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これからの編集に求められることってなんだろう

テレビドラマによく登場する「優雅で知的な出版社勤務」というイメージは、一部の大手出版社社員を除いてほとんどどこにもない。多くの編集者は労働時間の割には少ない給料で、膨大なデスクワークを抱え、休日出社を余儀なくされているというのが現実だ。また芸能人や有名作家と友だちづき合いができるなどといわれるが、そういう職業の人たちとうまく仕事をするためには、企画力や文章力のほかに特別な神経が必要であるといわれている。

思わず読んで吹き出してしまった。これは「13歳のハローワーク」に書かれている「編集者」の説明である。ネット社会の今の世で、「編集者」でググってこの説明が出てくるのもどうかと思うが、これだけ読むと、めちゃくちゃブラックだ。

僕は、今年の頭から編集者として働き始めた。もともと自分で書くのは好きだったし、言葉にまつわる仕事をしたいと思っていたので、願ったり叶ったりだった。前職で採用広報として、記事を書いてきたけど、「編集」の仕事をプロとしてやるのは初めての経験。

1ヶ月働いて、ふと思った。

そもそも編集者の役割ってなんだろう。

人が書いた文章に対して提案をしたことあったけど、整えるだけが編集者の仕事じゃない。「編んで、集める」と文字を当てるこの職種。文字通り、様々な職種が集まり、1枚の布のように編まれたのが「編集」という職業だ。

メディアの色と方向性にそって企画を出す「プランナー」でもあり、ネタに必要な情報を収集する「リサーチャー」でもあり、企画を通したり、取材対象に打診し承諾をもらう「セールスマン」でもある。編集者は盗賊の七つ道具のように、使うツールを変えながら、一つの情報を作り上げていく。だが、これは「編集者」の一側面でしかない。

「編集者」の仕事の本質は違うところにある。

一般的に「編集者」というと、「13歳のハローワーク」に書いてるように、本や雑誌を作っている人というイメージだろう。紙の出版業界は斜陽産業(少なくともV字回復はしないだろうなと思う)だし、「編集者ってこの先ニーズあるの?」と思う人も少なくないと思う。

だが、僕は今の時代だからこそ、「編集者」は超ニーズのある知的労働だと考える。

今の時代は超機会平等な時代だ。SNSやYoutubeなど動画サイトとクラウドファンディングによって、僕たちは自分のやりたいことで食い扶持を稼げる確率がグンと上がった。極端な話、地球の裏側の人とも繋がれるし、資本金ゼロでも信頼で個人からお金を集めることができる。

アメリカに比べると起業家の割合はまだまだだけど、若いうちに起業する人が増えているし、そこに対して恐れを抱く人も減っている。

やりたいことは形にできる。なんとなく頭の中に理想の世界がある。

プロダクトも数字を見ながら改善すればグロースできる。

だけど、どんな素晴らしいプロダクトでも、どんな素敵な理念でも、関わる当人だけが理解している状態では意味がない。概念でわかっていても、言葉に落とし込まれていないと届かない。

夢の実現のハードルが下がり可能性が上がる一方で、日本単体で見たら人口は減っていく。脳のメモリには限界があるので、いかに自分たちの方を見続けてもらえるか、気にかけてもらえるかが、これからの事業でより大事なはずだ。

「編集者」の本質的な仕事とは、イメージで出来上がっている概念を言葉にすることだ。「それって、こういうことですよね」と1つの定義された言葉を作り、世の中の文脈に沿って言葉を乗せる仕事。

実際に、メルカリやNETFLIXなどは自社の「編集者」を採用しようと動いている。

伝わる言葉を作る仕事は、かなり難易度の高い仕事だ。

言葉って誰でも読めてしまうからこそ、批判を受けやすいし、間違って届いてしまう可能性もある。誰にでもわかってしまうことほど、使う側が細心の注意を払う仕事はない。

「相手の伝えたいことを出来るだけ100%に近く、正しく他の人に伝えること」

昔、僕が編集者の先輩に言われた言葉だ。

その言葉を言われてから、編集者になるまで1年近くかかったけど、今も大切な言葉として胸に残っている。僕の周りの大切な人たちの思いを濁りなく、届くべき人に届けるためにも、僕はこの道を選んでよかったなと改めて思える。

言葉のプロとして、届け手のプロとして、誰かの思いを可視化できるよう、今月も頑張ろう。

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