特にアニメに詳しくないけど『鬼滅の刃』がすごいと思ったという日記


 結論から書いておこう。流行に乗って鬼滅の刃のアニメをみて漫画を読んでみたら、この作品は作品としての作りこみ(クオリティ)というよりは、万人が楽しめる・皆がかっこいい!と思える作品という点で、本当にすごいということ、そしてアニメ化と漫画本編ががっちりと組み合わさった一つのコンテンツだなと思ったという話です。せっかくいろいろ考えたので、メモがてら書き残したい。

 まず、私は少年漫画が好きだけど、あくまで好きくらいにとどまっていてめちゃくちゃ詳しいとか界隈の話に精通しているわけでもない。ただの一読者、視聴者にとどまっています。なので、講評とかじゃなくてただの感想、考察ってことを念頭に。

 鬼滅の刃すごい流行ってるな~。旬ジャンルはいったん距離を置くタイプの私は、それくらいの認識でこの熱狂したブームを見守っていました。すると、母がアニメを見始めた。アニメを横目で見ているうち興味がわいてきました。当たり前ちゃあ当たり前。映像綺麗だし声優豪華だし演出がTHE少年漫画って感じでかっこよくて。なにより、冨岡義勇役の櫻井孝宏さんがすごくかっこよかった。作品見ていない時点でも、キャラと声とシーン(鱗滝さんへの手紙の読み上げがすごくよかった)が相まってる感じがあって引き込まれました。

 そんなこんなでちゃっかりアニメを視聴。アニメはほとんど見ないで育ったので詳しいことはよくわかりませんが、すごく丁寧に描いているなという感じました。漫画でいったらだいたい六巻くらいまでの内容を二十数話で描いてるし、修行とかのシーンも多いのにちゃんと描かれてるのが丁寧だなぁ、と。これからも続くことを念頭に置いてる感じ。本気って感じ。各キャラも個性があって、なにより炭治郎が本当に気持ちいくらい良い子。みていて清々しいし、応援したくなる。冒頭で触れて、結局の結論ではあるんですが、万人受け、というと言い方悪いかもしれないけど、とにかくみんなが応援したくなる感じですね。また、ここで個人的に鬼滅の刃のここがすごいポイントで、過度に落ち込んだり壁にぶち当たって打ちひしがれる、みたいな時間がない。任務が忙しくて落ち込んでる暇がないっていうのもあるけど、なにより炭治郎が「俺は頑張ることしかできない」と自分を理解してひたすら努力するところが、見ていてテンポがいいし、すっきりします。主人公が悩み壁にぶつかる過程というのは、見ている側に共感を生むという効果があると思うし、そういう作品も勿論とても面白いですが、共感を生むという目的である以上、共感できない人はしっくりこないという場合もありますからね。あとどうしてもじれったくなったりする場合もある。こればかりは向き不向き、相性。

 そう、相性。ちょっと話がそれるけど、物事には相性があります。特に旬ジャンルで見られる「流行ってるけど面白くない」とか「流行るほど面白くない」論争。面白い、面白くないって絶対的な正解値があるわけじゃなくて、結局作品と個人の相性だと思うのです。流行ってる作品は、より多くの人と相性がよかっただけで、相性が良くない人も勿論いていいと思う。ただ、自分が面白いと思わない(合わない)=つまらないとすることが、価値観の押し付けであり、良くないことだということ。逆も然り。コスメのレビュー動画でとあるYoutuberが言っていたのが印象的で、「マットでいいという人もいれば乾燥するって思う人もいるし、潤うっていう人もいればべたべたするっていう人もいるから、マジで人それぞれ。」みたいな。アニメも漫画も、ひいては人付き合いとかもそう。別にみんなが面白いと思ってるものを面白いと思えなくてもいいし、世にウケてないものが好きでも何の問題でもない。人には人の価値観があるのだなと思えればいいのです。なんのこっちゃって感じですけど、これは鬼滅の刃を読んで改めて気づいたことなんですよね。

 鬼滅の刃はサクサクと進むストーリーとまっすぐな主人公がより多くの人と相性が良かったのだと思います。漫画を読んで、さらにそのことを感じました。

 漫画の前半、アニメ化していた部分までを読んだとき、正直な印象は「あっさりしてるなぁ」でした。アニメは音楽とか動きがあるから、感覚的に壮大に感じるのかもしれないけれど、とにかく漫画はさらさらっと進んでいく感じがしました。ここも相性です。これをテンポ良いと捉える人もいれば、物足りないと思う人もいるでしょうし。私はあっさりしてるけど、その分読みやすくていいなとも思った。

 あとは、アニメがあったからより楽しめたな、と。これは異世界というかファンタジーものにつきものだと思うのですが、世界観が作りこまれているほど、序盤の理解に時間をかけなければいけないという宿命です。ついでに言えば、主人公の成長していくところ(鬼滅の刃で言えば、炭治郎が鬼殺隊になるあたりまで?)も、土台作りといえば土台作り、のような気がする。どうしてもその部分が退屈とか、説明臭いと感じる人もいるかもしれません。鬼滅の刃は、その前半の部分が力をいれたアニメーションで作られていて、私はそれを見てから漫画を読んだので、(個人的に)物足りない部分もアニメの印象で補完されていた、という感じだった。

 そして、鬼滅の刃は、その土台といえる部分が終わってから、つまりアニメ化されていた部分以降がとにかく面白い!なので、アニメを見てから原作を読み始めた人は、かなり楽しめるのではないかと思う。つまり私はめちゃくちゃ楽しんだ。退屈になりがちな土台作りをアニメーションで楽しんだ後に、展開やキャラの個性が面白くなっていく今後が漫画で読める。アニメと漫画でよくバランスの取れた、というか一つの作品という感じで楽しめるなと思った。アニメだけでも漫画だけでもここまで爆発的な人気は出なかったと思う。もちろん、アニメ化できるだけの作品の面白さがあってこそ、アニメから入った人が楽しめる漫画本編の面白さがあってこそである。

 ここからは漫画の話。

 少年漫画ってキャラものだなと思う。悪い意味じゃなくて、キャラのカッコよさで成り立つ、というかキャラを見るための漫画というか。特異な能力を持ってたり、強い仲間がいたり、秘めた力があったり。そういう「特別」を持ったキャラを楽しむのが少年漫画で、私はそういうTHEかっこいいが大好き。鬼滅の刃は、その王道の真ん中をいきつつ、いままでにない和のカッコよさがとにかくたまらない。秘めた力を持つ主人公、しかも努力してるから嫌味じゃない。鬼と命を懸けて戦う政府非公認の組織。その組織を支える最強の剣士達、柱。呼吸、選別試験、隊服、刀、任務…etc字面がもうかっこいい。少年心をくすぐる感じです。王道を行きながらオリジナルな世界をつくるって本当にすごい。世の中の創作者たちリスペクト。

 鬼滅の刃が独特のオリジナリティを出してる所以は、せりふ回しもあると思う。ぶっちゃけ最初にアニメを見た時「しゃべりすぎじゃね」と感じた。でも、炭治郎のズレた思考とか、頭の中を全部読者に見せる表現の感じが、コミカルだけどふざけていない、鬼滅の刃固有の雰囲気に昇華しているのではないだろうか。というか、考えを全部見せてくれることが、炭治郎のまっすぐさというか、実直さの表現方法の一つなのでは、とも思う。

 前述したが、鬼滅の刃の漫画本編は、長い漫画や創作物を読みなれている人は「あっさりしている」と感じると思う。私は思った。新しい展開が出てきたとき、この展開は伏線があったほうが面白かったな、とか、敵との戦闘も、あ、終わり?という印象を受けることもあった。ただ、それがこの作品の良さなのだな、と受け入れさせる違和感のなさ、というか納得できる。何度も言う通り、相性だ。私はあっさりしていると感じたことが、テンポの良い作品も面白いな、に変わったので、相性がすこぶるよかった。読みごたえを重視したり考察が好きな人は、物足りないと感じるだろう。ただ、伏線を張るということはつまりはその時は意味の分からないシーンや台詞があるということだし、特定のシーンの見ごたえも、全体の流れをどんどん見たい人には少し退屈かもしれない。そういう意味では、伏線や謎が少ないことや、テンポが良いことは、多くの人、特に普段がっつりと漫画やアニメに親しまない人が楽しみやすい作品のポイントなのだと思います。だからこれだけ流行っているのだと思うのです。

 これが、私が鬼滅の刃に気づかされた大きなこと。つまりマニア受けする作品や作品の緻密さは、必ずしも作品のウケとイコールではないこと。大衆受けするということが、様々な面白いとイコールではないということ。大衆受けする作品は、大衆受けする作風なのであって、面白いから大衆受けしているわけではないということだ。悪口みたいだけど違うよ。なんというか、世界観の壮大さ、話の作りこまれ具合がすごいから売れたのではなく、多くの人が楽しめるテンポ、キャラクター性だから売れたのだな、ということ!

 ただの感想です。一言でいうと鬼滅の刃めっちゃ面白い炭治郎頑張れ~って感じです。好きなものに関しては自分はこんなにいろいろ考えられるのだなと驚く日々。


 読んだことない人はぜひ読んでみて見てみてほしいなぁ。