(23) ムジナ塚

会社につとめてたころも、オレ３交代のあいまに、畑仕事をやってたんだけど、定年になって本気で百姓する気になってよ。去年、畑を借りたんだ。　１反（＝約1000㎡）はたっぷりあるなあ。

よくたがやして肥料をどさっとやって、草は残らずぬいてやっていると、へへ、いい具合に野菜が育ってよ。収穫したら、農協に出すべ、と楽しみにしていたら、なんとその畑のあたりは、元はムジナ塚とよばれていて、タヌキ穴があちこち、あったらしいんだ。

砂利ほりのために穴がつぶされて、タヌキのやつら、消えちまったと思っていたら、どっこい、やつらどこかで、ちゃんと生きてるんだなあ。

オレの畑なんざ、古巣に現れた食堂、てなもんで、食われるのなんの。トウモロコシとピーナッツは、大好物らしくて、去年は根こそぎやられて、こっちはみじめなもんさ。

こうなったら、意地だからよ。今年はピーナツ畑のまわりを、３夜続けて草でいぶしてやったら、すみっこだけ盗まれて、畑の中はぶじ残ったのさ。

ところが、4日目に祭りで出かけて、ちょっといぶすのを手抜きしたら、その一夜で全滅よ！一族引きつれて食べ散らした上に、みやげに引き抜いて、引きずって行きやがった。敵ながらあっぱれ、だよ。そうやって、生き延びてんだなあ。

オレも考えてさ。やつらが手を出さない、サツマイモ専門でいくことにしたのさ。