現代人は○○にお金を払うbyキンコン西野
このnoteは2020年4月9日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:ヨネハラ ショウヘイさん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日はですね、
「現代人は○○にお金を払う」
というテーマでお話したいと思います。
ここ数年で変わった購買理由
僕は、『ニシノコンサル』というコンサル1本勝負の一休さん的な番組をしていた流れの延長で、今でも、月に数軒ほど「会社のコンサル」というものをやらせていただいています。
コンサルと言っても、言わば、相談役のようなことです。
対象は主に、オンラインサロンメンバーさんの会社です。
そこでの時間は、クライアントさんにとっても、僕にとっても、とても貴重な時間です。
僕としては、相談を受けた以上、必ずプラスにしてお返ししたいし、そうしないと僕の信用も落ちるので、けっこう真剣勝負です。
なので、無駄な時間は使いたくありません。
そこで、今日は「コンサルあるある」というか、「相談あるある」というか、「ここはもう蛇足でしかないからちょっと整理してみませんか?」
ということをお話したいと思います。
このラジオは、サロンメンバーさんも聞かれているだろうし、サロンメンバーさんと同じところで悩んで、同じつまずき方をしている方も聞かれているかもしれないので、これを聞いて、今後の生産性を上げていただけたらと思います。
2つあるのですが、
1つ目、一番多い相談は、
「○○業界を盛り上げたい!」というものです。
例えば、
「日本酒業界を盛り上げたい!」
「ホスト業界を盛り上げたい!」というようなもの。
ほとんどの場合は綺麗事で、よくよく掘り下げていくと、「○○業界を盛り上げたい」のではなく、厳密には「うちの会社の売り上げを伸ばしたい。ついでに、業界も盛り上がったらいいな」なんです。
この、「みんなのことを考えている」という余計な「隠れ蓑」は脱いだ方がいいと思います。
これはもう、相談するときの相談者マナーとして捉えておいた方がいいです。
その業界を盛り上げるということと、あなたの会社の売上を伸ばすということは、全くもって別問題だからです。
だって、「そんなに業界を盛り上げたいのなら、業界トップのA社に吸収されたらいいじゃん」と提案しても、「それはちょっと」となりますよね。
このやりとりが蛇足なので、まずは、いいカッコせずに本性をさらけ出した方がいいと思います。
お医者さんの診断をイメージしていただけると、分かりやすいかもしれません。
「何日前から熱が出ましたか?」というような質問に対して嘘をつかれてしまうと、正しい対処にたどり着くまでに時間がかかります。
この時間が、もったいないです。
なので、相談するときは本性をさらけ出した方がいいと思います。
その上で、この「業界を盛り上げる方法」というところにお答えするのであれば、シンプルです。
あなたが圧倒的に勝てばいい。
「なるほど、あれをやると儲かるんだな」と人が集まってきて、自然と業界が盛り上がります。
シンプルに、「圧倒的に勝てばいい」というだけの話です。
カジサックが YouTube で成功した途端に、芸能界からのYouTube参入が増えたみたいな感じですね。
本当に多くの人を助けたいと思うのであれば、なおのこと、あなたはあなた個人のことを考えて圧倒的に強くなればいい。
その方が手っ取り早いと思います。
一つ目の整理としては、
まずは「本性をさらけ出す」ということです。
相談をする時に「隠れ蓑」はもう使わない。
これは、マナーかもしれないです。
次にありがちな相談は、
「売り上げを安定させるためにオンラインサロンをする」というものです。
これが、本当に多いです。
今、サブスクモデル(月額課金モデル)って、ちょっといいなと思われがちなんです。
でも、これは本当によく言うのですが、それは「豆腐屋の経営が傾いてきたから、空き時間を使って巨人の4番になろうと思うのですが」と言ってるようなものです。
そりゃ、巨人の4番になれば年棒ウン億円の世界で、お豆腐屋さんも立て直せるかもしれません。
ただ、「そもそも、あなたは、巨人の4番になれるの?」という話です。
ここで、皆さんスポーツだと、筋肉的な理由で諦めがつくのです。
「あんなに速く走れない」とか「あんなに背が高くない」とか「あんなに重たいも持ち上げられない」とか。筋肉的な理由なら諦めがつくのです。
ですが、これが『コミュニティー運営』になった瞬間に「それだったら自分でもやれるかも」と思ってしまう。
これがtwitterやインスタやFacebookグループならまだしも、有料のコミュニティとなると、新ネタを投下し続けないと会員から不満が発生します。
月額課金モデルの比較対象といえば、ネットフリックスや Huluなどです。
それなりに強敵ですよね。
そして、新ネタを投下しようと思ったら、当然ですが、自分自身が毎日違う生活を送って毎日違う情報を飲み込み続けないといけない。
僕がレギュラー仕事を受けていないのは、そういう理由からです。
新ネタを投下し続けなくてはならないからです。
ここで整理しておきたいのですが、
オンラインサロンというものと、サブスクというものは、微妙に違っています。
お豆腐屋さんが「毎朝、新鮮な豆腐を届けます。それの月額モデルです」というもの。
これと、サロンオーナーがいて、その人のプライベートなことを発信し続けるというサロンがある。
この2つは少し違います。
オンラインサロンというのは、基本的に、運営が難しすぎます。
これは、世の中のけっこうな数のサロンオーナーさんの総意だと思いますが、サロンで稼ごうとする人は、基本、うまくいかない。
うまくいかない理屈を説明すると、色々あります。
例えば、西野のサロンは、その収益でデタラメなすごい作品を作って、エッフェル塔で個展をやったり、サロンメンバーや世間にそういったものを還元したり、場合によってはベーシックインカムという形でサロンメンバーさんに月50万円の支援をしています。
一方で、お豆腐屋さんがオーナーのサロンは、売上を「赤字経営の補填に回す」としていたら、この2つを天秤にかけたときに、家族や親友以外なら、当然、西野のサロンを選びたいと思いますよね。
稼ごうとする人にとっては、部が悪すぎるのです。
理屈で言うと、そういうことです。
そして、ここからが、今日のメッセージです。
これまで、僕は、様々なプロジェクトを見てきましたが、そこに共通してあるのは「悲壮感がにじみ出ている施策は、はまらない」ということです。
これは理屈抜きに、僕の肌感で、きっとみなさんの中にもある、これまであまり言語化されなかった感情だと思います。
「面白がってやってるプロジェクト」と「追い込まれて絞り出したプロジェクト」の違いを、今のお客さんは嗅ぎ取っています。
でね、これは少し話がずれますが、ここ数年で強く感じるのは、「気持ちよくお金を払わせてくれる」ところが選ばれるようになってきているということです。
そういうことは昔からあったのですが、それが、ここ最近、より色濃く出てきたなぁという感じです。
あの『100日後に死ぬワニ』が、100日後に炎上してしまいましたよね。
「結局金かよ!」というようなことで。
あの批判に対して、「クリエイターがお金を取るなんて当たり前じゃないか」という、クリエイター側の声もありました。
それは正論なのですが、多くの人が引っかかったポイントは、そこではなくて、「もっと気持ちよくお金を払わせて」というところだったと思うのです。
『100日後に死ぬワニ』は素晴らしいものだったし、お金を取ってしかるべきだった。
でも、一方で、そこに違和感を覚えた人の気持ちも、僕はちょっと分かるんです。
あの話を「お金を取る取らない」で議論してしまうと、どこまで行っても平行線です。
ですが、ポイントはそこではありません。
今は、「気持ちよくお金を払わせてくれるか、否か」が、けっこうなウェイトを占め始めたなという印象です。
それで、なぜこの話をこのタイミングで喋ったかというと、コロナの影響で、クラウドファンディングを立ち上げる方が少なくないと思うからです。
これからどんどん増えていくと思います。
会見でも、首相が「クラウドファンディング」と、ついに言ってしまったので、「あ、そういう方法があるんだ」と知った人も少なくないと思います。
なので、これから「クラウドファンディングで店を支援する」というようなプロジェクトが結構な数立ち上がるでしょう。
その際、クラウドファンディングの打ち出し方は「気持ちよく払わせているか、否か」というところに注意されるといいと思います。
もうお客さんは、世界中は、悲惨な状況に胃もたれしているので。
というわけで、
「現代人は○○にお金を払う」
というテーマでお話させていただきました。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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