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人工知能(AI)にクリエイティビティを搭載するためにー3種類の創造性について

クリエイティビティ(創造性)とはなんだろうか。

創造性に関する研究は、意外にも、人工知能(AI)の分野で進んでいる。

Boden (1981)を始めとする人工知能(AI)の研究者たちは、コンピューターに人間の知能の源泉といわれるクリエイティビティ(創造性)を搭載するため、30年以上も前から、ヒトの心とは何か?クリエイティビティとは何か?について研究を行ってきた。

その研究成果の中で、クリエイティビティとは”手段 (Way)”であると言い切っている。そのうえで、クリエイティビティには3つの手段があると説明する。デザインスクールでのクリエイティブ教育の中で、最も印象に残った、論文の1つである"Creativity and artificial intelligenet (1998) by Boden"を参照して、この3つの種類のクリエイティビティについてまとめようと思う。

1:馴染みのあるアイデアの新しい「組み合わせ」

(by producing novel combinations of familiar ideas)

2:これまで着手されていない領域での「探索」

(by exploring the potential of conceptual spaces)

3:これまで不可能だったアイデアの創出を可能とする「発想の転換」

(by making transformations that enable the generation of previously impossible ideas)

1つ目の「組み合わせ」による創造性は、例えば、言葉と言葉を組み合わせて詩をつくることや、絵画のコラージュ(色んな素材の組み合わせによる芸術作品)が挙げられる。

アイデアは既にあるアイデアとアイデアの掛け算とよく言われる。例えば、サンドイッチは歩きながらご飯を食べることができるようにしたイノベーションの例であるが、当時から、パン、ハム、チーズなどの材料は存在しており、新しい組み合わせによって、サンドイッチが誕生した。イノベーションの父と呼ばれるシュンペーター(1912)がいうイノベーション=新結合と近い考え方だろう。

2つ目の「探索」については、人々がこれまで考えてこなかった領域での、探索活動であり、研究をイメージすると分かりやすい。これまで深堀りされていなかった研究課題を分析していくことで、これまで分かっていなかった知見が発見される、あるいは、アーティストが先例がないようなパフォーマンスをするような場合があてはまる。

1つ目の組み合わせとの違いは新しい領域の探索を含むかどうかであり、「組み合わせ」による創造性が、新しいものを生み出すという意識により行われるとすると、「探索」による創造性は、他者が手をつけていない未開の領域にチャレンジする姿勢に近いだろう。

3つ目のクリエイティビティは「発想の転換」であり、ある出来事や物事を今の見方とは違った捉え方をすること解釈できる。リフレーミングとも近い考え方だろう。

クリエイティブな人と聞いて想像するのは、このタイプが多いだろう。人が思いもしなかった物事の捉え方をする人。著書であるBodenさんはこのタイプの創造性が最もクールだと言っている。

例えば、E Sports。E Sportsと聞くと、なんだか、ワクワクして人々が熱狂してやれるかっこ良さげなイメージを抱くだろう。でも、よくよく考えてみると、ただのネットゲームとも言える。発想の転換により、E Sports業界が急成長する一因にもなったのではないだろうか。

あるいは、サウナ。これは友人から教えてもらった話だが、サウナと言えば一昔前はおっさんが銭湯のついでに入るもの。それが今は少しずつ、若い働く男性・女性が整う(究極のリフレッシュ)ために、仕事帰りに行くところというようにイメージが変わってきた。これも一種の発想の転換だろう。

例によってはとても表層的なものもあるかもしれないが、個が活躍すると言われる今の時代、この3つの発想の転換による創造性が至るところで出てくる(出てきている)ように感じる。イノベーション理論のなかで注目されている意味のイノベーションにも必須の考え方であろう。

クリエイティビティという抽象的で捉えどころのない能力やスキルも、こういった研究成果を頭に入れておくことは、創造的になる助けとなるだろう。

Photo at Museum in Reykjavik, Iceland

参考文献:Boden, Margaret. (2009). Creativity in a nutshell. Think. 5. 83-96. 10.1017/S147717560000230X.

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