リニア・トンネル問題を理解していなかったことに反省をしつつ

これを読むまで、私も「『なるべく水が出ない工事をするんだな』と考えている人」の一人でした。
JRの言うようなそんな工事は できっこないのですね。

『リニアトンネル工事で大井川を渇水させない方法は無い事は中学校で習』
https://anond.hatelabo.jp/20210621184521
を読みました。

リニアの南アルプストンネルによる大井川渇水に就いてJR東海は「水量減少を最小限にする」と述べ、それを鵜呑みにして「なるべく水が出ない工事をするんだな」と考えている人がいるが、このJRの言い分は出鱈目な嘘である。
水圧を計算してみよう。

南アルプストンネルが通過する赤石山脈の標高は約3000m、東側坑口は550m、西坑口が800m。すると土被りは最大で2300mである。

この時破砕帯がある場合、その水圧はどれだけになるか?答えは230気圧である。土被り1000mの箇所でも100気圧。こんな圧力に耐えられる中空構造物なんてあるはずが無い。工事だって出来るはずがない。
(だから)高土被りの破砕帯での工事ではまずは水抜きのトンネルを掘りまくる。(略)これ以外に工事の方法は無い。「水抜きボーリング」で検索すると土木会社の解説が沢山出てくる。(略)この水抜きトンネルはずっと稼働させて水を流しっぱなしにしなきゃならない
この辺を誤解してコンクリの本坑トンネルだけ作ってコンクリの壁で水をとめるというイメージの人が多いが全然違う。意図的に大量の水抜きをしなきゃ工事も出来ず躯体の維持も出来ない。
そしてこの抜かれる水というのは大井川(静岡県を流れる一級河川)の水源で湧き出すはずだったものなのだ。この水はそのままなら重力に従い低い方の東側坑口、早川(山梨県早川町から身延町にかけて流れている河川)か導水路を作って(山梨県の)甲府盆地にに放流されることになる。そしてこの両方とも富士川水系なのである。

2021/06/25追記
位置関係を追記
大ざっぱに書くと、[名古屋-----(大井川)--静岡--(富士川)-----東京]となります。
下流の河口においての両者の直線距離は50キロ近くと、大井川と富士川は大きく離れていますが(直線だと ほぼ海上を通過するので、陸路だともっと距離がある)、上流に行くと、大井川と富士川は近づいていて、富士川の大井川よりに富士川支流の早川があります。
つまりトンネルの水抜きによって、本来は大井川の川の水が、お隣の富士川水系に流れてしまうという話となります。
工事が終わると、上流において、[(大井川)=水抜き⇒(富士川支流の早川)(富士川)]となります。


この辺について静岡新聞などは「大井川の地下を通るので地下水の分布が変わり」と説明しているがこれも違うんじゃないか?

そうじゃなくて大量の水抜きをするので周辺一帯の湧水は枯れるのである。それは工事の為に意図的にしなきゃならないものなのだ。それをJRはあたかも極力防止するよう努力するみたいな事を言っている。いい加減な騙しだ。

(以下、「大井川の水源開発の歴史」「前例が無いのに『大丈夫』と言っているJR」「鉄オタ駄目すぎる」「結局トンネル出来ない可能性」と話が続く)

これを受けて以下のような やり取りも出ています。

みんなもう忘れてるだろうけど当時ボロクソに叩かれてバカにされてた諏訪回りルートが結局一番現実的だったっていうね。

やっぱ素人の浅知恵はダメなんよ。
その素人がJR東海の経営陣ていう救いのない話なんだ。

JR東海の歴代社長・葛西、松本、山田、柘植、金子って総務部人事部出身ばっかりで土木技術を理解できる人間がいないんだよ。

特に葛西なんて政治ごっこにうつつを抜かして官邸に出入りしてる。で政治的にゴリ押しすれば何とかなるとでも思ってるんじゃないかな。


はてな でのコメントも勉強になります。
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20210621184521

リニア問題は川勝知事だけの暴走のように言われるが副知事の難波氏は元国交省官僚の工学博士。JRと国が出した主張はほぼ難波副知事に論破されてる。リニアは反対じゃないがJR側の説明と対応がクソすぎるのは事実
『この水抜きトンネルはずっと稼働させて水を流しっぱなしにしなきゃならない』 黒部のトンネルは何十年経っても破砕帯から出水が続いているよね https://www.kanden-rd.co.jp/others/water/story.php
丹那トンネルの湧水の話見るとそりゃそうだよなって思う。"湿田が乾田となり、底なし田の跡が宅地となり、7か所あったワサビ沢が消失している" https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B9%E9%82%A3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
長年南アルプス研究してきた地質学者が言ってるのと同じだな https://iss.ndl.go.jp/sp/show/R000000004-I025946990-00/ 電波な反対論と十把一絡げにされやすく知られてないけど重要な指摘。100年以上使うインフラだからしっかり研究を

http://stat.ameba.jp/user_images/20141003/01/datsugenpatsu1208/cd/dc/j/o0639096013085763288.jpg

「南アルプスをリニア新幹線が貫くと」松島信幸『日本の科学者』10月号特集リニア徹底解剖

その上で、次のコメントに首肯点頭します。

専門家も分かってる、増田(=この文章の書き手)も分かってる、でも権力者の暴走は止められない今の日本。

新型コロナや東京オリンピックと同じで、これも、失敗しても誰も責任を取らないのでしょう。

それが、動き出した計画であった場合、日本では止められなくなるようです。計画の実行こそが最優先となります。
走り出した計画(や、今 動いているもの)を止めることが日本(人)にはできないのでしょうか?

専門家も分かってる、でも止められない今の日本。


2021/06/25追記
元の文章は最後に、

水源問題起こして難工事の末に開通させられるか?出来ないんじゃないかと思う。

ここは日本であって大地が安定したスイスなどとは違う。まだ動き続けてるプレートの境目にある若い火山帯であって、しかもフォッサマグナ西縁は北米プレートとユーラシアプレートの境目だ。更にフィリピン海プレートが角型の2分割列島を一本の弓型列島になるほどの力で押してる。

そこにトンネルを掘る?自分らの国土を理解してるんですか?

水抜きで工事を進めても完工できない可能性が高いのでは。

と書いています。

また
松島信幸氏の文章では、
「山体地下水は永久に漏れ続け、生態系は乾燥し、斜面崩壊が多発していくことになる」
「緊急事態発生に対し、モグラ路線からの非難が困難」
と述べられ、
他の懸念事項も合わせて細かく数ページにわたって書かれています。
最終ページだけでも、工事において使われる強力な薬液による地下水汚染、断層を通過することに対する危険性とトンネルが断層におよぼす影響、列車通過の振動が山体や人体におよぼす影響、などが書かれています。

日本アルプス(南アルプス)の地盤に穴を開けてから「失敗でした」となったとき、元の状態に復元できないのですよね。
だから事前に専門家の意見が必要になるのですけども…。

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