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毎日読書メモ(172)山本文緒追悼:『シュガーレス・ラヴ』

山本文緒追悼その2で『シュガーレス・ラヴ』(集英社)を読んだ。「小説すばる」の連載だったので、集英社から単行本が出て、集英社文庫になったが、現在は角川文庫。ぱっと見たところ、多くの山本文緒作品が角川文庫に集約されているようだ(一部ドル箱的な作品が文藝春秋と新潮社に残っている)。

主に女性が苦しむ病気をテーマとした短編集。扱われているのは骨粗鬆症、アトピー性皮膚炎、便秘、突発性難聴、睡眠障害、生理痛、アルコール依存症、肥満、自律神経失調症、味覚異常。約25年前の小説だが、現在でもこれらの症状で苦しんでいる人が多いな、という哀しい普遍性。どの作品も、主人公は自分を大事にしていない痛々しさがあり、それを自覚し、解決しようとすることで、病気の症状も緩和する、という、ある意味前向きな結論となっているので、読後感は悪くないが、でも、現代病の病理は深いねぇ、とも思う。今でも同じような苦しみを抱えている人は多そうだもの。

ハラスメントに対する世間の目は厳しくなっているような気もするが、でも現在でも怒りの声を上げる人、その陰に、声を上げられず苦しんでいる人は沢山いる。小説の描写的に、今や職場とかでこの言動は超NG、と思う部分はあるが、本質的には何も変わっていないんじゃないかという悔しさ。

自分を大事にして生きないとね、という作者の声が、一つ一つの作品から聞こえてくる。


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