見出し画像

キンコン西野の『最高傑作』とは?

このnoteは2019年10月9日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:川口民生さん

おはようございます。
キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をやったり、絵本作家をやったり、
国内最大のオンラインサロン西野亮廣エンタメ研究所の運営をしたりしております。

さて今朝はですね、「キンコン西野の『最高傑作』とは」というテーマでお話ししたいと思います。

『世界を楽しくする』

そもそもですね、
僕、西野亮廣の理念・目的ってなんだっていうところからお話するとですね。

もうこれシンプルにですね、
『世界を楽しくする』なんですよ。

昨日より今日のほうが世界を楽しくするし、今日よりも明日の方が世界を楽しくするという。
ぼくの理念はもう一貫して『世界を楽しくする』なんですね。

で、インターネット自体は好きなんだけど、
例えば・・現在のツイッターのような罵詈雑言であふれているインターネットっていうのは、自分の目指す世界ではないんです。

飲み会、お酒飲むのとかも、友達とお酒飲むのは好きなんだけども、
他人の悪口を垂れ流すような飲み会は嫌いです。
その『世界を楽しくする』っていうところからは外れているので。

まぁ本当に、ぼくはもう意識高い系日本代表なんで、とにかく前向きな言葉で溢れてる方がやっぱりいいし、
楽しい感想、「嬉しかった」「楽しかった」で溢れてる世界観がいいのでね。

そういう世界を作ろうと思って色々活動していて、自分の作品というのは、そこにへ向かうためのものであると。

で「西野の最高傑作とは一体何なんだ」って話になったときに、まあ色々あると思います。

キングコングもそうかもしれない。
『お笑いコンビのキングコング』っていうのも、最高傑作と言えるのかもしれない。

『えんとつ町のプペル』っていう絵本も最高傑作と言えるかもしれないし、
『ホームレス小谷』っていうのも最高傑作ってまぁ言われたりもする。

まあ誰が切り取るかによってですね
絵本のことが好きな人は「西野の傑作って『えんとつ町のプペル』でしょ」ってなるかもしれないし、
切り取る人によってまぁ変わってくるとは思うんですけど、
だから一概にですね、これが一番というのは言えないんですけども。

じゃあ、
「一番エッジが効いた作品、傑作は何なんだ」
「僕が作った作品の中で一番エッジが効いてるものって何なんだ」
と言うと、『レターポット』ですね。

レターポットはお金のようなもの

「え、レターポットって何?」って話じゃないですか
「それ何なのレターポットって?」って言ったら、僕がギャグで作ったwebサービスなんですけど。

レターポットって何かって言うとですね、お金のようなものですね。
レターポットって、お金のようなものです。

まずこのことを踏まえて、話を続けていきたいんですけども、極めて複雑な話になってくるので、まあなんとなく注意して聴いていただけると。

最初レターポットをリリースした時に、ほとんどの人が理解できなかった。
「何言ってるのお前?」っていうことを言われたので。

まず第1段階として覚えておいていただきたいのは、レターポットというのはお金のようなものであると。ということを踏まえてもらった上で、話を続けます。

お金の機能3つ

レターポットっていうのはお金のようなものであると。

そのことをお話する前に、まずお金の機能ってなんなんだというところからご説明するとですね。

お金の機能、よく言われているのは3つあると。
お金の機能、つまりお金をお金たらしめている条件ですね。

3つあるんですね、お金の機能って。お金の役割ですね。

まず1つ目が保存ができる。
つまり腐らないんですねお金って。
価値が変化しないということですね。

そうだな、
例えば1万円札が財布に入れたらだんだんちっちゃくなってて消えていくみたいなことってないじゃないですか。

お金の機能ってまず保存ができるということですね。それが1つ目。

ふたつ目は交換ができると。
例えば沢山のお金と、クルマを交換することができる。
沢山のお金を用意すればクルマと交換することができるし、100円用意すればバナナと交換することができると。
これ2つ目の機能。
交換できると。

で3つ目は、尺度であるって言うことですね。
物差しであると。

つまり車1台とバナナ1本はどちらが価値があるのかっていうのを数字で教えてくれる。
300万円と100円。車1台300万円です、バナナ1本100円ですと。

じゃあ車1台を買おうと思ったらバナナ何本いるんだっていう計算ができるんで。

物差しとしての機能がある。

3つですね。お金の機能ってのは。

・保存ができる
・交換ができる
・尺度である

この3つの機能がお金にはそなわっていて、この3つの機能がお金をお金たらしめている条件ですね。

なので過去、お金になってきたものっていうのは
この3つの機能が備わってたんですね。

過去っていうのは大昔から例えば、
稲、貝、布、塩、金銀銅、紙、紙幣ですね。
今はだったらもう、クレジットカードのようなデータですね。

これらにはこの3つの機能、
保存ができる、交換ができる、尺度であるっていうこの3つの機能が備わっていたんですね。

貝はやっぱり保存ができるし、交換ができるし、尺度になったんですね。
金銀銅も言わずもがなで。

それで言うと例えば魚はお金にならないんですね。100ウオとか1000ウオとかにはならないんですよ。

なぜなら腐るからです。1週間1か月経ってしまえば腐ってしまうから、魚はお金になんないんですね。

お金をお金たらしめている条件っていうのは保存ができる、交換ができる、尺度であると。

「そっかーーー」って僕はある日思って、
「じゃあ、この3つの条件を満たしているほかの何かがお金になったりしないかな?」っていうことを考えたんですね。
多分よっぽどぼく暇だったんだと思います。

で考えた時に、
そういえば『文字』って・・

今僕がここでしゃべっているこの言葉、
『文字』。
あいうえおとかの『文字』。

「文字はお金になるんじゃないか」って思ったんですね。

まず文字って腐らないじゃないですか。つまり保存ができると。

で、
文字って例えば何かしてもらった時に「ありがとう」っていう文字を返すじゃないですか。
つまり交換ができるぞと。

でその感謝の量に合わせて文字数って変わるじゃないですか。
すっごい興味があるものには無茶苦茶長くしゃべれたりだとか。
興味がないものは短いし、たくさんいいことしてもらったらたくさんお礼伝えるし、つまり尺度でもあると。

文字って保存ができるし、交換ができるし、尺度でもある。
お金お金たらしめている結構条件を満たしてるなーと思ったんですね。

で問題は、
じゃあ、
「なぜ文字がお金になってないのか」って言うとこですね。

だって文字がお金になったら便利じゃないですか。忘れることなくすことないし、運ぶことも可能だし。この今だって自分の体さえもっていけば文字運べるんですよ。

流通量

で、文字がお金になっていれば便利なのに、なんで文字というものがお金になってないのかなぁと思った時にですね。

お金をお金たらしめている、つまりお金をお金にしている条件っていうのは、さっきあげた3つ以外に実はもう一つあって。

何かっていうと流通量ですね。

お金をお金たらしめている条件は3つ。保存ができる、交換ができる、尺度である、それ以外にもう一つだけある。

それが何かっていうと、流通量が管理されている。

これどういうことかというとですね
あの何年か前にですねもうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが
ジンバブエっていう国でですねハイパーインフレってのが起こったんですよ。

でハイパーインフレって何かっていうと、簡単に言うと物価が上昇することですね。

1個100円だったリンゴは1個10万円とかになっちゃうっていう
でジンバブエってもう
無茶苦茶な法律が通りまくって
国策失敗しまくって景気が後退しまくったんですね。

で、すったもんだがありましてですね、
あの中央銀行がですね政府に求められるがまま
紙幣を印刷しまくったんですよ。もうとにかくお金を刷りまくったんです。

でその結果どうなったかっていうとですね、

100兆ジンバブエドルみたいな紙幣が出てきたんです。

100兆。1万円札じゃないですよ100兆円札です。

「なにそれ?」じゃないですか。

100兆円札とかがもう出回ってるんですよ。もう0何個並んでんのっていう。
100兆ジンバブエドルってのは当時どれぐらいだったんだろうな。たぶん100円くらいとかそんなもんですよね。

もう無茶苦茶ですね。
例えばバナナ1本買おうと思ったら、もうすっごい札束を持って運ばなきゃいけなかったっていう。

なのでジンバブエドルってもうその辺に落ちてたんですよ。
道端に落ちてたし、ゴミ箱に落ちてたし、子供は山盛りの札束を抱えているっていう。
もう無茶苦茶な状態ですね。

つまり、紙幣がまあ無尽蔵に刷られて、流通量が増えすぎたから、お金がお金として機能しなくなったんですね。これがジンバブエで起こったハイパーインフレの実態ですね。

やっぱり流通量が増えすぎてしまうとお金として機能しないですね。

って思った時に「そういえば文字って無尽蔵に刷られてるな」と思ったんですよ。

今、スタートから今まで僕めっちゃ喋ったじゃないですか。
たぶん数千文字分くらい発したと思うんですね。

で僕たち人間って、生まれて今まで文字をずーーっと刷り続けてるじゃないですか。

つまり、
地球の文字の流通量っていうのは制限されてない。

どんどんどんどん今日今この瞬間も文字数っていうのは増え続けていると。

だから文字というものが、
さっきの、保存ができる、交換ができる、尺度であるっていう3つの機能が備わっているのに
文字がお金として機能しない、お金にならない理由は、

「流通量が制限されていないから」だなと思ったんですね。

でここで、
もうこっからギャグなんですけど、
「じゃあ文字数を制限してやれ」と思ったんですよ。

人間の文字数を制限してやれ。
でこれがレターポットなんですけれど。

レターポットって、1文字1レターって言い方しますけど1文字を5円で売ってるんですね。運営から5円で買うんですよ。

で例えば、僕があなたに何かごちそうになったとするよね、夜ご飯を。
「翌朝、昨日はごちそうさまでした!」的な、お礼の文章ですね。

100文字送ると100レター送ると。つまり500円分ですね。

じゃあ、あなたのレターポット、財布にはですね、今100文字が入っている。

っていうだけですね。
ただそれだけ。

で、あなたが次誰かに何かお礼をするときは、その財布の中から文字を使う。

足りなかったらそこにちょっと付け足して、
100文字では俺が足りないなと思ったら、50文字買ってつまり250円分買って、150文字で誰かに贈る「この価値のある文字」を贈り合うって言う。
まあそれだけですね。レターポットって基本には。

詳しくしゃべるともうちょっと深いところがあるんですけど、基本的にはそれだけなんですよ。

じゃあこれが何をもたらしたかっていう話が、いよいよまとめになります。

もしも『言葉』が消えるのなら

整理しますね。
レターポットていうのは1文字5円で買えるものであると。

「ありがとう」みたいな言葉を贈り合うものであると。

価値のある言葉、電報なんかをイメージしていただけると近いかもしれないですね。

電報って文字を買って送るじゃないですか。で、レターポットはあの送られてきた文字をまた再利用できるっていうイメージですね。

で、いいことをした人にはたくさん文字が集まるから、
その人はたくさん誰かに「ありがとう」の言葉が言えると。まあこういうのがざっくりレターポットの世界ですね。

で、うーんそうだな・・
最近ぼくいろんな出来事があったんですけど、

まもなく寿命を迎える余命何ヶ月みたいな人と
会う機会があったんですねで
その人が
選ぶ言葉の一つ一つがまあ非常に美しくて、無駄がなくて、
洗練されていたんですね。

そういうことがあって
「なんでこの人が言葉ってこんな美しいのかな」と思ったときに、

結論ですね、
この人に余命があるからだと。

つまりこの人に残された文字数には、もう限界がある。
終わりがあるって言うことですね、あと何万文字しかこの人にはのこされてないと。

そん時に思ったんですけどなんで僕たち人間が汚い言葉を選んでしまうのか
っていうところにいってですね、例えばお金ってすごく大事に使うじゃないですか、皆さん。

僕もあなたも金をすごく大事に使うと。

これなんでかっていうと、
使えば使うほどなくなってしまうからですね。

これがジンバブエドルみたいに無尽蔵にあればですね、たぶん雑に使ってしまうんだけど、基本的にはお金っていうのは使えば消えてしまうから大切に使う。

で言葉を何で僕たちは大切に使わないのか。

twitterとかで悪口いったりだとか、
飲み屋でぐちぐちぐちぐち愚痴言ったりだとか、
なんで言葉というものを僕たちは大切に使わないのかというと、
言葉が無尽蔵に刷られてしまうから。

で余命何ヶ月の人の言葉が美しいのは何でかというと、
その文字数にもう限りがあるということですね。

「いやーこれかー!」って思って、
もしも言葉が消えてしまうなら、
ぼくたちは言葉というものをもうちょっと大切に使う。

つまりあなたのレターポットにですね、あともう20文字しかないと。
そうすると、この20文字は多分誰かの悪口には使わないはずなんですね。

誰かの悪口には使わないはずなんです。
あと20文字しかないってなったら、たぶんお世話になった人にありがとうって言うのか、思いを伝えられてなかった人に好きだって言うのか、

とかく、美しい使い方すると思う。

結論、何かっていうと
「元来、言葉は美しい」と。

「言葉を言葉として美しくしていないのは、
言葉が無尽蔵に刷られてしまうからだ」っていう風に結論して、

「じゃあ、言葉に制限をかけてしまって、もう言葉を消えてしまうものにしてしまおう」と思ったのがレターポットですね。

なのでレターポットの中ではもう悪口は飛び交ってないんですよ。僕のポットにも本当に。
もう数万人からメッセージが届いてるんですけど悪口が1件もないですよ。
このご時世にですよ。

ネットを介して届く言葉の中で、悪口が一件もないんですよ数万件も届いているのに。

なぜなら言葉に限りがあるから。消えてしまうから。

でこれが、話の最初に戻りますが、僕の理念・目的とすることですね。

「世界を楽しくする。」

これがレターポットとですねリンクしてですね、
そういったギャグみたいなサービスを作ってみましたね。

まぁこれもあくまでギャグなんで
「これでどうにかしてやれ」とか思わないんですけど、
「これで会社を大きくしてやれ」とか思わないですけど
もう自分のキングコング西野亮廣の作品のひとつであると。

でレターポットを生かしてですね、
結構いい使い方が出来て
実はレターポットで被災地支援とかしてるんですけど

被災地に言葉を送って被災地に百万円とか二百万円とかを支援できているんですけど、
そこにどういうカラクリがあるのかっていうのは、また今度お話したいと思います。

今朝ですね、「キングコング西野の最高傑作とは」というテーマでお話しさせていただきました。

レターポットは一度触ってみるとなるほどなって思っていただけるかもしれないです。

というわけで、
この辺で終わりたいと思います。
それでは素敵な一日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※キングコング西野亮廣が毎朝、最新エンタメビジネスに関するコラムを配信しています↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?