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『仮面病棟』と『ビー玉父さん』

 昨年から、くどいくらいに、是非読んでみて!
必ず読んでみて!忙しいのは理解するけれど、読んでみてほしい!と、言われていた作品がいくつかあるのですが。

最近になってやっと、物語を読む時間がとれるようになり。昨年の秋から、すっかり読書離れしていて、せめてもと、詩集ばかりを持ち歩いていたのですが。

上記写真の2冊には圧倒されました。

『仮面病棟』は、来月映画が公開されるようですが、どのように仕上がったのか、楽しみですが。
原作は、素晴らしかった。
作者の知念実希人さんは、本業は医者、お祖父さん、お父さんも医者というのですから、代々が医者家庭のようですから、医療現場の場面にリアリティーがあるのは当然で、また、医療に関する知識の豊富さや、確かさに、読んでいても一瞬の疑問符もなかったのです。

強盗犯、人質、当直の医者、院長、看護師など、緊迫した状況の中での、それぞれの行動や心理の動きを、しっかり読んでいると、終盤近くなると、この事件の真実が見えてきたのですが。

これは、作者のある意味での挑戦ではとも感じてしまいました。

ページをめくる手が止まらない、最後まで、ぐいぐいと引っ張られてしまいました。

推理小説、サスペンスとも、ちょっとニュアンスが違うような。

非常に面白い作品でした。

『ビー玉父さん』

離婚して、息子とも離れて、1人、テレビも携帯もパソコンすらない、通信手段がないアパートで
暮らす男の元に、8才の息子が1人で訪ねてくるのですが。

作者は阿月まひるさん。初読みの作家さんですが、

すっかり驚き、感服して、感動して。

角川文庫キャラクター大賞に応募して、大賞はとれなかったけれど、出版社側で才能ありとして、大賞に応募した作品を加筆訂正して出版されたのが、この「ビー玉父さん」。

よくぞ、角川さん、みつけましたね!と思います。
心理描写に優れているとかなんとかより、

大阪、奈良界隈の、関西弁の拾いかたが、上手い。
ほっこりとかそんなものじゃなく、関西弁の良さを、これでもかこれでもかと、植え付けられるような。

教師をしていた主人公は、くず男なんでしょうか、離婚して、なんにもしたくなくなり、
適当に、まあ、食べて行けたらよいのだと、
個人経営の居酒屋でぼちぼち働いています。
そこへ、8才の息子が訪ねてくる。

サッカー少年だった主人公に対して、お父さんとキャッチボールがしたかったと言う野球少年の息子。

少年の名前はユウ、主人公はコン。
漢字で表すと、遊と狐。

登場人物の名前の付け方も、ひねってあって、なかなか。
才能、すごい才能を感じる作者です。

作っていない、構えていない、気どっていない、

ザックバランなんですね。

一見は貧しい環境のようでいて、底抜けに明るい。
健気な息子の存在に、読みながら度々涙を誘われましたが。

快適な涙なんです。じわっと悲しい涙じゃない、
ユウくん、がんばろうね、ユウくん、そんなお父さんのこと、放っておきなさい!そのように言いたくなりながら、涙が出てくる。健気なんです。

やはり、読書は良いものです。自分の知らない世界を見ることも出来ます。すっかり、関西弁の魅力に魅了されてしまいました。