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ドラえもんとマックリブの神隠し

ラウフェンモスルモンさんの家にいる。
先週書いたとおり、パスポートを忘れたから取りにきたのだ。

今回は一週間ぶりなので、あまり緊張せずにすんだ。
こんなに短いスパンで会うのは初めてなのでは?

ラウフェンモスルモンさんは、駅のマクドナルドでいろいろ注文していた。
金曜日の夜は、ジャンクフードを食べながらコークハイ片手に映画または海外ドラマをみ、ソファで寝るのが彼のルーティンなのだ。

Röstiというじゃがいもを削って焼いたのが挟まったバーガーはカロリーがえげつない(し、栄養のバランスが偏る)からロイヤルチーズなんとかバーガーにする、と言われた。追加でマックリブも頼んでいた。

どっちもあんまり変わらないのではと思ったけれど、食べたいものを我慢できてすごいなあと思った。
ラウさんは、マックを食べる前に義務としてサラダを頬張ったりもする。えらい。

行きの新幹線でお弁当を食べたので、わたしはお腹が空いていなかった。
下の階のおばさんが、いなり寿司と卵焼きのお弁当をつくってくれたのだ。

優しさに囲まれた人生。

バスの中で、わたしの使うスタンプが可愛くないという話題になった。
媚びないことを美徳にしているよねと言われた。
確かにそうである、と認めつつ、ラウさんは可愛いスタンプばかり使うねと返した。

それが許されるキャラなのが羨ましい。
わたしの性格や容姿、ステータスなどを総合的に鑑みるに、あざとい小動物のスタンプなんかは使えない。

ラウさん、それでも可愛すぎるのは使えないのでドラえもんが重宝している、と言った。
ドラえもんは藤子・F・不二雄が生み出した奇跡のフォルムだとかなんとか、つまり可愛いとべた褒めしていた。
わたしのことはなかなか可愛いって言ってくれないのに……。
ドラえもんが敵とは、なかなかハードな人生である。

「かわいいよ」と言ってもらいたくて「ドラえもんに勝たなくてはならない…」と言ってみた。
温めなおしたマックリブの箱を見ながら「エンデちゃんもかわいいよ」と言われた。くぅ。

とはいえ、まずは習慣化が大事である。
彼の恥じらいを減らし、息をするように可愛いとか好きだとか言ってもらえるよう、日夜精進するしかない。

帰宅後、Netflixで千と千尋の神隠しをみた。
わたしの初めてのジブリは千と千尋だった。
小学生で、引っ越したばかりで、千尋と同じように一人っ子で、自分ごとのようにとったのをよく覚えている。
わたしの人生に欠けているのはハクだけ……。

ラウフェンモスルモンさんと一緒にみるのはすごく楽しくて、わたしは幸せだなあと思った。
わたしのハクになってくれますか?
おにぎり食べさせてもらいたい。
あと「エンデはよくがんばったよ」って言われたい。

見終わって、坊などの真似をする。
ちょっとゲームをして、いつもどおり(いつもどおり!)膝枕で寝た(ラウフェンモスルモンさんが)。
かわいいな〜と眺め、カフカの審判を読む。
わたしもソファでうとうとした。

気がつくと5時だった(朝!)。
ベッドに行こうねーちゃんと寝ようねーと起こす。
「そろそろ寝ようかー」と言われた。
寝てたじゃん!と言うと「本格的に…」とむにゃむにゃされた。かわいい。

夕方まで眠って、ふわふわとした気持ちになった。
起きてスーパーに行く。
コロナコロナ言われないようにおしゃれをした。
コートを着なくても外出できて、春だなあと思った。

トイレットペーパーは売り切れていたけれど、他のものはだいたいあった。
リンツバニーを買ってもらった。えへ

このままのコロナ日和だと、イースターもどこにも行けなさそうだ。
ラウさんは結局こちらでどこにも旅行せず本帰国になるのではないだろうか。
彼がいいのであれば、もちろんそれでいいのだけれど。
ギリシャの島にでも連れ出せたらとひそかに企んでいる。

ショーウインドウに映る自分がオッシャレ〜だった。
喋らなければ綺麗でちゃんとしたお姉さんだなあと思った。
ラウフェンモスルモンさんは、喋ったほうが面白くていいよと言ってくれた。やったね!
いい人を好きになったものである。

帰りは風が冷たかったけれど、ジェラートを食べた。
ラウさんはモカとバニラを選び、わたしはパッションフルーツ味を買ってもらった。
美味しいねえ寒いねえと、公園を通った。
うさぎを探したのだけれど、見つからなかった。

3年くらい前、猫かうさぎかチンチラを飼いたいと思っていたなあと思い出す。
ずいぶんと遠くに来てしまった。
たぶんいいことなのだけれど、どう転んでも人生は寂しい。
すべてを掴むことなんてできなくて、どんどん指先からこぼれ落ちてゆく。

なんにも忘れたくないし、なんにも失くしたくないのにね。



おわり

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