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僕らは「自由」をコントロールできるほど優秀じゃない by キンコン西野

このnoteは2020年5月28日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:滋賀のチョウチンアンコウセガワ サチコ さん


どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「僕らは『自由』をコントロールできるほど優秀じゃない」
というテーマでお話しします。

僕のまわりには20代の子達も結構いるので、彼らのケツを叩く意味も込めて、絶望的なお知らせをするとですね……僕、高校卒業と同時に『NSC』という吉本興業の養成所に入って、養成所在学中(プロデビュー前)に、芸歴10年までのプロが参加する大阪の漫才コンクールの大賞をとってですね、そこから1年で関西の漫才賞を総ナメして、20歳の時に『はねるのトびら』がスタートしてるんです。

んでもって、21歳ぐらいの時に、M1グランプリが始まって、決勝に進出して、その頃には各局で冠番組を持ってます。

「家が芸能家系で」…とかではなく、野球少年やサッカー少年のように「子供の頃から練習を続けてきて…」とかでもなく、

皆と同じようにダラダラと高校生活を過ごして、高校卒業後からアクセルを踏んで、約10ヶ月で結果を出しました。

養成所の先生方からは「10年に1人の天才が現れた」とチヤホヤされる始末です。

これを聞くと、20代の方々は御自身の年齢と照らし合わせて「それに比べて自分は一体何をしてるんだ?」と絶望するでしょ?
そこは、おおいに絶望してください。
僕の同期芸人は全員その絶望を味わって、強くなったので(^-^)

ちなみに、「才能」みたいな言葉で片付けられるとチープに聞こえちゃうので、一つだけ補足説明させていただくと、「自分が他の誰よりも努力をした」ということは胸を張って言えます。

同い年の子達がナンパやコンパをしている間、血が出るほどネタを書き続けていたので。
まぁ、実際に血は出ていないですが。
しかしながら、努力量相応の結果だと思います。

さっそく自慢から入ったのは何かというと、そんな感じで僕はスタートから売れっ子で、とにかく365日、朝から晩まで、仕事で埋まっていたんですね。
ここでは、「壮絶な忙しさだった」ということだけ伝わればいいです。

途中、その重圧に耐えきれず、梶原くんが失踪してしまって、仕事がゼロになったりもしたのですが、梶原くんが復帰後から3ヶ月で元の状態に戻しました。いや、それ以上のところまでいきました。

やれどもやれども次の仕事が舞い込んでくる毎日で、「充実感」といえば聞こえはいいですが、それなりにヘトヘトにはなっていたと思います。

夜は、寝ているのか、気絶しているのかが分からないような毎日です。

そんな毎日に終止符を打ったのが、25歳の頃です。

これは、方々でお話ししていますが、「このまま今の活動を続けても、もしかしたら30代、40代、50代…とテレビの世界には残れるのかもしれないけれど、突き抜けることはないなぁ」というのが見えちゃったんですね。

自分の努力不足というよりも、構造上の問題ですね。

「どれだけ猛スピードで自転車を濃いでも、間に海があるので、アメリカには行けない」みたいな話です。

そこで、芸能界の競争の螺旋から降りることを決めて、スッタモンダがありまして、今に至るわけですが……25歳の頃(芸能界から降りた時)に、『これまでの「仕事をする」と作業も大変だったけど、これから始まる「仕事を作る」という作業はもっと大変だ』ということを知りました。

朝から晩まで、まるで片付かない仕事に追われるのって、聞くからに大変じゃないですか?
それこそ梶原くんは、それでブッ飛んだぐらいなので(笑)。

はい。大変なのは間違いんです。

ただ、「何もやることがない。やることは、これから自分が作らないといけない。…さて、何をやろう?」という状況は、これまでの苦労が生ぬるく思えてくるほどの状況で、ちょっとゲロ吐きそうになりました。

くれぐれも言っておきますが、これは難易度の話で、今現在、一生懸命汗を流されている方を蔑んだりする意図は一切ありません。

「やることを作る」というのは、「やることがある」という状況が甘く感じるほど、難しいことだよ、という事実を述べています。

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願いどおり「自由」になったけど幸せか?

今、なぜ、このタイミングで、こんな話をしているかというと……今回のコロナ自粛で、おそらく結構な方が、この経験をされたと思うんです。

・朝から晩まで家にいて、特にやることがない。
・ダラダラしようと思えば、いくらでもダラダラできる。
・でも、まわりを見ると、働いている人もいる。
・自分も何か働きたいけど、何をすればいいか分からない。
・ていうか、仕事を「した」ことはあるけど、仕事を「作った」ことがない。
・どうすんの?どうすんの?どうすんの?

…といった焦り。

あれだけ満員電車に文句を言っていたのに、
あれだけ出勤時間に文句を言っていたのに、
あれだけ上司に文句を言っていたのに、
あれだけ自由を求めていたのに、
ところが僕らは「好きにしていいよ」と言われた時に、路頭に迷ってしまう。

何をしたらいいか分からない。
なんかお菓子をつまんじゃって、
なんかお酒を飲んじゃって、
気がついたら、たった2ヶ月で、ずいぶん太ってる。みたいな(笑)

これ僕25歳の頃に経験しましたが、「解くべき問題」がない毎日って、苦しいんですよ。
どうやら僕らは「解くべき問題」がないと、まともに立っていられない。
だけど、問題を作るのって、メチャクチャ難しい。

仕事の単価って、「問題を解く人」よりも、「問題を作る人」の方が高いんです。
これは作業の難易度に比例しています。
なるほど、よくできていますよね。

で、僕はたぶん、「やることがないから、やることを作らなきゃいけないだけど…どうしよう?」という状況を経験した先輩なので、先輩である僕が、どうやってこの難局を乗り越えたかをお話ししたいと思います。
参考にしてもらえると嬉しいです。

課題を設けて思考量を減らせ

いろいろ試したのですが、一つ確かなことは、「今日は何をしようかしら?」と都度都度考えるモードは、絶対に長続きしません。
断言できますが、100%ネタ切れします。

当たり前ですよね。
「魅力的な課題」からやっていくんで。
後にいけばいくほど、課題がトーンダウンする。

そこで僕は「毎日ブログを書く」ということを決めました。

体調が良かろうが悪かろうが、気持ちが乗ろうが乗らまいが、書くネタがあろうが無かろうが、365日「毎日ブログを書く」と決めたんです。

こいつが大当たり。
泣いても笑っても更新時間がやってくるので、そこまでに書くネタが思いついていなければ、大急ぎでインプットしなくちゃいけない。

この作業というのは、問題を「作る」作業じゃなく、問題を「解く」作業です。
仕事を「作る」作業じゃなくて、仕事を「する」作業です。
この作業の方がいくぶんラクです。

作業量は増えていますが、思考量は減っているので。

「思考量が減る」というとネガティブに聞こえますが、思考量をコントロールしないと、身体がもたないんで、作業と思考のバランスは超大事です。

要するに「仕事をゼロから量産できる自分に期待しない」ということだと思います。

僕の場合は深夜0時に必ずブログ(しかも長文)をアップすると決めていて、毎日定時に提出しなきゃいけない宿題があるという状況が、かなりの支えになりました。

そろそろ日常が戻り始めている方もいますが、一方で、人を集めることを生業としている方々は、まだまだ大変な日が続いております。

その日々を乗り切る術として、毎日やってくる『締切』を何か一つ設けて、自分から程よく自由を奪うと、少し前に進みやすくなると思います。

これ、定年退職後にも必ず襲ってくる問題なので、今のうちから試しておくのは結構オススメです。


というわけで、
「僕らは『自由』をコントロールできるほど優秀じゃない」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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