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オレンジの薪で炊き上げるパエリア

4月でも、陽射しは"夏来たか?"と思わせる日も増える、スペイン地中海沿いの街、パエリア発祥の地 "バレンシア"。 皆集まるならパエリア作るか? そんな、おもてなしをして貰ったことも。(本来の発音はパエーリャ、パエージャ。)

ある年の4月中旬、セマナサンタ(聖週間)、そしてパスクア(復活祭)が終わった次の週の日曜日の話。

この日訪れた"ナチュラルパーク"で撮った少年の"チャレンジジャンプ"
下でそれを無視して羽繕い真っ最中のアヒルさん。


スペインのフィエスタ 祝祭日 -fiesta-

"薪パエリア作るから来〜へん? "

友人からのお誘いで向かった場所は、バレンシアの中心から北西に電車で1時間ほど行ったところにある町 "リリア(Llíria)"のナチュラルパーク(Parque Municipal de San Vicente)。見てみたかったのよ、実際の文化とか… いろいろね。

その日は、コミュニティー主催の"パエリア祭り"で、皆でパエリアを作り、家族、友人、知人と楽しむ、スペインらしいフィエスタ(fiesta)。地元の人たちを含め、かなりの人たちがナチュラルパークに集まっていた。
フィエスタという言葉はパーティ、お祭り、祝祭日に使われる。他にフェスティボ(festivo), フェスティビダッ(festividad)なども。

次の日が "聖 ビセンテ・フェレールの日 (San Vicente Ferrer)" という祝日。
ビセンテ・フェレールという聖人は、バレンシア出身であったのでバレンシアの人たちは、より特別感もあるだろう。 ¡¡Viva Valencia!!
スペインでは国の祝祭日と各州(市町村)ごとの祝日がある。旅行、留学予定の人は、祝祭日が全国統一している日本とは違うことは知っておいても良いかもね。

この日は日曜日で、明日は祝日。今日はフィエスタ、明日もフィエスタ…
集う、飲む、食べる、喋る、楽しむバレンシアの人たち。ほんま、よう喋る…
わたしは友人たちが作る"薪パエリア"と、休日に"お日様の下で飲むビール"を思いっきり楽しむことを考えていた。

こちらはわたしたちのブロック、横にもっと広かったけど。他にもブロックがいくつかあった。
パエリアだけでなく、バーベキューをしている人たちもいたと記憶。


薪での"火加減"

バレンシアのご家庭では、パエリア鍋専用ガスコンロを持つ家庭も多い。
丸くて、ガスホースを繋いで、大きなパエリア鍋が乗る… 想像力にお任せする。
一家に一台たこ焼き器を持っている、それとダブる… そんなわたしは関西人。

この時、薪で炊き上げるパエリアを作ってくれたのは、二人の友人。
まず、わたしにとってのバレンシアのお姉ちゃん(日本人)!!でなく、その"旦那さん" 何かと絡んでくれるユーモアたっぷりのスペイン人(バレンシアーノ)である。
バレンシアでは、"パエリアは男性(お父さんやお爺さん)が作り振る舞う" 。基本的にそんな文化もあると教わった。

もう1名は、シェフでありつつ、本場のパエリア バレンシアーナやスペイン料理をさらに学ぶためにバレンシアに住んでいた"日本人の友人男性"
その友人は現在、東京のミシュランガイドのビブグルマンに選出され続けている有名レストランでシェフとして腕をふるいまくっている。

わたしといえば、"ご自由にお使いください"的な薪を運ぶ係。(勝手に)
プラス撮影をする係、カメラではなくiphoneで。 (ビール片手に)

多くはオレンジの薪を使うが、松の木、オリーブの木なども使うらしい。プロのシェフならそのロジックを言語化できるが、いろいろとあるだろうと想像する。
薪で難しいのは "火加減"。ガスなら簡単な調整できるだろうが、薪を如何に移動させつつ火加減を調整するか? がポイントになってくる。素人にゃ無理…

こちらがパエリア鍋、実は奥のパエリア鍋の方が大きい。
薪には火がくべられていて、オリーブオイルを温めています。

パエリア鍋は直径30cmぐらいで4人前、この二つはもっと大きいサイズ。
手前で8? 10?人前サイズぐらいだったような。10種類ぐらいサイズがあり、お祭り屋台だったら1mぐらい? のでっかいパエリア鍋を使ったり。

パエリア バレンシアーナ(Paella Valenciana)

パエリアの名前のことを少し話させてもらう。日本でパエリアといえば、魚介出汁で炊かれた"シーフードパエリア"が頭に浮かぶと思う。
生粋のバレシアーノ(バレンシアの人)は、魚介材料を使ったそれを"パエリア"とは呼ばない。

元来、兎肉と鶏肉、モロッコインゲン、白インゲンなどとお米をトマトベースで炊き上げた"パエリア バレンシアーナ"のことを"パエリア"と呼ぶ。
そのパエリアが、やがて魚介が豊富に獲れる地域でアレンジされ、魚介出汁ベースで炊き上げられたモノは、"アロス ほにゃらら"の名で呼ばれる。アロス(Arroz)はスペイン語でお米。

バレンシアの老舗の米料理レストラン、通称アロッセリア(arrocería)でのメニューには、こんな言葉で書かれている。
アロス ア バンダ(Arroz a banda 魚介)、アロス デル セニョレット(Arroz del senyoret 魚介)、アロス ネグロ(Arroz negro イカ墨パエリア)、他にもアロス デ ランゴスタ(langosta ヨーロッパ伊勢海老)やアロス デ ボガバンテ(bogavante オマール海老)など大きな海老類が乗ったもの、他にも具材名で呼ぶ種類もあり。
アロス ア バンダは、バレンシア州のアリカンテが発祥の地らしい。

とは言え、観光客も訪れるバレンシア。スペイン語も話さない観光客にお堅い事を言っても困りますな。
なので、中心街、ビーチ、観光地などのレストランやバルでは、魚介系もわかりやすく、パエリア デ マリスコ(paella de marisco)などとメニューに書かれている所も多い。肉と魚介のパエリア ミクスタ(paella mixta)や、お店によっては、創作として具材がアレンジされたパエリアもある。ビーガン向けなどもあったと思う?

では、一気に行きますか。

鶏肉、兎の肉を投入。因みに市場ではパエリア用などとして兎は一尾丸々で売っています… きゃー。
こちらは大きいのでお肉の量も多いです。
しっかりと焼き目をつけて肉の旨味や香ばしさ、風味をオリーブオイルに移して行くのだと。
肉類を炒めつつ、モロッコインゲン、白インゲン豆を投入し、また炒めて行く。
左のパエリア鍋の方が大きいでしょ。両者、本気モード、真剣そのもの。
後ろで監督するおじさんがヤジを飛ばしては、友人旦那が言い返してた。毎年監督交代でやってると。
こちらも、モロッコインゲン、ガラフォン豆(白インゲン豆)を投入し炒めて行く。
水、完熟トマト、サフラン、ピメントン ドゥルセ(パプリカパウダー)投入。
ピメントン ドゥルセはいろんな料理に使う、スペインでは欠かせない調味料。
炊き上げながらアロス ボンバ(arroz bomba)という品種のお米を投入。出汁をよく吸い込んで膨れるのでボンバという名前で、メロッソ、カルドッソなどのお米料理に使われていたかな。
ローズマリーを投入。
最後にカタツムリをパラパラっと入れて炊き上げます。
出来上がり。底のお米を少し焦がすぐらいで炊き上げる。
この時は20人ぐらい集まってたかな? 皆でとても美味しくいただきました。

画像がないが、パエリアをいただく際には、鍋底に付いたソカラ (socarrat)と言われる"お焦げ"をガリガリとスプーンで掬って食べ、香ばしさも楽しむのである。

家庭でパエリアを楽しむ場合は、材料も多少なり変わることも当然あるだろう。
アーティチョーク(alcachofa)入りをご馳走になった事もある。
お肉のパエリアは炒めた肉の旨味、魚介のパエリアでは魚介出汁を使って炊き上げ、しっかりとそれらの旨味をお米に吸わせて作ると。
美味しい出汁というものは、世界の人々を幸せにする…と思う。


インプット、アウトプット

パエリアの本場ゆえに、友人のようにプロフェッショナルとして向上するため日本からバレンシアへ修行に行く人もいる。伝統的な調理方法を学んで、それにプラスアルファ、そのシェフたちのロジックというスパイスでさらに進化した料理になるのだろう。何でもそうだが学んだ後の取り組み方や努力、今の言葉で言うならインプット、アウトプットが大事だろう。

反面、話題性と商売が優先され、その料理が本来の調理法からかけ離れ過ぎているモノはちょっと残念に思うことも…

食後のナチュラルパーク散歩、その1
散歩、その2

最後に

わたしは革を使い、手縫いで仕立てるというやり方でモノを作る。ガスじゃなく薪で作るのとちょっと似てるかな?

基本ベースはあるが、自分の考えを織り交ぜながら、理に叶っているかを考えつつ作る中で得た自分のロジックは、引き出しにもなり何かと役に立つ。上手く落とし込めたと感じた時は素直に喜ぶようにしている。ちょっと小躍りする。

たまには自分へのご褒美に美味しいパエリア バレシアーナを食べたい。
美味しい赤ワインとハモン イベリコも。

ではまた、¡¡Hasta luego!!




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