、空間と映像を仕上げていくのですが……冒頭申し上げました通り、そこに集まったのは正真正銘プロなので、全員、その塩梅が絶妙なんです。

いつもは、「お前、ちょっと前に出過ぎ」とか「ここは、ゴリっと行け」とか言ったりするんですけど、今回に関しては本当に何も言ってなくて、「やっぱプロだなぁ」と思いました。


たとえば、完璧に踊りきってくれる子をキャスティングしようと思ったらできたんですが、
今回に関しては「寸分の狂いもない踊り」よりも「子供が頑張って練習して覚えた踊り」が前に出た方がいいので、その感じが出せる子に声をかけたり、

舞台美術にしても、いわゆる「かきわり」なのですが、まさか手を抜いているわけではなくて、プロが本気で手作り感を残した「かきわり」を作っているんですね。

 
あそこで、ゴリゴリの美術を建ててしまうと、目がそっちにいっちゃって、子供のダンスに光が当たらなくなる。

照明も衣装も演出もカメラワークも全て、塩梅がとれていて、見ていただくと分かると思うのですが、すっごい心地良いんです。

 
あと、ひたすら楽しいことをやっているハズなのに、なんか泣けてきちゃう。
もしかしたら、どこかで「2020年」の状況を重ねちゃって見ているのかもしれませんが。

今回は、「プロが本気でお遊戯会を作ったら、こうなる」という一つの正解です。

「この現場では何を見せるべきか?」、もっと言うと、「チームとして、自分がどれだけ前に出て、自分がどれだけ後ろに引けば、人の胸をうつことができるのか?」ということを表しているこの映像作品から学ぶことってメチャメチャ多いと思います。


是非、ご覧ください。

今日は【プロとは「塩梅」である】について、お話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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