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頭頸部がんって知ってますか?#deleteCリレー連載 (6/8)

みなさんこんにちは。耳鼻咽喉科医の前田陽平と申します。「ひまみみ(@ent_univ_)」という名前でTwitterをしています。


いきなりですが、耳鼻咽喉科もがんの診療を行っていることをご存知ですか?

耳鼻咽喉科で扱うがんを「頭頸部がん」といいます。

耳鼻咽喉科医の中には頭頸部がんの診療を専門とする、「頭頸部がん専門医」も数多くいます。
耳鼻咽喉科医として「頭頸部がん」について少し紹介させていただきますと、たとえば上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がん・喉頭がん・舌がん・歯肉がん・上顎がん・鼻腔がん・外耳道がん・甲状腺がん…など実はすごく多くの種類があります。


頭頸部がんの発生する部分は「人間が生きていくのに必須」である部分が多いというのが特徴です。治療によって生活の質が下がってしまうことも多く、生活の質の低下をできるだけ抑えながらがんの治療を行うということになります。

また、外的な要素がリスクとなることが多いことも頭頸部がんの特徴の一つで、喫煙・飲酒・口腔内の衛生不良・ウイルスなどがリスクとして知られています。もちろん、禁煙・節酒・口腔ケアなどを心がけていただくことがこれらのがんの予防になります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のホームページではいわゆる電子タバコも吸わないようにということが強調されています。(1)

特に喉頭がんは喫煙のリスクが非常に大きいがんです。やや古いデータですが、喉頭がん患者のうち、喫煙者は96.8%だったというデータもあります。(2)本邦における喫煙率の低下に伴って、死亡者数も減少に転じつつあり、ある程度予防しやすいがんの一つと言えるかもしれません。

最近また話題のヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんのみならず、中咽頭がんの原因となることもあることが有名です。HPVに由来するがんとしてアメリカではすでに子宮頸がんよりも中咽頭がんが多い、といったことも知られています。(3)その意味で、HPVワクチンは中咽頭がんに対する予防効果も非常に期待されています。


いまから十数年前、僕が研修医を始めたばかりのころは、頭頸部がんに対する保険適応の抗がん剤というのは限られていました。いまは薬剤の選択肢もかなり多くなっています。これらはがん研究の成果です。

昔の医療小説を読むと、昔の医療の雰囲気がよくわかって面白いので、以前はよく読んでいました。

たとえば、昔の医療では「患者さんにがんと知らせるような残酷なことはしないのが常識」だったということがよくわかります。

僕が研修医の十数年前は、印象でいえば過渡期で、医療者側は「がん治療を行う場合は患者さんにがんと知らせるのが常識」になっていた一方で、患者さんやその家族にとっては「がんであることを知らせる」ということがまだ常識にはなっていなかった、という印象です。

この常識の変化には「患者さんに病状を知らせて治療するのが当たり前」になってきたということ以外に、必ずしも「がん=不治の病」ではなくなってきたということがあると思います。それでも、まだまだ厳しい場合もあります。

「Delete C」は、がんの治療研究を応援する活動です。

僕自身、医学生のころは恥ずかしながら研究ってなんとなく患者さんに直接役に立たないような感じがしていました。

でもよく考えると、自分が日常臨床をしていても、常にそれは過去の研究をもとに自分の知識を積み重ねて患者さんと向き合っているわけです。研究が進まなくなるということはすなわち医学の停滞、ともいえますよね。そもそも、患者さんにちゃんと使えるか、あるいは効果があるか、ということを確かめるのも「研究」なんですよね。


とりとめのない文章ですが、今後のがん治療研究が発展するように一人の医師としてすごく期待しています。

中咽頭がんとHPVについての記事を書いたnoteがありますので、こちらも参考になれば。

https://note.com/ent_univ_/n/nf94eb3bcb51a

(1) https://www.cdc.gov/cancer/headneck/index.htm#:~:text=All%20tobacco%20products%2C%20including%20cigarettes,except%20for%20salivary%20gland%20cancers
(2) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbes/68/5/68_327/_pdf
(3) https://www.cdc.gov/cancer/hpv/statistics/cases.htm

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