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【オリジナル】星譚り その1

神様・・・・

どうか僕に名前をつけてください。

どんな名前でも構いません。

きっとその名前に恥じないように生きてみせます!


ですから・・・・

どうか・・・・

どうか・・・・




 あれからどれくらいの時間が経っただろうか・・・
子供だった星が大人になるには十分すぎる時間さ。
そして、僕はやっと地球の近く、
太陽系の銀河までたどり着いた。

太陽系は僕の住む場所からは遥か遠い場所だった。

なぜ太陽系に来たかって?
そこには神様がいるって、テトラが言ったからさ。
僕はまだ名前を持たない星なんだ。
神様に認めてもらえれば、名前をつけてくれるって。

テトラは僕の幼なじみで、
ずっと仲が良かったんだけど・・・
でも、僕はそこにはいたくなかった。

もしかしたら、テトラと一緒にいれば
平和に暮らしていけたのかもしれない。

彼女には『テトラ』っていう素敵な名前があった。
だからきっと僕の気持ちはわからないさ。

名前がないという・・・この惨めさは・・・・

待ってたって何も変わらない。
だから僕から神様の元に行くことにした。
さよなら、テトラ。


そして、太陽系に辿り着いた。


僕は神様を探しまわった。
しばらく経って思ったのは、
『本当にこんなところに神様がいるのか?』ってことだ。



この前は、近くの星がふたつ寄ってきて、


「ずいぶん汚い格好だけど、お前はこの辺の星じゃないな。
名前はなんていうんだ?」


「え?名前がないのかい?」


「おいおいおい、それで、一体どうやって
これまで生きてこれたんだい?」


「言ってやるなよ、気の毒じゃぁないか。
きっと苦労もしてきたんだろう。」


「確かになぁ・・・ではどうかな?
ここはひとつ、俺らでこいつに名前をつけてやるっていうのは。」


「そいつは名案だ。感謝しろよ、名無し。」


「そうだな・・・『はぐれ星』ってのはどうだい?」


「ピッタリじゃぁないか!」はっはっは!と大声で二人は笑った。


僕を見下したような嫌な笑い顔だった。

そこでようやく僕は言葉を発した。
「あなた方に名前を戴く義理はありません。さようなら。」
そう言って、足早にその場を後にした。


僕の後ろ姿に彼らはこういった。
「ちぇっ、つまんねぇやつだな。
ノリがよけりゃ可愛がってやるってのにさ。」
そして、声を大きくして、
「田舎もんのはぐれ星よ!」


「この銀河に生きてるものには全て名前がついているんだ。」


「お前も恥知らずだな!早く田舎に帰った方がいい!」


ただ、悔しかった。名前がないというだけでこの扱い。
君たちと僕と一体何が違うっていうんだい?
田舎生まれだから何だってんだ。
名前がないからなんだってんだ。

干渉するなよ。

ほっとけよ。

きっと、どこに行ったって変わらないんだ。

こんな惨めさは・・・確かに、テトラといた時からそうだった。

だからだよ。

こんな思いは嫌なんだ。


僕だけが、こんな仕打ち・・・・
恨むよ・・・神様!


その刹那、目の前が真っ白になった。

目は見えなくなり、音も聞こえなくなり・・・・

五感はどこかへ吹き飛んだ。

そこには確かに神様がいた。

『いた』というのは正しい表現ではないかもしれない。

『いるように感じた。』が正しいかもしれない。


そして、僕には予感だけがあった。

「これで、僕も名前を授かれるんだ!」と。



その2へ続く

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