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「はれのひ事件」と「リベンジ成人式」の裏側で起きていたことbyキンコン西野

このnoteは2020年1月10日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:イイムレ シュウイチさん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、「『はれのひ事件』と『リベンジ成人式』の裏側で起きていたこと」というテーマでお話します。

記憶にある方も多いと思います。

今から2年前の話ですが、振袖のレンタルと販売を行っていた『はれのひ株式会社』が、成人式当日に前触れなく閉鎖しました。そのせいで、成人式に振袖を着ることができない新成人の方が続出するというものすごい事件がありましたよね。確か、何百件も警察に通報が入っていたと思います。

今日は思い出話になってしまいますが、「あの時に何が起きていたのか?」という話です。

『はれのひ事件』の裏側



その『はれのひ事件』があった成人式の夜に、うちのスタッフの田村Pから、「かくかくしかじか、こういうことが今起こっています。何とかしましょう。」というLINEが届きました。

僕はニュースを見ていなかったから、そういうことがあったのは彼女からのLINEで知りました。

ニュースでは、「キンコン西野が『リベンジ成人式』を!」という取り上げられ方をしているのですが、実は『リベンジ成人式』の首謀者は、僕ではなくてうちのスタッフです。

田村Pが「なんとかしましょう」と言っているので、1秒ですぐ「やる」って返信して、その30秒後には、オンラインサロンに「『リベンジ成人式』をやるから手伝ってねー!」という投稿をして、投稿直後に、全スタッフに一斉にLINEしました。

「もう『やる』って言っちゃったから。」みたいな。
得意の“事後報告”です。

そこからすぐに、実現に向けて具体的に動き始めたので、田村PのLINEから、2、3分かかっていないと思いますね。

そして、そこからホームページつくるスタッフが、専用のホームページを作り始めて、許可取りに行くスタッフは、許可を取りに行って、「具体的に何をする」というタスクの整理も、その夜のうちに一斉にやってしまいました。

その上で、あらためてここから、「『リベンジ成人式』で実際に何をしたのか」という内容についてのお話です。


具体的には、『はれのひ事件』に巻き込まれて、成人式に出ることができなかった新成人数百名を対象に、ヘアメイク、着付け、振袖、ネイルを提供し、フォトスポットを作りました。
あと、田村Pのゴリ押しによって、なぜか追加された『船上クルーズ』をご提供しました。



募集開始直後から応募人数がすぐに増えたので、途中からクルーザーを2隻に増やすことにして、お台場から持ってきました。

なんとなくのテーマとして、僕たちが考えていたのは、「『逆にこっちの成人式に出れて、ラッキー!』ってなるぐらいまで、いい環境を作ってあげよう!」というものです。
その想いでチームはまとまり、すごい勢いでイベントを作りあげました。

自分が「『リベンジ成人式』をやる」って発表してから、それを全部用意するのにかかったのはたった3週間ですね。

ここではっきりしておきたいのですが、今言ったようなものを全部用意しようと思ったら、ざっくり数千万円はかかるんです。
もちろん、この数千万は、僕の自腹になるんですが、「また頑張って働けばいいかな」と思い、個人で数千万円を出す予定で進めていました。

なので、場合によっては「西野が自腹でやってくれた」と、すごく美談のように語られることもあるんですが、実はそうではない部分もあります。

僕がブログで「『リベンジ成人式』をやるよ」と発表した翌朝から、僕の友人の起業家さんたちから、「僕の会社も手伝うよ」とか、「私の会社も手伝う」と、本当にたくさんのご連絡を頂きました。

そして、着物やネイルやヘアメイクや会場の美術制作、さらに、フォトスポットの用意まで、いろんな方がお力をお貸しくださって、結果的に、僕の自腹は数千万円にはなりませんでした。

最初に言い出した時は「数千万かかる」と思って、そう言いましたが、そのあといろんな方から、お力をお借りしたので、結果的に、僕個人では数千万円は出していません。

ここははっきりさせておきたくて、「西野一人で出費したわけではないですよ」ということですね。

「あの時、あの場には、本当にたくさんの大人の協力があった」、「大人は結構捨てたもんじゃないです」ということです。

誰かを助けられる強さを持ちたい

そして、日本中の期待が集まるなか、『リベンジ成人式』のメインスタッフは、準備の3週間ほぼほぼ不眠不休でした。

言いだしっぺの田村Pの携帯はもう鳴りっぱなしでした。彼女にとって、『リベンジ成人式』の仕事は別に本業じゃないですから。彼女は成人式をする人ではないので、別にある本業でむちゃくちゃ忙しい中、空いている時間を全部『リベンジ成人式』に費やしていました。メールなどもずっと来ていたと思います。

その中でよくあったのが、「何か私にできることがあったら、何でも言って」っていうメールが数百件届いていたりする。

その方にできることがあるとしたら、「『何か私にできることがあったら何でも言って』というメールが数百件も届いていて、その対応で時間と精神を奪われている、という田村Pの状況を察してあげて」というところです。
「何か私にできることがあったら言ってね」というような連絡って、むちゃくちゃ来るんです。「これは結構気を付けた方がいいな」と、その時思いました。

言いがちじゃないですか。
「何か私にできることだったら何でも言って」って。

ただ、「何か私にできることがあれば」と言われても、言われた側は、その人に何ができるか知らないから、能力をわざわざ検索しなきゃいけません。

なので、こういう場合は、「私は○○ができます。この能力は今必要ですか?」という感じで、相手が「イエス」か「ノー」で返せるように声をかけてあげるのが、優しさだと思います。

そんな感じで、とにかく『リベンジ成人式』の当日までは地獄でした。普段の仕事をしながら、即席で集まった数百人のスタッフをまとめ上げて、トラブル要素を片っ端から潰していく。

だって、次はもう絶対に、トラブルを起こせないわけです。

『リベンジ成人式』で、不幸な人、涙する人がまた生まれてしまったら、「何のために『リベンジ成人式』はあったの?」となってしまいますから。
そのために、起こりうるトラブルを、全部リストアップして、それを片っ端から潰していくという作業をしていました。

こぼれ話としては、今回は横浜の『大さん橋』というところを会場にしたのですが、もちろんそこを使うためにも、会場費が必要でした。

そこで最初、僕たちの方から横浜市に、「こんなイベントをやりませんか?」と、話を持ちかけました。その時、横浜市さんは、あんまり良い反応をしなかったですね。なんか怪しまれてしまったんだと思います。

そこで、「じゃあ大丈夫です。こっちでやります。」と、横浜市さんとはやらない方向で話が進みました。

そんな中、僕が翌朝、「『リベンジ成人式』やります」とブログで発表すると、ワイドショーが一気に取り上げたことで、日本中のニュースになって。

「どうやら西野が、横浜の『大さん橋』というところで『リベンジ成人式』をやるらしい」「日本中が『がんばれ!がんばれ!』という雰囲気になっている」と。

その時、うちの田村Pに、横浜市さんから
「提供に『横浜市』の名前を入れてくだされば、会場費半額でいいです」
という連絡がありました。

これに対して、田村Pは、「いや、もう知りません。」って、ガチャンと電話を切っちゃったんです(笑)
「別に満額払えます。もういいんで。」って。
キレてたな、確か(笑)

「満額払います」って言っているけど、それを払うのは僕なんですよ(笑)。
でも、田村Pの独断と偏見で、「こっちが払いますから」って言ってしまって。
そんなことがありましたが、それは田村Pっぽくて、人間ぽくて、いいなと思います。

なぜかというと、やっぱり僕らの中で一貫してあったのは、「『はれのひ株式会社』に対する『おい!』という気持ち」よりも、「大人が裏切ってしまった」っていう申し訳なさと、「はれのひ、最低。はれのひ、許せない。」と文句を言うばかりで、具体的な行動を一切起こさない大人に対する、「これ以上みっともない姿を見せるなよ」という思いです。

テレビで、はれのひの社長を叩いても、美味しい思いするのは、番組制作者と、はれのひの社長を叩くことで、ギャラをもらえているコメンテーターだけじゃないですか。それによって、新成人が救われるわけではないので。

「大人だったら問題解決へ向かえよ」っていう思いがあって、特に田村Pとかは、そこに対する『なにくそ根性』だけで走っていた。

今日は、こういった思い出話に終始しましたが、「あの事件の裏側では、こういったことがありましたよ」というお話でした。

「何か困っている人がいたら、助けられる強さっていうのは持っておきたいなあ」というのが、2年経った今なお持っている感想です。

というわけで、「『はれのひ事件』と『リベンジ成人式』の裏側で起きていたこと。」というテーマで、お話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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