1章-5 9/4 コペンハーゲン市内巡り
朝5時20分に起き出す。夜中に何度も目覚めたが、そのたび近所でわめき声や歌声が聞こえた。この近辺には、ホテルが20ほども密集しているが、ドラッグ(麻薬)を呑む連中もいるそうで、ハイになってラリってるらしい声に聞こえた。
空はようやく薄明かるくなり、窓の下の道を駅へ向かう人、自転車で走り ぬける人、ジョギングする人、と意外に頻繁に行き交っている。
7:30 階下の食堂へ行ってみると、年配のご夫婦などが大勢食事を始めていた。バイキング式に、欲しいだけ皿に取って来る方式は、オランダでもポーランドでもデンマークも同じようだ。(どこも一応有名なホテ場合だけのようで、その他の宿では、シンプルな朝食の方が多かったが)。
ハム・チーズ・ニシンとイワシの酢漬け・トマトジュース・ミルクなど選んだが、野菜はキュウリとドマトだけだった。幹彦は私よりもずっと少ない。私はパンの他に、シーリアルも全ての種類を少しずつ取り会わせて頂いた。朝しっかり食べないと、1日歩くのだもの。
窓ぎわに座っていたので、外を通る人がよく見えた。しかも、ちょうど信号の見える所で、立ち止まった人の持ち物や仕草やようすで、あれは日本人だね、とわかるのが面白い。『地球の歩き方』の本をしっかり握っていたし、それに日本文字の名前がくっきり見えるのだから。私たちもよそから見たら、典型的日本人だね、と笑い合った。
なんだか暑くなりそうで、雲ひとつない空だ。
まず市庁舎 (シティ・ホール) へ向かう。立派な塔のある、堂々たる風格の 建物だ。その前の広場の一角に、アンデルセンの像があり、建物の片側の 道路には、〈アンデルセン通り〉という名前がついていて、色とりどりの 花が道沿いにずっと咲き続いていた。ぐるっと建物の周囲をひと周りすると、道の向かい側にシテイ・オフィス・コペンハーゲン・ツアーと、車体の側面に大きく書いた、二階建てのバスが止まっていた。
12歳以下は無料。コペンハーゲン・カードを持っている人は2割引で80クローネとわかり、私たちは乗りこんだ。本当はもっと本式の観光バスが あったらしいのだが、幹彦はしけた、流行らないバスに哀れを覚えたらしく、さっさと2階へ上がるので、仕方がない、私も続いた。客はもう1人 お婆さんが乗ってきただけだった。
9:15 バスは動き始め、英語の男性の声で、周囲の建物の説明が始まった。が、右の建物が、と言われても、バスはどんどん動くし、どの建物の 説明をしているのかが、わかりにくくて、聞き流すだけだった。たぶん本格的な観光バスの場合には、日本語のガイドが、ヘッドフォンで聴けたのではないかと思う。
2階の一番前に座っていると、風が冷たくて、ショールを頭からかぶって、帽子が飛ぶのを防いだ。
バスは14箇所の停留所で客を拾いつつ巡って行き、10人あまり増えて きた。このバスは乗り降り自由で、見学したい所で下り、次のバスが来た 時に乗ることもできる。
町全体が古いレンガ造りの、北欧らしいたたずまいで、ほんの一部、それとわかる新しい建物が混じっている。宮殿、教会、博物舘などつぎつぎに横目で見ながら、バスはくねくねと進み、一番遠い海岸の〈人魚の像〉にたどり着いた。
ここで初めて10分の休憩となり、バスは止まり、全員下車して、像を間近に見たり、記念写真を撮ったりした。この像は心ない何者かに、2度も首を切り落とされたが、その跡はまったく見られず、見事に修復されていた。
ただ、対岸の建物や煙突が、景観をかなり損ねているように見えた。
その後、バスはウオーター・フロント (水ぎわ) まで行き、そこから引き返して、オーゼンボー宮殿や国立美術館などを遠目にしつつ、元の市庁舎の脇に戻った。