死の具、オールドレンズが指差す。at清澄白河−横浜(2019.12.08)

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画像2 オールドレンズを買った。ロシアレンズのJupiter-3。はじめての撮影に挑む。これまでのオートフォーカスがどれだけ楽だったかが思い知らされる。ピントをいちいち自分で合わせることの難しさ。しかし、それが楽しくなってくる。はじめに撮ったものはこのようにフレアがすごい。逆光ではいけない。
画像3 東京都現代美術館。美しい外観と内装。オールドレンズのボケ感が、人々を自然なモザイクで包む。物の輪郭がぼやけていく感覚がさまざまな境界を取り去っていくようで、わざとぼかしていくようになる。
画像4 窓から差し込む光をとらえる。目一杯ぼかして光のなかにまた別の光を見つけていく。
画像5 ガラスの美しさ。透明なガラスに写るものは無限。幾重にも重なる風景が、自然な多重露光を生む。カメラを構える自分がこの風景のなかに溶けていく。カメラのレンズを覗きながら、あの自分に見られている。
画像6 Echo after Echo 展。吉増剛造の作品を見る。ペンの先に目がある。私たちは、そこに文字が、正確に、線が、確実に、書かれていくのを見ている。「書く」とは、描く、掻く、欠く、画くことであり、尖ったもので、この地に痕跡を残すことだ。いや、それ以外に、指差すことだ、とトークショーのなかでは語られていた。指差す、このカメラレンズも、指差している。
画像7 鈴木ヒラクという作家が「チューブ」ということを話していた。書くこととは、平面に線を引いていくことだが、そこに、立体的に、ペンを突き立てたような書き方、つまりはこういう、突き刺さり方なのだろう。別の次元と別の次元を接続するチューブ。平面から立体へ。
画像8 鍵は無数に存在する。
画像9 ヒキダシを、開けるための。
画像10 ヒキダシというカフェレストランには美しい机とイスがある。
画像11 メニューの紙の質感がとてもいい。ローストポークというものをはじめて食べたが、たいへんに美味しかった。
画像12 ベンガル猫の愛らしさ。
画像13 アイスロイヤルミルクティーの甘さ。ティーブレイク。
画像14 もう、世の中はクリスマス。2019年もそろそろ終わろうとしている。今年をしめくくる言葉はなんだろうと考えていたら「凌」という字が思い浮かんだ。「しのぐ」。猛暑があり、いい温度になったかと思えば台風がやってきて、私たちは待っている。すると、もうこんなに寒くなって。ずっとずっと、凌いでいる。
画像15 「しのぐ」という言葉を繰り返していると、「死の具」でもあることに気付いていく。「しのぐ」とは、あまり前向きな言葉ではない。「やりすごす」ニュアンスが強い。だが、「死の具」とは、生き抜いて、死んでいくための材料でもあるのだろう。そういう無数の光をつかまえていくこと。私たちは、それを通して「死」に接続していく。「死」へのチューブを通すこと。異国の地からやってきたオールドレンズで世界を見る。異世界を捉える。輪郭の曖昧な。「死の具」を捉える。

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