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創作・「特殊能力」(真偉の夢占い)より

 気になって仕方ない、何かすっきりしない、それが、何からきているのか。
K男は、夢占いをしてもらい、一時的にはすっきりして、学生専門の1DKのマンションに住むようになり、鳥の夢も見なくなった。先輩に紹介してもらった旗振りのバイトも始めた。 しかし、気になる。

 K男は、北海道の東に位置する、港町である釧路の平均的なサラリーマン家庭の息子。医大には、親が病院経営の裕福な家庭の学生も多い中で、K男は、優雅な学生生活とは程遠い、暮らしぶりだった。
違う大学に通う、高校時代の部活の先輩達に、何か実入りの良いバイトがあったら紹介してほしいと、何人かに声をかけておいたのだが。 工事現場での、旗振りのバイトは、気楽で良かった。

夏場なので、ヘルメットをかぶる。長袖に長ズボンの作業服を着る。
その上に蛍光色のベストを着るなどは、汗だくになり、いささか厄介だったけれど。
夜間の道路工事現場は昼間よりは気温も下がり、約、一月あまりの公園のベンチで寝ていた経験は、K男を逞しくしたのだろう。
バイト料が貰えれば、ブツクサ文句も出なかった。

 道路工事会社は大概、旗振りなどの技術がなくても出来るような仕事は外注に出すことが多いらしいが、先輩が紹介してくれた会社は工事会社直であり、 1週間前に翌週の予定がメールで連絡され、 自分が出られる時間帯をメールで返信すると、 何日の何時に会社に集まるようにと、メールが来る。

あとは、その時間までに行くと、作業着、ヘルメットなど一式が渡され、マイクロバスに乗って現場へ行く。

終わると、一斉に、マイクロバスに乗り戻る。 その日払いで、翌日には口座に振り込まれている。

 K男は、自分が出す経費が一切かからず、夜食なども用意されている、 そのバイトは、気に入って、先輩にも礼を言った。
先輩はひどい汗かきで、夏場は、旗振りは都合悪かったようで、K男が喜んでくれて、かえって助かったと言ってくれた。

 順調な毎日を過ごしつつ、大学は夏休みに入ったが、 帰省せずに、もう1つ、何かバイトを探して、夏休み中は、少し、お金を貯めておこうと考えた。

 しかし、どうも、ふと、暇になると、気になる。
それは、夢占いの事だった。


      

 あの少女は、いくつなのか、名前は? いや、そのような有り体な事が気になるのではない。
K男は、旗振りのバイト中、深夜、通過する車は非常に少なくなり、それでも、同じ間隔で左右の通行を止めたり、走らせたりしながら、、ふと、、思った、、 あの夢占いの少女は、何故、知っていたのだろうと。

 自分は、電話で話した男性、それは、少女の隣に座っていた老人に違いないだろうが、その男性にも、少女にも、、 カラスに頭を小学生の時につつかれ、病院に行ったことなど言っていない、 それに、そうだ、まだある、、 隣に住んでいた男が、ヘビースモーカーだったことも、 、また、次のマンションで、隣の部屋にはいつも人が集まっていたことも、、話していないのに、、 絶対、話していない。 話したのは夢の話だけだった。

 何故、なぜ、あの少女は、知っていた?
それが、K男は、ずっと、ひっかかっていた、心にも、頭にも。 すっきりしないのは、それだった。




        🥀



 赤い点滅棒を振りながら、K男は、もう一度、あそこへ行ってみようと決めた。 匠不動産へ。 そして、行ってみた。
2度、行ってみたが、何も知ることが出来なかった。

女性の社員も、中年の男性社員も、とても丁寧に対応してくれたが、何も知らないの一点張りだった。
夢占いの際に部屋を貸すだけだとの事。 うーん、困った、唸るだけだった。

 しかし、K男は、諦めない性格。



金曜日が受付日は変わらないらしいようなので、先日は夢占いをしてもらい助かりました、ありがとうございますと礼を言い、外に出たが、 地下鉄に乗って帰ろうと大通りに向かって、ブラブラ歩いていて、大通り方向から歩いてくる小柄な女の子を目にして、足が止まる。



 色は違うが、先日、夢占いの少女が来ていた服と、雰囲気がよく似ている洋服を着て、前髪は額の真ん中辺りで切り揃え、、 似ている、、。
肩より長い、柔らかい髪、。
細くて白い足、、 。
うつむき加減で歩いていて、、 。
顔を上げてくれたら、、。
願っていると、そっと顔を上げた、、。

あ、あの少女、夢占いの少女に違いない、、。

ぷっくりした唇につんとした鼻、大きすぎる眼、、あの子に間違いない!!


「すみません! あの、、あなた、夢占いの 、」

「えっ?! あ、先日の、青い鳥の方ですね。」

「覚えていて下さったのですね、ありがとうございます。

僕、あの、ちょっと気になる事がありまして、 あなたの事を尋ねに行ってきたんです。
匠不動産に。 でも、社員の人達に、
何も知らないって言われました。

あの、誤解しないで下さい。 あなたは可愛い人ですけど、僕、彼女います、ストーカーとかじゃなくて、ですね、、」


真偉は、Kさんが、言いたい事はすでに、読めていて。

本当の事を、この人には話しても害はないように感じた。



「解ります。 どうして、話さない事まで知っていたのかを聞きたいのですね。

あの時、あなたは、火事の事、爆発の事、鳥の事を思い出していたからです。

あなたの想像は正しいですよ。
でも、約束して頂けますか?
私、騒がれるのが嫌です。

人の心が読める、心の叫びが聞こえるって、とても辛いことです。

頭も心も痛い。
誰にも言わないでいてくれますか?」

「約束します。 やはり、そうでしたか!!
やはり、存在するのですね。
超能力者。 僕達、凡人には羨ましいですけど、辛い事ですよね、、確かに。」

その日から、18才の洋介と20才の真偉は、仲良しになった。

身内以外で真偉の能力を知る初めての人。 洋介は、真偉の苦しみを、説明する前に、理解していた。

口から出る言葉と、心や頭で思う事は、凡そ、違う人が多いはず。
人は、そうそう本音では語らないはずで。 真偉の事を、中学生くらいだと思っていたと言う洋介は、あっけらかんとした正直者であり。

そして、先日の臭い人がウソのように、とても清潔な様子になっていて。
2人は、スマホのアドレスを交換して、真偉は大学や住所も教える。

時々、夕食を食べに来てねと添える。

のちのち、祖父の賢太郎も、なぜか、洋介をすんなりと受け入れ、真偉の家の常連客となる。 

                              🥀🥀🥀

嬉しい!! ありがとうございます!
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読むこと、書くこと、描くこと、弾くこと、綴ることが好きです。