「ファン」と「クレーマー」と「株主」を区別しよう by キンコン西野
このnoteは2020年4月6日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:たのうえたえこさん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日は、
「『 ファン』と『クレーマー』と『株主』を区別しよう」
というテーマでお話します。
「ファン」と「クレーマー」と「株主」のちがい
今日の話は、これからめちゃくちゃ大事になってくる内容です。
以前にも、「ファンとは何か」という話をさせていただきましたが、これについては、佐藤尚之さんの『ファンベース』という本に、面白くわかりやすく書かれています。
我々は「ファン」というと、「自分たちの活動を支持してくれる人」という受け取り方をしてしまっています。ただ、どうやらもう少し「ファン」というもののの定義の精度を上げた方が良さそうなのです。
つまり、自分が色んな活動をする中で、「その活動のどの部分を支持してくれる人を僕たちはファンと呼べばいいのか」っていう問いです。
結論から申し上げると、「ファン」というのは、「現在の価値の延長線上にある、もっと良い未来の価値に期待し、共に歩んでくれる存在」のことを指します。
今の自分よりも、もっともっと良い状態の自分に期待して、 未来のもっともっといい状態の自分を目指して共に歩んでくれる存在のことを「ファン」と呼ぶ。
ここが超大事です。
「より良い未来の自分を支持してくれる人」が「ファン」であって、「過去の姿にとどまらせようとする人」は、「ファン」ではないんです。
サービス業をやる以上は、「ファン」の声には耳を傾けなければいけないのですが、そもそもこの「ファン」の定義を誤っている人が多いでしょう。
つまり、過去の姿にとどまらせようとする人の声に耳を傾けてしまっている人がいますが、それやってはいけないよということです。
過去の姿にとどまらせようとする声として、よくあるのが、「変わっちゃいましたねー」とか、「あの頃の方が好きでした」と言うものです。そして、「ファンやめます」と言ってくる人がいます。
この人たちのことを「ファン」としてカウントしてはいけません。
この人たちは、あなたが死ぬ気で築いた場所を、マイスペースのように我が物顔で扱っている「クレーマー」です。世間一般的には、「ファン」とされているし、本人たちも「ファン」という体で近寄ってきますが、これは「クレーマー」です。
「ファン」という偽物の手札であなたを脅し、自分の居心地が良くなるように、あなたの場所を、あなたの労働力でもって変えさせる。
非常に自分勝手な存在です。これはファンではありません。当然本人たちにも、その自覚はないでしょう。
しかし、彼らがやっていることは大きな勘違いで、そんなことをしてあなたのテコ入れに口をはさんでいいのは、あなたを買った人だけです。
それがつまり、「株主」です。
あなたの商品を買った人は、そこに口を挟む権利は無いと思います。でも、あなたを買った人が口を挟む権利がある。
あなたの商品しか買ってないのにあなたの活動に口を挟むのは、ただの「クレーマー」です。
ここを整理しないといけません。ここ絶対に見誤ってはいけないのです。
あなたが変わろうとした時に必ず、「ああ残念。昔のスタイルが良かったのに」と言ってくる人は一定数いるでしょうが、それで昔のスタイルで活動して食いっぱぐれた時に、その人たちは何の責任も取ってくれません。
そんな人たちを「ファン」と呼んではいけないし、あなたはあなたの「ファン」、つまり、「現在の価値の延長線上にあるもっと良い未来の価値に期待し共に歩んでくれる人」の声に耳を傾けるべきです。
変化をとめる声に耳を傾けるな
どうして今頃、このような話を掘り起こしてきたかというと、まもなく僕やあなたも、そういった場面に立ち会うことになるからです。
新型コロナウイルスは、僕らの生活や仕事スタイルに対して、変化を要求してきています。「お前ら変わらないともう死ぬよ、経済的に終わるよ」っていうメッセージをぶつけてきているんです。
それは脅しでもなんでもなく、事実であり、僕らは今、生活スタイルや仕事スタイルを一変させなければいけない状況にあります。様々なものをアップデートしなければいけない状況にあるわけです。
それこそ、飲食店などは、デリバリーやテイクアウトが、今求められていると思われます。これまでそんなことをやっていなかった飲食店やそのお店の「自称ファン」は、「静かで落ち着きがあったあの頃が良かった。こんなことするならもう通うのやめよーかなー」と、わざわざあなたに言ってくるでしょう。
彼らは「あなたの店のことを想って」というようなスタンスをとりますが、この発言というのは、株主以外が口にしていいものではありません。
これは、ただの脅しなんです。
僕が若いくてまだ十代の時、劇場の出番終わりに外に出たら、ファンと思しき女の子が泣きべそをかきながら近寄ってきて、「西野さん変わってしまった。私、西野さんのファンやめます。やめますから」と言ってきました。
なので、「あ、わかりました」と言って、僕が立ち去ろうとしたら、「止めないんですか」と言われて。
こうなってくると、もうよくわからないじゃないですか。
「止めないんですか、ひどい!」という風に言われましたが、僕らがやっているのは、頭を下げて「ファンでいてください」っていう商売ではないじゃないですか。
こっちが提供してるものが面白くなかったら離れてもらって結構だし、面白かったらそのままいてください、というルールです。ましてや、その人と付き合ってるわけではないし、結婚してるわけでもあるまいし。
その子のリクエスト通りの「キングコング西野」に仕上げて、世界が取れるのであれば、いくらでも話を聞きますが、そうではありません。その子は別に、僕をプロデュースして世界一にするだけの力を持っていないのです。
ただただ、「自分の理想の『キングコング西野』に収まっておいてほしい」というのが、その子の願望であって、これは「ファン」ではないと思います。
世間一般はこれを「ファン」と呼びますが、これを「ファン」と呼んでしまうと、変化ができなくなってしまいます。
そもそも、時代が高速で変わっているなか、変化することを否定する人なんて、絶対にダメじゃないですか。
スマホができて、 SNSが出てきて、Youtubeが出てきて、色んなものが変わっているんです。その時に、「芸人はひな壇に出なきゃいけない」みたいなことをずっと言ってたら、「じゃあ Youtube には出ちゃダメなの?」という話になってくる。
今はもう「芸人はひな壇でいるべきだ」とはみんな言わなくなってきてるはずです。5年位前までは、まだみんな言っていたと思いますが、「もうさすがにそれを言ってる場合じゃねーなー」という空気になってきました。
案の定、ひな壇はだんだん数が減ってきています。
時代が変わっているのだから、自分も変わらないといけません。そして、それを止める人は「ファン」ではないということです。
コロナショックの影響で、各地でこのような問題に向き合う人が続出するので、その時はどうか、今日の話を思い出していただきたいなと思います。
というわけで、
「 『ファン』と『クレーマー』と『株主』を区別しよう」
というテーマでお話させていただきました。
ポイントは2つです。
まず、「『ファン』の定義を明確にする」こと。
そしてもう一つは、「テコ入れに口をはさんで許されるのは、『株主』だけである」ということです。
株主以外が口を挟んできたら、それは『ファン』でも『株主』でもない、ただの『クレーマー』だということです。
「クレーマー」の意見に耳を傾けないように、気をつけてみてください。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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