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劇団の落とし穴 by キングコング西野亮廣

このnoteは2019年11月20日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:安永 明史さん

おはようございます。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

無料公開ページが大活躍

昨日『えんとつ町のプペル』の舞台化の発表があって、周囲がすごいザワついているんですが、ツイッターの日本のトレンドにも入って。

すごい盛り上がってる。ありがたい限りです。

この発表にあわせて、前からやっていた『えんとつ町のプペル』の無料公開ページ。
『えんとつ町のプペル』を発売した直後くらいから出していたものなんですけど。

全ページ無料でだしていて、
「そんなことをしたら絵本が売れなくなってクリエイターにお金が落ちなくなる」
みたいな批判を、当時たくさん受けたのですが、

それに関してはいろんなところで言っていますが、
無料公開ってべつに無料ではなくてマネタイズにタイミングを後ろにずらしているだけなので。

もっと言うと、絵本なんてネタバレしてるものにしか反応していないんだから、
みんな読んでみて「おもしろかったな」と思って買うか買わないか決めてる。

まずネタバレするところがスタートラインなので、
べつに本屋で立ち読みする人の人数を10人から1000人にしてる
っていう話で、

これが「売れなくなる」って結論はどうなの?
っていうのがあって無料公開したんですが、

今回の舞台化の決定にあわせてですね、
無料公開ページがほんとにたくさん見られて、
舞台に行こうか悩んでいる人が、
「そもそも『えんとつ町のプペル』ってどういう物語なの?」
って気になってくださったのか、無料公開ページがものすごいアクセスされている。

それに合わせて無料公開ページの一番後ろにアマゾンのリンクが貼られているんですが、
ここでほんとにたくさんの人に絵本『えんとつ町のプペル』が購入していただいいているんです。

改めて無料公開ページを作っておいてよかったな
っていうのが今のところの感想ですね。

『プペル』がニュースになるとこのページが開かれ、
そのうちの10人にひとりなのか、100人にひとりなのかが絵本を買ってくださるので。

絵本をかってくださるきっかけになっているな
っていうのが今のところ思っていることです。

絵本を描かれる方にはおすすめです。
こういう届け方。

というわけで今日は
「劇団の落とし穴」。

『えんとつ町のプペル』の舞台化が決定したということで、
こういうテーマでお話したいと思います。

温度差を作るな

昨日の夜、ロザンの菅さん、僕の師匠みたいな方と飲んでいて、
劇団の話になったんですよ。

それを受けて
「劇団の落とし穴」
というテーマでお話したいんですが、

劇団というのは、ほんとに気をつけてやらなきゃいけないな
と思っているんですが、

まず踏まえておかなきゃいけないのが、
劇団っていうのは小劇団であればあるほどファンが集まる。

当たり前ですが、その人のことが好きな人。
だってメディアに引っ張りだこの人が小劇団でやっているわけではないので。

ちょっと興味あるかな、くらいの人ではなくて
けっこう熱量高めのファンが客席を埋めている。

それが、劇場の寄席とはちがうところですよね。

僕は『なんばグランド花月』っていうころに出させていただいているんですけど、
ここに集まるお客さんは
「なんとなくお笑い見たいな。吉本みたいな」
くらいの感じで集まってくださってる。

1日3回転やるんかな。
1日800人かな、3回転で。大変な劇場なんですけど。

じゃあ、その800人がキングコングのファンかって言うとそうではなくて、
キングコングのこと知ってるし、なんかでてるなぁ、くらいで来てくださってる
ちょっと興味がある、くらいのお客さんが集まってくださってると思うんですね。

そこが多分、寄席と小劇団との大きなちがいで。

熱烈なファンで客席が埋まっているか、
ジャンルそのものに興味があってタレントそのものにはさして興味がない人が集まっているか。

そうすると、まず、演劇の舞台に自分も
小さい演劇にでたこともあるんですけど、
基本的には気持ちいいんですよ。ファンが集まってるんで。

必要以上にウケるし、スター扱いされるし、気持ちがいいんですね。

ここがけっこう本当に気をつけなきゃいけないところで、
現場では非常に評判がいい。ウケる。
泣いてくれたり、笑ってくれたりしてる。

でも中には、後ろの方には自分にあんまり興味がない人も混じっていると思うんですね。

ここが本当に気をつけなきゃいけないところ。
僕は関係者を招待したりするんで。

関係者はべつに僕の熱烈のファンではないんで。
そういう方たちも後ろの方の席を埋めてたりするんですが、

本当に気をつけなきゃいけないのは、
公演後にツイッターとかで、
お客さんからしたら最低な舞台だったとしても、悪い評判を書けない。

小劇団であればあるほどエゴサーチにひっかかる確率が高くなるから。
悪い評価をここで書いてしまうと人間関係が壊れてしまう。

これ結婚式に極めて似てるんですね。

結婚式ってけっこうつまんないじゃないですか。
よくわからないフランス料理みたいなの食べさせられて、
誰かよくわからない新婦の歌のうまいやつがでてきてすごい気持ち良さそうに歌っていてそれを聴かされて、
だいたいの結婚式はおもしろくない。
まぁ、おもしろい結婚式もあるんですが。

だいたいの結婚式は堅苦しいし、
よくわからないやつと同じテーブルに座らされるし、
全員が萎縮してる。

引き出物みたいな、たいしてよくわからない重い荷物持たされて、
二次会があるのに何も考えねぇな!っていう。
二次会の会場までこのでかい紙袋もっていかなきゃいけないのか、っていう。

僕は結婚式はほとんどおもしろくないから行かないんですけど。

とはいえ行っても、
「結婚式サイテーでした」
って書けないですよね。

「ひどかったなぁ。誰だよあの余興やったやつ」とか、
書けないんですよね。エゴサーチされるから。

で、悪く書いてしまうと自分の立場が悪くなってしまうから。

この結婚式の状態とよく似ていて。

これは自戒も込めてなんですが、
自分はそういうことやる人間なんでね。

なので、ツイッターの評判はいいのがズラーッと並んでるからさ、
現場でめっちゃウケるわ、ツイッターの評判も絶賛しかない。

でもね、ほんと考えてみて。
絶賛しかない舞台だったらとっくの昔に大きくなってるはずなんですよ。その劇団は。

だって、10人が10人絶賛する舞台ってすごいじゃん。
とっくの昔にでかくなって、とっくの昔に映画化とかされてるはずなんですが、
そうはなっていないのはなぜか?と言うと、

不満を持っている人が喋れていない、意見を言えていない
っていう状況が多少ある、と。

そんなことが、でる側からすると、作る側からすると、
不満を持っている人が可視化されていないから気持ちがいいんですよね。

だから、舞台やる人間は「ちょっと貧乏してでもやろう」
って話になってくる。
アルバイトをしてお金をためて舞台をやって。

結局、生活を舞台では稼げていないんだけど、
でも気持ちがいいからやっちゃう、みたいな。

だって、そんな思いできないんだもん。
普段の生活でスター扱いなんてないわけじゃないですか。

っていう性質を持った上で舞台と付き合わなきゃいけない。

舞台を批判しているわけではなくて、
舞台はそういう性質がある、
って踏まえた上で舞台を作らなくちゃいけなくて。

そのときにすごい気をつけなきゃいけないなぁ、と思うのが、
スタンディングオベーションってあるじゃないですか。

あれが義務付けられているような舞台ってありますよね。

あとカーテンコール。
カーテンコール3回するのが当たり前、みたいな。
はならから3回するのが決まってる、みたいな。

あれって本当によくなくて。
結局、興味のない人が混じっている、客席には。
その人は、うまくいけば新規ファンになる可能性がある。

だけれども、
「この舞台よかったな〜」とその人の中では70点くらいで、
「また観に行こうかな〜」と思ってるくらいだったにも関わらず、
自分以外の客席がスタンディングオベーションで
カーテンコール3回も4回もやって。

120点のものをみせていただきました。どうもありがとうございます!
みたいな感じでやられてしまうと、
ここに温度差を感じて一気に冷める。

せっかく70点を出しているにも関わらず、
「この輪の中に入るの嫌だなぁ」って。

なので、作り手が本当に気をつけなければいけないのは、
客席に温度差を作らない
ってことが非常に重要です。

内輪向けのギャグなんか絶対ダメだし。
一番ひどいのは演者がエンンディングでだらだら喋っちゃう。
「こいつこんなミスしてな〜!」みたいな。

それはファン感謝祭でやればいいだけの話で、
ここにはファンじゃない人も混じっている。

そうすると、よく知らない人の裏側なんか本当に興味なくて。
「興味ないなぁ」って思いながら、そこにはファンが8割くらい占めているから、
めっちゃウケるんですよ。

僕それで
「この劇団観に行くのやめよう」
って思ったこと何回もあって。

作り手は気持ちいいからやっちゃうんですけど、
ここは本当に気をつけなきゃいけないことだなって思います。

これは劇団だけの話ではなくて、
店とか、スナックとかでも・・

お客さん間の温度差ができてしまった瞬間に新規顧客が逃げていく。
それは気をつけてやらないといけない。
そしてそういう性質をもっているっていうことを
踏まえて向き合った方がいいと思うよ。

という結論でございます。

今日は
「劇団の落とし穴」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

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