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「価値観の共有が大切な時代の“アクティビズム”」-広石コラム

社会のあり方や正義を問うて行動する”アクティビズム”とビジネスとは距離を置くものという考えが一般的でした。
しかし、近年、ビジネス界で“アクティビズム”という言葉を使うことが増えてきています。

先ずは、「株主アクティビズム」。いわゆる「ものを言う株主」への注目が改めて高まっています。
以前は配当金や経営方針などについての物申すものが多かったところから、
近年は、株主総会での議決内容に、脱炭素計画の策定や具体策など環境問題に対する姿勢を働きかけるものが増えています。
金融機関に対してNGOが株主と連携し、石炭火力への融資をやめるよう働きかけることもあります。

また、「従業員アクティビズム」は、従業員が会社に対して社会性の配慮した経営を求める動きです。
Facebook社では、従業員が自社サイトで、当時のトランプ大統領が国民の分断をあおっていることに対処すべきだという声があがりました。

このように企業経営に求めるだけでなく、企業も自らがアクティビズムに参画しています。
昨年、アメリカでBLM(Black Lives Matter)運動が高まった際、多くの企業が賛同を明示しました。
アップルは社会的不公正をなくすことを目的として有色人種の経営者による事業経営改善や起業を支援するファンドを立ち上げました。
脱炭素と金融の例では、日本生命保険は社債と株式の投資先について2050年に全体でCO2排出量ゼロを目指すことを宣言し、
投資先企業に排出削減の取り組みを促し、対応が不十分な場合は売却も検討することを宣言しました。

マーケティングの大家であるコトラーは2018年に共著で「Brand Activism: From Purpose to Action」という書籍を出しました。

企業は、環境社会に貢献するというCSRから、事業を通して環境社会問題に取り組むパーパス(目的重視)経営、または、消費者に環境社会問題への気づきを促すコーズ(問題関心重視)マーケティングという段階を経て、自らが環境社会問題の解決に向けて、周りにも働きかけながら積極的に行動する「ブランド・アクティビズム」が大切になる

という内容です。

その背景には、環境社会問題が深刻化している中で政府やNGOだけでなく、企業の問題解決力への期待が高まっていること。
同時に、多くの市民が当事者意識を持ち始めた中で、「企業が“きれいごと”を言って自分の利益を優先している」のでは信頼されなくなることをあげています。

今、気候変動、パンデミックのダメージ、差別(性別、LGBT、人種、年齢など)、ゴミ、教育、コミュニティなど数多くの環境社会問題が深刻化しています。
その困難さの高まる社会の外に存在(社会を他人事視)しているのか、社会の中の「一員」として存在しているのか。
困難さを共有し、共に問題に向き合い、解決へのアクションをしていこうとしているのか。
SDGsが広がり、多様な人が環境社会問題への意識が高まる中、企業にも価値観の提示と実際の行動が求められるようになっています。

「価値観の共有」社会的信頼(レピュテーション)の重要な基となる時代、企業のあり方も市民のあり方も変わっていくことが必要です。
そのようにして、SDGsの目的である「Transforming Our World(持続可能な世界への転換)」が進んでいくのでしょう。

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