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「ぴりーこぱんのたんじょうび」⑥

6:ぴりーこぱんの、生まれた日

 この国のハンバーガーたちに、どうやっていのちがやどるのかを、まずはお話ししよう。
赤ちゃんがほしい時には、この国のはずれにある“いのちの森”へ行く。その森には“バンズきのこ”というキノコが生えていて、かさの部分がパンで出来ている(ハンバーガーにつかうパンのことを、“バンズ”とよぶのだ)。それがわれわれハンバーガーにとってもっともだいじな土台になる。バンズきのこを持ち帰ったら、親バーガーたちがそれぞれ自分の具をそのバンズに分けあたえて一つのハンバーガーを作る。しかし、これだけではまだ、ただのハンバーガーだ。とても大切なぎしきがのこっている。出来上がったハンバーガーを赤ちゃんのためによういした新しいベッドにはこび、親バーガーたちは夜空のお星さまに向かっていのりをささげるのだ。
「お星さま、お星さま、どうかわたしたちのところへいらしてください。わたしたちのかわいいかわいい赤ちゃんバーガーになってくださいな」
とね。このいのりをささげてねむりにつくと、つぎの日の朝、新しいハンバーガーにいのちがやどっている。夜の間にお星さまが空からおりてきて、ハンバーガーにいのちとしてやどってくださるのだと言われている。

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 と、いうわけで、ぴりーこぱんもそのように生まれたわけなんだが・・・
ここにいるぐーさまとわたしとで、新しいハンバーガー、つまりぴりーこぱんを生み出すことにした。バンズはぶじに手に入れたのだが、ぐを分けあたえる時に、おかしなことになってね。
知らないうちにどこからか、とうがらしがまぎれこんでいたのだ。わたしにも、ぐーさまにも、とうがらしは入っていないんだ。しかし、見なれないとうがらしを見ても、おたがいに「あいてのものだろう」と思いこんで、気にもとめなかった。先ほど言ったとおり、わたしはもっとも大きく、ぐーさまは、もっともたくさんのしゅるいのぐが入っている。たくさんありすぎて、おたがいにどんなぐが入っているのか、知らなかったのだ。そうしてどこからやってきたかもわからないとうがらしを、われわれはぴりーこぱんに入れてしまった。

 おかしいと気づいたのは、次の日の朝になってからだった。わたしたちはかわいい赤ちゃんバーガーに会おうと、むねをはずませて赤ちゃんのいるベッドへ向かった。
しかし、そこにわたしたちの赤ちゃんバーガーのすがたはなかった。かわりにいたのは、一羽の小鳥。
「まさか・・・いのちがやどるまえに、鳥さんが食べてしまったんじゃ」
ぐーさまがふるえながら言った。わたしは自分もふるえだしそうになるのをけんめいにこらえた。
「だいじょうぶだよ、いのちがやどるのは、鳥たちが目をさますよりもずっと前のはずだから。わたしたちの赤ちゃんは、きっと元気がよすぎてベッドからとび出してしまったんだろう。よくさがしてみよう」
わたしは、ベッドの上の小鳥に話しかけてみた。
「おはよう、小鳥さん。ここにわたしたちのかわいい赤ちゃんバーガーがいたはずなんだが、どこに行ったか知らないかな?」
小鳥は小首をかしげ、わたしをその青い目でじっと見つめた。
次のしゅんかん、わたしの目の前にハンバーガーがあらわれた。それはわたしたちが作った、いとしい赤ちゃんバーガーだった。そう、小鳥こそがわたしたちのぴりーこぱんだったのだ。おどろいた顔のまま、ぐーさまが言った。
「もしかして、この子はへんしんできるの?」
「・・・どうやら、そのようだね。しかし一体なぜ?」
とまどうわれわれをよそに、ぴりーこぱんは、まどの外に目を向けていた。まどの外にはいっぴきのちょうちょがとんでいた。それを見てニッコリほほえんだぴりーこぱんは、ちょうちょになって外へとんで行ってしまった。
あっという間のできごとに、われわれはしばし立ちつくしていた。
先にわれにかえったのはぐーさまだった。
「・・・たいへん!あの子をおいかけないと!」
へんしんできるとはいえ、ぴりーこぱんは生まれたばかりの赤ちゃん。自分で家に帰っては来られないだろう。見うしなったらたいへんだ。
われわれは家をとび出して、ぴりーこぱんをおいかけた。

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